【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの特徴…6つのタイプと機能不全家族との関係

(質問)アダルトチルドレンの特徴について知りたいです。あまり良いとは言えない家庭環境(いわゆる機能不全家族)で育ち、親元を離れたあとも自己肯定感が低くかったり、臆病な状態が続いて、生きづらさを感じています。

 

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※アダルトチルドレンは診断名ではなく医学的な概念ではありません。

 

アダルトチルドレンとは?

アダルトチルドレン(Adult Children:AC)という概念は、1970年代にアメリカで生まれた概念で、もともと『アルコール依存症や中毒者の親と子ども時代一緒に過ごした大人』を指し、そういった人たちの困難を説明するために開発されました。

 

現在ではその枠組みが広がり、家族になんらかの機能不全があり、安全ではない家庭で過ごした人にも適用されるようになってきています。

 

安全ではない家庭とは、すなわち従来の概念と同様のアルコール依存症の親だけでなく、

・ギャンブルや共依存的な親子関係

・親による虐待があった

・過剰な期待があった

・なんらかのトラウマをもたらされた

などといった場合の他にも、互いに話し合い支え合う力が十分に機能していない家族を指します。

 

こういった家族のことを「機能不全家族」と呼ぶことがあります。

 

(☆機能不全家族の定義は大変に難しく、研究者によって多少のばらつきがみられるため、正確な定義は定かではありません。)

 

機能不全家族の中で育った子どもにもアダルトチルドレンという概念が適用されるようになり、一般にも広く認知されるようになっていきました。

 

機能不全家族は周囲から見て、必ずしも明らかな問題が見えるとは限りません。

 

むしろ周りからも気づかれにくく、本人も大人になってから違和感や困難さに気づかれることも少なくありません。

 

機能不全家族の中に育ち、かつ、アダルトチルドレンの特徴を持ち困難さを感じる人もいますが、機能不全家族であったからといって必ずしもアダルトチルドレンの特徴を持ち、生活に困難を抱えるとも限りません。

 

その点を強調したうえで、アダルトチルドレンのもっとも特徴的なポイントとして

「自尊心の低さ」

「自己肯定感の低さ」

が挙げられます。

 

自己犠牲や自分への批判、自分について価値がないように感じる、自己嫌悪してしまうといった「自分を責める」こと、あるいは「他者に必要とされることを求める」といった共依存の特徴がみられる傾向があります。

 

自分の気持ちに蓋をして「良い子」でいたり、そのようにふるまい、相手に好かれようと行動をしたりして、相手を支えることで自分の存在意義を維持している状態です。

 

アダルトチルドレン 6つのタイプ

具体的には、アダルトチルドレンは以下のような6つのタイプにまとめられています。

 

①ヒーロー(Hero:英雄)

家族や家族外にも評価され、良い家族に見えるように、勉強やスポーツなどに励むなど頑張りすぎてしまう。

 

期待に応えるために頑張ることが続いていくことで“頑張ってしまう子”になっていく。

 

②クラウン(Clown:道化師)

明るく面白く、ひょうきんに振舞うことで、空気を和ませ家族内の葛藤を減らそうとする。

 

和ませることで問題から目をそらせる。表面的には可愛がられ、マスコットやペットのような存在だが、クランの仮面の下には寂しさや悲しさといった素顔が隠されている。

 

③プラケーター(Placater::慰め役)

仲介をしたり、暗い顔をしている家族・人をなだめて寄り添う。

 

家族のいさかいや怒りを仲裁する役割を担い、家族内のカウンセラーのような存在となる。

 

④スケープゴート(Scape goat:生贄・犠牲)

自分を犠牲にして生じた問題を自分のせいにする。

 

関心を引くために、わざと好ましくない行動をとったり、ネガティブな側面を一身に背負い込む。

 

「この子さえいなくなれば、すべて解決するのではないか」と家族に幻想を抱かせることで家族崩壊を防ぐ役割となっている。

 

非行がある人の中には、このタイプの場合もある。

 

ヒーロー(英雄)の対極的な存在。

 

⑤ロストワン(Lost one:いない子)

目立たず、静かに過ごす。目立たず大変静かなため、いなくなったことさえ気づかれにくいこともある。

 

このようにして人間関係から距離を取り心が傷つくことから自分を守る。

 

⑥イネイブラー(Enabler:支え役)

偽親とも呼ばれ、親の不在や育児放棄(ネグレクト)がある際に、親の代わりに家事や育児、仕事などを担う。

 

家族メンバーに尽くしたり、他者に世話を焼いて親のような役割を果たしたりすることで、自分の問題に向き合うことを回避する。

 

さいごに

アダルトチルドレンと呼ばれる人の中でも持っている特徴は上記の中のどれか、あるいはそのうちいくつか、「強くあてはまるところ」と「そんな傾向もあるかな、と感じるところがある」などと様々ですので、アダルトチルドレンの人の特徴は〇〇と言い切ることはなかなか難しいところです。

 

また、必ずしも「当てはまる項目があるからアダルトチルドレンである」と言えるものでもありません。

 

ご自身の家庭環境などについて気になるところがおありの場合に、アダルトチルドレンであることを知って、納得し、救われる方もいる一方で、アダルトチルドレンについての情報を目にして「自分はアダルトチルドレンの特徴がある」と信じ込んでしまうのは、かえって自分自身を苦しめてしまう恐れもあります。

 

もともとの個性や、これまでどのように過ごされてきたか、現在感じておられる生きづらさや生活のなかでの困難さはどのようなものかなど、様々な要素が複雑に絡み合っています。

 

アダルトチルドレンの特徴に関する調査や紹介の内容には、どうしても曖昧さが生じがちです。

 

アダルトチルドレンは決して医学的な診断ではなく、概念を説明するものですので、生きづらさについて「こういうところがあるのかな」と今後のご自身への参考程度にご覧いただけたらと願っています。

 

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【参考】

・こころが晴れるノート うつと不安の認知療法自習帳 大野 裕(著)

・発達障害とトラウマ  杉山 登志郎

・毒親概念の倫理1  ―自らをアダルトチルドレンと「認める」ことの困難性に着目して
高倉 久有 ・ 小西 真理子

・サブシステムに着目した家族機能とアダルトチルドレン傾向との関連について  井村 文音
松下 姫歌

・家族機能認知とアダルト・チルドレン傾向 諸井克英

ほか、臨床経験と講義資料より構成

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花井菜美

臨床心理士/公認心理師

心理系大学院修了後、渡米。現地NPOサポート団体に所属し活動をする。帰国後精神科や発達障害児支援施設にて勤務。学生、主婦、子ども、夫婦関係など様々な問題を抱える方の支援を行う。2児の母。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2023年3月25日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。