【臨床心理士解説】全部めんどくさいと感じてしまう…無気力状態の改善方法は?
「全部めんどくさくて何もしたくない…」
とても疲れていたり、やることが多過ぎたりすると、誰でもそんなふうに感じる時があるものです。
しかし、その状態が長く続いているのであれば困ることも多いのではないでしょうか。
やるべきことがどんどん積み重なってしまうと、ますますめんどくさくなり、さらにやる気が失せる…
そんな悪循環につながってしまいかねません。
そこで今回は、長く続く無気力状態を一歩ずつ改善していく対処法を臨床心理士に解説してもらいました。
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心身の調子を整えてやる気を出す基盤を作る
心や身体の調子が思わしくないと、普段ならなんでもないことも「めんどくさい」と感じてしまうようになります。
まずは心身の調子に気を配り、やる気を出す基盤を整えましょう。
睡眠をしっかり摂る
人によって必要な睡眠時間には大きな差があります。
自分にとってどれくらいの睡眠時間がちょうど良いか、振り返ってみてください。
ただ、様々な事情により充分な睡眠をとることができないこともあるでしょう。
その場合は、日中に15〜20分くらいの仮眠をとるのもお勧めです。
眠りこめなくても、目をつぶって休んでいれば、頭と目を休める効果が期待できます。
また、平日に睡眠が不足しているので土日に多めに寝るようにしているという方は、プラス2時間程度にとどめるようにしましょう。
それより多く寝てしまうと、時差ぼけのような状態になり、かえって頭がぼうっとしてしまうことがあります。
食事を大切にする
食欲がない時や時間がない時も、食べやすい物を何かお腹に入れるようにしましょう。
食べ物は人間が動くためのエネルギーになります。
エネルギーが不足していては、たとえやる気があっても身体が動きません。
また、好きなものを食べたり、おいしいものを食べて「おいしい!」と感じたりすることも大切にしましょう。
気分転換を多めにとる
心の調子を整えるためには気分転換が重要です。
趣味や、楽しいと思えること、気持ちが落ち着くことがあれば、いつもより多めに時間をとるようにしてみてください。
気分転換と言われても何をしていいかわからないという場合は、
・ぬるめのお風呂にゆっくり入る
・音楽を聴く
・本やマンガを読む
・テレビや動画、映画を見る
・散歩をする
・買い物に行く
・誰かと話す
といった方法がありますので参考にしてみてください。
適度な運動をする
「やってみるか」と思えるなら、適度な運動もお勧めです。
特に「以前はよく運動していたけれど、最近は全くしていないな…」という方は、少しでも身体を動かすと心身共にすっきりすることが多いようです。
軽いストレッチやラジオ体操なら部屋でも行うことができます。
外で行うことであれば、ウォーキングやランニングもいいですね。
思い切ってジムに入会し、興味のあるプログラムに参加するという手もあります。
久しぶりに身体を動かすという方は、最初は無理をせずに、軽めの運動からスタートするようにしてくださいね。
やることを細かく分けてリストアップ
基盤を整えたら、いよいよ「全部めんどくさい、何もしたくない」状態から脱するにはどうすればよいかということについて考えていきましょう。
まず試していただきたいのが、やることをリストアップする方法です。
スマートフォンやパソコンに打ち出してみたり、紙に書いてみたり…
どんなやり方でもかまいません。ポイントは、
作業を細かい工程に分けてリストアップすること。
掃除を例に挙げてみましょう。
「家の掃除をしなければ」と考えた時、どんなことが頭に思い浮かぶでしょうか。
まず片付けをして、あの部屋とこの部屋の掃除機をかけて、お風呂とトイレを洗って、ゴミを捨てて…
苦にならない時もありますが、「全てがめんどくさい」「何もしたくない」のであれば、たくさんのことを一度にやらなければならないと思うとうんざりしませんか?
ますます面倒になってしまいますよね。ですので、リストアップする際には、
「片付ける」
「お風呂を洗う」
「ゴミを捨てる」
といったように、細かく分けて書き出すのがコツです。
家全体を完全にきれいにはできなくても、とりあえず片付けならできるかも…
今日はゴミの日だからゴミ捨てだけするか…
といったように、少しでも手がつけやすいことを選びやすくなります。
また、全体をながめると、やらなければならないことの優先順位も考えやすくなるのでお勧めです。
やる気が出るような工夫をする
やらなければならないことが整理できたら、少しでもやる気がでるような工夫をしてみましょう。
細かく時間を区切る
例えば、
「5分だけやる」
「このページの英単語を覚えたら勉強を終わりにする」
といったような感じです。
先にお伝えした「やることを細かい工程に分けてリストアップする」という方法と同様、「それぐらいならやるか…」という気持ちを引き起こしやすくします。
後にご褒美を設定する
「これができたら、その後ゲームをしていい」
「これが終わったら、甘いものを食べる!」
といったご褒美があると、面倒なことにも手が付けやすくなることがあります。
また、「早く終わらせたい!」とやる気を持続させることも期待できます。
ご自分にとって楽しみなことを設定して、試してみてくださいね。
「今からこれをやる!」と周りに宣言する
朝が苦手でつい遅くなりがちだけれど、友達と遊ぶ予定があれば早く起きられる!
思い当たることはありませんか?
自分だけで「やろう」と考えるとつい面倒になってしまうことも、誰かと約束をすると実行しやすくなります。
例えば、学校で友達に「今日の放課後は英語長文を勉強する!」と宣言したとしましょう。
すると、「やると言ったし、やるか…」「明日『やった?』と聞かれるだろうから、やるか…」と行動に移しやすくなるのです。
これは、自分の行動や発言、態度、信念などを一貫性のあるものにしたいという「一貫性の原理」という心理を応用した方法です。
「やる」と言ったのにやらないと、違和感があって気持ちが悪い、だからやる…という感じです。
とは言え、一度にたくさんのことを「やる!」と宣言しても、やれることには限度がありますし、「たくさんやるのは無理…」とやる気もしぼんでしまうもの。
宣言するのであれば、現実的にやれそうなことにしておくことがポイントです。
さいごに
全部めんどくさいと感じてしまうほど何もしたくない状態から抜け出すためのステップをお伝えしてきました。
最後に、心身の調子を整えないままにやる気を出す工夫をしても、あまり効果がないということには気を付けてください。
車も、ガソリンが切れていては走りたくても走れませんよね。人も同じです。
エネルギーを十分に蓄えると、少しずつ「これはやってみようかな」と思えることが出てくる可能性があります。
その時に「やれそうだな」と感じることがあれば、試してみてくださいね。
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【参考文献】
●森川那智子(2007)『なんにもしたくない! ちょこっと、自分を、休ませてあげる本』すばる舎.
●大芦治(2013)『無気力なのにはワケがある 心理学が導く克服のヒント』NHK出版.
●田中正人編著(2020)『図解心理学用語大全 人物と用語でたどる心の学問』斎藤勇監修,誠文堂新光社.
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2023年1月15日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。