成年後見制度とは?手続き・費用・事例を専門家がポイント解説
成年後見制度とは?
成年後見制度は、精神上の障害 (知的障害、精神障害、認知症など)により、判断能力が十分でない方が不利益を被らないように、家庭裁判所に申立てをして、その方を援助してくれる人を付けてもらう制度です。
成年後見制度の対象者
精神上の障害 (知的障害、精神障害、認知症など)により判断能力が十分でない方。
成年後見制度の制度内容
成年後見制度では、
・不動産や預貯金などの財産の管理
・介護などのサービスや施設への入所に関する契約の締結
・遺産分割の協議
といったことをする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。
また、自分に不利益な契約であってもよく判断できずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあう恐れもあります。
そういった場合に、家庭裁判所の審理を経て、親族や弁護士などの専門職が、成年後見人として財産を管理する制度です。
現在成年後見関係事件(後見開始,保佐開始,補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は、合計で34,782件(前年は34,373件)であり,対前年比約1.2%の増加となっています(平成27年)。
成年後見制度の費用
東京地方裁判所によれば、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができるものとされています(民法862条)。
弁護士などの専門職が、成年後見人等に選任された場合は、これまでの審判例等、実務の算定実例を踏まえた標準的な報酬額の目安は次のとおりに決められています。
なお、親族から申立てがあった場合は、これを参考に事案に応じて減額されることがあります。
成年後見人が、通常の後見事務を行った場合の報酬の目安額は月額2万円くらいになります。
ただし、管理財産額(預貯金及び有価証券等の流動資産の合計額)が高額な場合には、財産管理事務が複雑かつ困難になる場合が多いため、管理財産額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合、基本報酬額を月額3万円~4万円、管理財産額が5,000万円を超える場合には基本報酬額を月額5万円~6万円としています。
成年後見制度の手続き
成年後見制度を申し立てる場合は、まずは管轄の家庭裁判所が窓口になります。
相談窓口としては、地域包括支援センターや地域の成年後見センターなどにお問い合わせください。
後見制度支援信託
後見制度支援信託とは、認知症などで判断能力が十分でない高齢者に代わって親族らが成年後見人として財産を管理する際、現金を銀行に信託する制度です。
生活費を定期的に口座に振り込むことはできるが、入院や家の修繕などで、数十万~数百万円単位のまとまった額を引き出すには、家裁の指示書が必要となります。
家裁が認めなければ、口座の解約もできません。
裁判所の許可がなければ、まとまった金額を引き出せないため、後見人が預貯金を着服する不正件数は、減少し被害額も半減しています。
成年後見制度の該当する事例
Gさんは15年前に統合失調症を発症し、10年前から入院していますが、徐々に知的能力が低下しています。
また、障害認定1級を受け障害年金から医療費を支出しています。Gさんの父親は早くに死亡し、兄弟はおらず、母親が金銭管理等を行っていました。
しかし、母は半年前に死亡し、亡母が残した自宅やアパートを相続し、その管理を行う必要があるため、母方の叔母は後見開始の審判の申し立てをしました。
その後、家庭裁判所の審理を経て、Gさんについて後見が開始されました。
母方の叔母は、遠方に居住していることから、成年後見人になることは困難であり、また、主たる後見事務は不動産の登記手続きとその管理であることから、司法書士が成年後見人に選任され、合わせて「公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート」が成年後見監督人に選任されました。
Gさんは自宅やアパートを相続することができ、障害年金の手続きも成年後見人が引き継いで行うことになり、入院費の支払いも滞ることなく行われることになりました。
成年後見制度の注意事項
申立人が希望した候補者が後見人に選任されるとは限らない
横領事件の9割が親族後見人のケースであることもあり、現金や預貯金・株式など流動資産が500万円以上(裁判所・状況によって基準が異なります)の場合には、司法書士などの専門家が後見人となることがあります。
したがって、候補者として希望を出すことは可能ですが、第三者が選任されることもあります。
専門家に任せてしまったほうが、安心ですし、手間が大きく省けるというメリットもあります。
申立てを行なったら、家庭裁判所の許可を得なければ申立を取下げることはできません
原則的に、「本人が死亡するまで」後見人の職務は継続します
途中で、「面倒くさいから辞めた」ということはできません。銀行口座からのお金の出し入れは、登録した銀行の支店に限定するという銀行も多くあります。
支店まで行くのは面倒ですが、後見人としての業務は本人が亡くなるまで一生続きます。
本人の財産を後見人が自分のために使ったり、家族に贈与・貸与することはできません
後見人は、家庭裁判所・監督人の監督のもと業務を行います
適切に管理しなかった場合、解任されたり損害賠償請求などの民事責任や業務上横領などの刑事責任を問われます
今まで本人からお金をもらっていたから、これからも貰っていいだろう、本人が死んだら相続人は自分ひとりだから、自分が使っても問題ないだろうと考えてしまうと、家庭裁判所が刑事告訴をすることもあります。
森裕司 精神保健福祉士 社会福祉士
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- 本記事は2017年4月1日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。