【臨床心理士解説】アダルトチルドレンと発達障害の関係…どう克服していく?

(質問)アダルトチルドレンと発達障害の関係性について知りたいです。発達障害の方でアダルトチルドレンでも苦しんでいる人が克服に向けてどうしたら自分を受け入れられるようになるかについて教えてほしいです。

 

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※アダルトチルドレンは診断名ではなく医学的な概念ではありません。

 

アダルトチルドレンと発達障害

アダルトチルドレンと発達障害は複雑に絡み合っている問題が認められています。

 

様々な研究によって、虐待、とりわけ虐待による愛着障害と発達障害の関係や双方が良く似た臨床像を呈することがわかっています。

 

そのため、結果的な状態だけでは発達障害なのか、アダルトチルドレンや愛着障害によるものなのかの判断は難しいことが少なくありません。

 

お話や診察の中で、これまでのお話を伺いながら、慎重に鑑別が進められていきます。

 

アダルトチルドレンは、狭義にはアルコール依存症の親を持った人、現在では虐待などなんらかの機能不全家族の中で育った人にまで適用されるようになりました。

 

アダルトチルドレンは正式な診断名ではなく、機能不全家族、不十分な療育環境の中で育った人で、それによるなんらかの困難さを抱えている大人を指す言葉です。

 

また、虐待とは大きく以下の4つのタイプに分けられます。

・身体的虐待 (あざが出来るほど殴る・蹴る、火傷させる、など)

 

・心理的虐待 (暴言、大声、脅す、日常的な親の喧嘩、きょうだいで差別、など)

 

・性的虐待 (こどもに性行為をする、させる、見せる、など)

 

・ネグレクト (衣食住や教育、必要な医療を与えない、無視や放置)

こういった虐待を受けて育つ環境にいた子どもは、安心して生活できず、常に緊張や不安のなかで生活をすることになります。

 

安心して生活をすることを経験できない・知らないまま大きくなると、だれかれ構わず人にくっつくなど、対人関係のあり方に特徴が生じてくることもあります。

 

虐待を受けた愛着障害による場合には、前述のとおり安心した養育環境の中で自分の気持ちに共感してもらったり、社会性を教えてもらう機会を著しく欠いていることが少ないと言われています。

 

そのため、そういった経験や学びを積み重ねることが出来ておらず、イメージとしては安心して生きる基盤を失っているような状態になります。

 

そうすると、現在の生活の中で、これまでの生活の中の未処理なままのトラウマがよみがえってきた際に、暴れてしまったり癇癪を起してしまうことがあります。

 

アダルトチルドレンと発達障害の似ている点

発達障害、とくにADHD(注意欠如・多動症)似ている点として、特に学童期(小学生~高校生ごろ)には「落ち着きのなさ」「集中力のなさ」として症状が現れることがあります。

 

虐待を受けた人の非行は、そうでない人よりも重症化しやすいという研究結果もあります。

 

アダルトチルドレンと発達障害の両方で苦しんでいらっしゃる場合には、その根深さから、焦らず長い目で見た治療や克服に向けた練習・時間が必要となってくるでしょう。

 

こどもの頃に満たされなかった気持ちを補ったり、ときにはつらい記憶と対峙する場合があります。

 

そのため、あなたにとって心から安心できる人がいれば、その人に思い切って相談をしてみるのも良いかもしれません。

 

安心してお話が出来、受け止めてもらえることで、あなたの心を満たし、あなたはあなたで良い、自己肯定感を育み自信をつけていくことにつながっていきます。

 

大切なことは、あなたが安心して過ごせる場所、人であるということ。

 

それを基盤として、あなたが発言をしたり、安心して失敗できるようになっていきます。

 

あなたのことをよく考えて、どのようなことが出来るか、日常のアドバイスも得られるかもしれませんね。

 

あるいは精神科医師や臨床心理士などの専門家と一緒に少しずつ、時間をかけて克服を図っていく方法があります。

 

気になること、お困りのことがおありの場合には、ちょっぴり勇気を出して専門家を頼ってみてくださいね。

 

あなたからのSOSを私たちはいつでも受け止めさせていただきたく準備をしています。

 

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【参考】

・こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳 大野 裕(著)

・発達障害とトラウマ  杉山 登志郎

・毒親概念の倫理1  ―自らをアダルトチルドレンと「認める」ことの困難性に着目して
高倉 久有 ・ 小西 真理子

・サブシステムに着目した家族機能とアダルトチルドレン傾向との関連について  井村 文音
松下 姫歌

・家族機能認知とアダルト・チルドレン傾向 諸井克英

ほか、臨床経験と講義資料より構成

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花井菜美

臨床心理士/公認心理師

心理系大学院修了後、渡米。現地NPOサポート団体に所属し活動をする。帰国後精神科や発達障害児支援施設にて勤務。学生、主婦、子ども、夫婦関係など様々な問題を抱える方の支援を行う。2児の母。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2023年3月23日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。