自分が分からなくなる…自分を見つめ直す3つの方法とは?米国認定カウンセラーが解説

2017.12.01公開 2019.05.16更新

「あなたは、どんな人ですか?説明してください」

 

―この質問にみなさんは、どれくらい「自分」を説明できますか?

 

「自分が何者か、どんな人か」を表す言葉をアイデンティティと言い、アイデンティティは全ての人にあります。

 

しかし、自分が何者か分からないとき、自分が何を必要としていて、何をすればいいのかが分からず迷うことがあります。

 

自分のアイデンティティを知ることは、自分の軸となるものを見つけ、自分のしたいことに向けて活動するために大切なことなのです。

 

今回は、自分のアイデンティティを見失ってしまう原因、その時の対応についてお伝えします。

 

「自分を見失う」とは?

まず、自分を見失うといことは、「自分」という人を説明する言葉が分からなくなることです。

 

アイデンティティとは、社会的なアイデンティティや独自のアイデンティティを指し、いくつかの構成要素があります。

 

社会的アイデンティティは親族関係や民族性などを指します。

 

一方、独自のアイデンティティとは自分の見た目、話し方や振る舞い方などの表現方法(スタイル)、性格、考えや感情などのことです。

 

「何が好きか嫌いか、何を大切にしていて、どのような生き方をしているかなどを全く説明できない…」

 

「そういったことを考えれば考えるほど苦しくなる…」

 

こういった状態は、自分の正体が分からない状態、または自分の正体を認めたくないということが考えられます。

 

 

自分を見失う人と見失わない人の違いって?

では、なぜ自分のアイデンティティを見失う人と見失わない人がいるのでしょうか。

 

理由は複数考えられると思います。

・育ってきた環境により、自分の正体に気づいていないこと(気づく機会がなかった)

・自分自身についての自己理解と他者からの認識に違いを感じること

・自分自身の状態に違和感があること

などの理由で「自分」を見失う可能性が高くなります。

 

具体的には、育ってきた環境において、自分で自分のことを考える機会がなかったり、周囲から考え方や物など全てを与えられ、考える機会を持つことができなかった場合は、自分の正体に気づくことができないことがあります。

 

よく聞く話かもしれませんが、親が決めた道をそのまま素直に従って進むことで過ごしてきた場合があります。

 

自分の興味のあること、したい事に目を向ける必要がなく、仮に気づいたとしても、その家族環境が原因で、自分のしたいことができないことがあります。

 

これらは、成長して自分の進路を考える時や、引っ越しなどで過ごす場所や関わる周囲の人たちが変わることで、今までの自分にとって「当たり前」と思っていた環境との違いから気づくことも多いかもしれません。

 

また、自己理解と他者による自分への理解が違う場合があります。

 

例えば、自分では自分を「柔軟で、ほとんどの人と仲良くなれる」と理解していたのに、他者からは「八方美人で自分の意思がない」、または真逆の「頑固で敵を作りやすい」などと言われるケースです。

 

自分で考えていた自分自身とは異なることを他者から言われると、そのギャップに自分自身のことが分からなくなり混乱してしまうことがあります。

 

 

アメリカで見たアイデンティティの揺れ

私がアメリカでカウンセリングをしていた時、この混乱に陥る20代前半のクライアントが多くいました。

 

原因は人種や文化の違いでした。

 

移民が多く、多文化で多民族のアメリカで生まれ育った子供にとって、家族の背景は非常に複雑です。

 

様々な国の血筋が混ざりあっており、その結果、生まれてきた子供の見た目にも影響が出ます。

 

あるクライアントが、

「私は自分をラテン系アメリカ人だと思っているのに、他のラテン系アメリカ人には、あなたはラテン系ではないと言われた。

 

「でも、家では家族がラテン系アメリカ人と認識している。私は自分がいったい何者なのか分からない。」

と嘆いていました。

 

自分や家族は自分たちを「ラテン系アメリカ人」と認識しており、家庭の文化もそのように過ごしているにも関わらず、片親が黒人や白人だったりすると、そのことで他者の認識では「ラテン系アメリカ人ではない」と認識されることがあります。

 

記憶に新しい代表的な例で言うと、オバマ元アメリカ大統領がそうです。

 

彼の親は白人と黒人であることで、黒人初の大統領という言葉に対して、彼は黒人ではないと主張する人たちがいました。

 

 

自分を見失い、依存状態に

このように自分の認識と他者の認識が違う場合、本人に混乱を招いてしまいます。

 

いずれにしても、これらが原因で自分を見失うことが多いのは、成長において自我を確立する前や、途中段階で多感な時期である思春期です。

 

「自分」という独自性に自信がなく、あやふやなところに、「自分」を揺るがすようなショックな言葉や場面に直面すると、自分が何を求めているのか、自分が何者か分からなくなります。

 

その結果、周囲の親しい人に頼ることが増え、その人なしでは何も決められない、できない、という依存状態になることもあります。

 

また、逆のこともあります。

 

自分のことを知っているけれど、他者との違いに気づき、違うことに不安や恐怖を感じ、人に合わせることを選ぶこともあります。

 

思春期は特に、周囲の反応に敏感になり、そればかりに目が向いてしまうことが多く、自分を隠すなど、自分をないがしろにしがちです。

 

このように、自分を無視しつづけると、どんどん自分が何を好きで、何を求めていて、何を大切にしたいかが分からなくなります。

 

 

自分自身に違和感がある場合

自分を見失う理由の3つ目である、「自分自身の状態に違和感がある」ことは、前の2つとは少し異なります。

 

この違和感というのは、自分自身の状態(事実)と自分の認識が合わないことを指しています。

 

代表的なものでは、性同一性障害がそれにあたります。

 

自分は生物学的に男性または女性として生まれてきたけれど、育つ過程において、身体的な性別と自覚している自分の性別が合わず、混乱することが起こります。

 

例えば、身体が男性のため、男子トイレに行くけれど、とても恥ずかしい気持ちになる、などの体と心の違いが表れます。

 

このような違和感は、早い人では幼少期に気づき、心に正直に生きようとする人もいれば、なんとなく違和感があることに気づいていても気づかないフリをし、結婚して家庭を持つまで、自分の心を無視し続けることもあり、人により大きく異なります。

 

 

他者に相談しづらいアイデンティティの悩み

自分のアイデンティティに悩みを持つことが多く、また他者に相談できない人も多くいます。

 

自分のアイデンティティを見失うと、自分の人生をどのように生きていけばよいのか分からず、自分が進む先を見失うことにも繋がります。

 

何をしたいか自分で分からない時、自分の価値が分からなくなり、自尊心や自信が極めて低くなります。

 

そのような状態で日々を送ることは、辛く、空しく感じることが多くなることを容易に想像できると思います。

 

だからこそ、少しでも「自分」とは何物なのかを見つけることがとても大切です。

 

では、どのように対応していけばよいのか見ていきましょう。

 

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髙田尚恵

米国認定カウンセラー認定証取得

ニューヨーク州立大学プラッツバーグ校大学院カウンセラー教育学部メンタルヘルスカウンセリング学科にて修士号取得。メンタルヘルスカウンセラーとして勤務し、個別カウンセリング、カップルカウンセリング、心理教育などを提供。帰国後、メンタルヘルス不調による休職・離職者の社会復帰を支援。米国認定カウンセラー認定証取得(National Certified Counselor Certification)、ニューヨーク州基準臨床メンタルヘルスカウンセラー国家試験合格(National Clinical Mental Health Counselor Examination for New York)、臨床トラウマプロフェッショナル認定証取得(Clinical Trauma Professional Certification)

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2017年12月1日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。