【臨床心理士解説】うつ病で無気力が続く…日常生活で出来る手軽な対処法とは?

2023.01.10公開 2024.02.11更新

うつ病で気分が落ち込みがちでやる気や気力が出ない…

 

そのような状態に対して何か対処しようとすることすら、おっくうに感じてしまうことも多いかと思います。

 

そこで今回は日常生活の中で、無気力感に対して手軽に出来る対処法・セルフケアについて臨床心理士に解説してもらいました。

 

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うつ病で無気力が続く

うつ病は気分障害の一つであり、

・一日中気分が落ち込んでいる

・何をしても楽しめない

といった精神症状や、

・眠れない

・食欲がない

・疲れやすい

などの身体症状が現れる疾患です。

 

うつ病にかかる全ての人に当てはまるわけではありませんが、無気力感が現れることも多くあります。

 

うつ病の症状に限らず、一般に無気力になる原因として、

「自分の力ではどうしようもない困難を繰り返し経験すること」

が挙げられます。

 

うつ病の症状によって、身体が思うように動かなくなるなど日常に制限が生まれることで、より無気力となってしまう可能性もあります。

 

他にも、無気力の背景として、

「自己効力感の欠如」

「自律性の欠如」

が関わっていると言われています。

 

自己効力感とは、困難を自分の力で克服できるだろうという見通しや、「自分はできる」という感覚のことを指します。

 

自律性とは、自分で決めて、自分のやりたいように行動しているという感覚のことを指します。

 

したがって、自己効力感や自律性を高めることで、無気力感を改善できる可能性があります。

 

うつ病に必要な治療期間はおおむね6ヶ月と言われていますが、症状や治療を開始した時期、治療経過、うつ病のタイプなどによって様々ですので、一概にはいえません。

 

一般には、発症からなるべく早く治療を開始した方が、治りが早いとされています。

 

ただし、うつ病は6割が再発するともいわれる、非常に再発率の高い疾患でもあります。

 

再発するごとに症状は悪くなり、慢性化しやすいことも指摘されています。

 

まずは病院での治療をしっかりと受けながら、これから紹介するセルフケアを行うことが、改善への近道になると思います。

 

ここでは、一般的なうつ病におけるセルフケアに加えて、無気力感の改善という観点からも、日常生活で行える対処法についてご紹介していきます。

 

うつで無気力感への対処法

十分な休息をとる

うつ病は心の風邪ともいわれるように、心が頑張りすぎて疲れてしまっている状態です。

 

風邪をひいた時には無理をせず、横になってゆっくりと休むのが回復の近道であるように、うつ病もゆっくりと休むというのが一つの治療法となります。

 

うつ病になりやすい人は頑張り屋さんで、あまり休むことが得意ではないといえるかもしれません。

 

自分では休んでいても、他の人から見ると頑張っているように見えることもあるでしょう。

 

適度な運動や生活リズムを整えることも大切ですが、何もする気が起きないのであれば、何もしないといったように、時には心身のサインに従って休んでみるのも良いのではないでしょうか。

 

今できることに目を向ける

うつ病という病気の性質から、どうしてもネガティブなことに目が向きやすくなります。

 

いつ症状が良くなるんだろうかといった将来の漠然とした不安や、「あの時こうしておけば、今頃元気に過ごせていたのではないか:といった過去の後悔が沸々と浮かんでくることもあるかもしれません。

 

しかし、それらは今考えても仕方のないことです。

 

そればかりか、そのようなネガティブな思考はうつ病の症状を悪化させます。

 

小さなことでも構わないので、今できていることに意識を向けてみましょう。

 

新しく何かに挑戦したなど、大きなことでなくて構いません。

 

寝る前に今日できたことや今日あった良いことを3つほど書き出すワークがおすすめです。

 

自己効力感を高める

自分は困難を乗り越える力があるということを実感していくためには、小さい目標を立てて、それを達成していく方法がおすすめです。

 

目標は、80%以上の確率で達成できるものにしておきましょう。

 

達成するのが難しいものだと、失敗したときに「やっぱりできなかった…」と自己効力感が下がる原因となってしまいます。

 

また、目標というと大きなものをイメージしてしまうかもしれませんが、日々やっていることで構いません。

 

たとえば、朝ごはんを食べる、外の空気を吸う、21時までにベッドに入るといった日常を、意識して目標にしてみましょう。

 

毎日やって当たり前と思っていることも、一つ一つ「できた」という感覚を積み重ねていくことが、自己効力感の改善に繋がります。

 

自律性を高める

趣味を楽しむ時間を作るなど、他の人の評価を必要としない、自分の世界で完結できる活動を行うことがおすすめです。

 

以前は楽しんでいたけれどやめてしまったことを再開しても良いですし、チャレンジしてみたかったけど出来ていなかったことを始めてみるのも良いでしょう。

 

これといった趣味がない方や、長い間無気力感があり、いざとなると何をして良いかわからないという方は、軽い運動にもなる散歩から始めてみてはいかがでしょうか。

 

まずは10分からでも、自分がやると決めて、その時間を作って、実際に活動するという経験は、自律性を高めることに繋がっていきます。

 

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【参考文献】

・波多野 誼余夫・稲垣 佳世子 (2020). 無気力の心理学 ーやりがいの条件ー 中央公論新社

・厚生労働省 みんなのメンタルヘルス うつ病 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_depressive.html  (2022年10月23日閲覧)

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鈴木のぞみ

臨床心理士/公認心理師

大学院在学中から、放課後等児童デイサービスや中高生へのソーシャルスキルトレーニング等の現場に携わる。修了後は精神科救急病院に勤務し、カウンセリングや心理検査等の業務に従事してきた。出産を機に退職し、現在は育児の傍ら相談業務を行っている。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2023年1月10日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。