「精神疾患を理解しない人はいる」うつ病を4度経験した精神科院長が伝えたいこと

2019.07.29公開 2019.08.01更新

「精神疾患なんて甘えだろ」

「やる気がないだけじゃないの?」

 

精神疾患に対して、そんな理解のない言葉をぶつける人も、悲しいけれど確かに存在します。そんな人に会ったとき、どう対応すればいいの?ぐっと我慢して、気持ちを押し殺すしかないの?

 

モヤモヤした疑問をどうにか解決したいと思い、今回は精神科院長の岡本先生に、詳しいお話を聞いてきました。

 

岡本先生は、ご自身も4回うつ病を経験しています。精神疾患を理解しない人の接し方に加えて、病気になったときのおすすめの考え方、精神科を受診するときの心構えなど、たっぷり教えていただきました。

 

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【岡本浩之(おかもと ひろし)】

埼玉県「北本心ノ診療所」の院長。中学、高校、大学、社会人時代に、自身も4回のうつ病を経験。精神科医として診療を行うとともに、心の不調に悩むスポーツ選手のサポートもしている。

〈インタビュアー くまのなな〉

 

「精神疾患は甘えだ」と言う人には、どう対応すればいいの?

くまの
岡本先生が院長を務める「北本心ノ診療所」は、今年で8年目だそうですね。診察をしていて、患者さんが増えていると感じることはありますか?
岡本さん
感覚としては、増えているように思います。当院でも、初診のご予約を取るのに、お日にちをいただくことが多いですね。
くまの
病気になってしまう人が増えたのか、「診察をしよう」と思う人が増えたのか、どちらだと思いますか?
岡本さん
どちらも、ではないでしょうか。

 

昔と比べて、精神科医に相談しやすい環境になってきたのは確かだと思います。当院でも、昔だったら自分だけで抱えて我慢していたようなことでも、相談に来ていただけることが増えました。

 

精神科の敷居が下がって、入りやすくなっているように感じますね。

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岡本先生が院長を務める「北本心ノ診療所」の外観。とても綺麗で、マンションのような入口です。

岡本さん
心の病気になる人の数も、実際に増えているとは思いますよ。
くまの
どうして増えてしまったんでしょう…?
岡本さん
人との繋がりが薄くなっていることが、増加の要因のひとつだと思います。

 

支え合うことが少なくなって、精神的に崩れやすくなっている。

くまの
なるほど…。ただ、心の病気になる人が増えて、ニュースで話題として取り上げられるようになっても、まだまだ心の病気を「甘えだ」「やる気がないだけ」と言う人がいる気がします。
岡本さん
自分が精神疾患にならないと、想像はしにくいでしょうね。身近にそういった人がいないと、余計に理解できないと思います。

 

例えば、「仕事に行きたくない」と言っている人がいたとして、うつ病の人の「仕事に行きたくない」は、健康な人の「行きたくない」とはレベルが違うんです。

くまの
「行きたくない」より、「行きたくても行けない」が近いですよね。
岡本さん
そうですね。でも、うつ病の症状を想像できないと、「俺も仕事行きたくないしなー。うつ病かな?(笑)」となってしまう。

 

「そんなわけないだろ!」って言いたいですけどね。

くまの
本当ですね、言ってやりたいですね…。でも、病気に対しての知識がないと、そう言ってしまう人もいるのかなと思いました。
岡本さん
ただ、心の病気になった人の“周りの人”が、「うつ病なんて甘えだろ!」と言ってしまう場合もあるんですよ。病気に対して、多少の知識はあるのにです。
くまの
それは、どうしてですか…?
岡本さん
病気になった人にどう接していいか分からず、精神疾患に対してマイナスのイメージを持ってしまうんです。

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岡本さん
例えば、職場の人がうつ病で休職したとします。休んだ理由がなんであれ、誰かが抜けたら、その分の仕事は他の人に回りますよね。職場に復帰したとしても、どのくらいの仕事を任せていいのかも分からない。

 

その負担を受けた人が、「精神疾患って言ったもん勝ちじゃん」と不満を溜めてしまう場合があるんです。

くまの
うわぁ…なるほど…。
岡本さん
自分が同じ病気になってみれば、理解もできるんですけどね。同じ負荷がかかっても、病気になる人と、ならない人がいますから。
くまの
ご自身が病気になった人が、「精神疾患なんて甘えじゃん」と言う人に出会ったときに、少しでも理解してもらう方法はないんでしょうか?
岡本さん
もちろん、病気の症状について説明するのも大切です。

 

ただ、「全部を理解して支えてあげましょう」となってしまうと、周りの人にとって負荷になって、精神疾患のイメージがマイナスになってしまいます。

 

「病気はこういうものだ」と知ってもらった上で、どこまで自分で対応できるのか、どんなときに助けが必要なのか、そのラインを伝えるようにしましょう。

くまの
自分ができる範囲を、相手に知ってもらうんですね。

例えばなんですけど、お子さんがうつ病で、お母さんはうつ病の症状を理解しようとしているのに、お父さんは「うつ病なんて気の持ちようだ!」と否定的な家庭ってあると思うんです。同じグループというか、コミュニティで、考え方が割れているような…。

岡本さん
あぁ、ありますねぇ。

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「残念ながら、珍しいことではないんです」

くまの
そういうときって、誰がどのように立ち回ったら、うまくいくんでしょうか…?
岡本さん
「甘えだ」と言っている人に、「病気なんだから分かってよ!」と言っても、余計に反発して気持ちを閉じてしまうと思います。

 

できるなら、「どうしてそんなに理解しようとしないのか?」と、相手の言い分を聞くところから始めるといいですね。甘えだと思うようになった背景が、きっとあるはずなので。

 

くまのさんが言っていた場合だと、お子さんのうつ病を理解しているお母さんが、お父さんと話をしてみるといいと思いますよ。

くまの
まずは、どうして「理解できない」と思うのか、相手の意見を聞くんですね。
岡本さん
そうです。家族のことだと話を聞いてもらえない場合は、知人の話や、有名人の事例を出してもいいと思います。

 

あとは、どれだけ対話しても、理解してもらえない人はいますから。どう頑張っても理解されないのなら、「じゃあ、家ではこういう役割をお願いするね」など、ある程度は割り切ることも大切です。

 

意見を対立させていがみ合うよりは、お互いが納得できる落としどころを探してほしいですね。

くまのなな

ライター

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  • 本コンテンツは、メンタルヘルスに関する知識を得るためのものであり、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題について責任を負うものではありません。
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