【臨床心理士解説】愛着障害で恋愛依存…不安で続かない…恋愛できない…克服するには?
(質問)私自身、愛着障害の傾向があり、恋愛で依存ぽくなってしまったり、些細なことで不安になったりして長続きしないことが多いです。どうしたら克服できるでしょうか?
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恋愛依存と愛着障害
恋愛依存について、心理学の研究において、
「一人でいることやパートナーがいないことに耐えられず、恋愛関係・親密な友人関係にある対象に過度に依存する、依存しその人のために尽くす。あるいは、見捨てられることを恐れ自己犠牲的な行動をとっている状態」
との定義があります。
愛着障害の特徴は過去の記事でもお伝えしたように、アタッチメント(愛着)の形成がうまくいっておらず、自尊心・自己肯定感・自己評価の低さや、対人関係では適度な距離の取り方に難しさがみられることがよくあります。
特に、恋愛依存の傾向のある方の特徴として、
・他者に確実な愛情を求め、
・自分自身よりも他者(恋人)を最優先して多くの時間や関心を与え、
・見捨てられ孤独になることを恐れる傾向がある
といった報告もあります。
そのため、「自分を好きになる人なんていない」などといった低い自己評価を持つ場合がありますが、恋人が出来た際には、
・愛情を求める欲求
・恋人に見捨てられるのではないか
・恋人が出来たチャンスを逃したくない
などといった気持ちが絡み合い、自己犠牲的な行動をとってしまったり、恋人への気持ちが不安定になってしまうことも少なくないようです。
そういった結果として、長続きができず、いつも同じようなパターンで恋愛が終わってしまう、同じような人を好きになってしまう、といったことが生じてくることもあります。
大人になったから手遅れ、ではない
アタッチメントの形成は基本的な理解としては幼少期に母親や養育者との間で育まれていくものですが、大きくなってからでもアタッチメントに関わる困難さの改善、治療は可能と考えられています。
大人になったから手遅れ、とあきらめる必要はないのですよ。
時間をかけながら、少しずつでも変化していくことができる力、変化していく可能性は、いつでもだれでも持っている素晴らしい力です。
この傾向から少しでも抜け出し克服するためにはどのようなことが考えられるか、以下にご紹介いたします。
まずは自分の愛着スタイルを知る
心理学では愛着スタイルには4つの型があるとされています。それぞれの特徴を添えてご説明します。
安定型
幼少期に親や養育者とのアタッチメント形成がうまくできており、不安定な時にも「大丈夫」と思うことが出来たり、人とも適度な距離感で付き合うことができるようなタイプ。
ほどよい距離感で対人関係を築くことが出来るため、独占的になることはほぼなく、信頼関係を結ぶことも出来る。
回避型
距離を置いた対人関係を好む傾向があり、裏切られたりすることへの恐怖心から、自分の心のうちを表現することの苦手さや感情を抑え込んでしまう傾向がある。
親密な関係となることを拒んでしまう。
不安(とらわれ)型
他者と親密な関係になることを希求し、関係が失われる、見捨てられることへの不安が強い。そのため、他者に執着したり独占欲や嫉妬心が膨らみあがってしまうことがある。
相手に合わせることで関係を維持しようと努めるが、感情の起伏は大きめで、ふとした相手の言動にも不安に苛まれたり、喜びすぎてしまったりすることがある。
恐れ型
回避型と不安型の混合したタイプ。他者を避け一定の距離を保つ傾向がある一方で、親密な関係を求める傾向がある。
そのため、相手が近づいてくると避けてしまうが、見捨てられる不安もあるため遠くなりすぎると不安になり、ときに怒りを表現したり否定的な態度になってしまうことがある。
自分のなかでは様々な葛藤や苦痛を抱え込んでいるが、それを抑え込んでしまう傾向がある。
自分の型は?好きになる人の型はどれ?
上記の4つのタイプの中で、「あ、自分はこの型かな」と当てはまるものはありましたか?
1の安定型は安定した対人関係を結びやすいタイプとされていますが、他の3つの型はそれぞれの困難さを持ち合わせています。
しっかりどれかに当てはまる方もいれば、どちらかと言えばこのタイプかも、おと感じられる方もおられるかもしれません。
まずは自分がどのようなタイプか、どんな傾向があるかを知ることは、自分の理解を進めていくうえで大切なことでもあります。
自分にどんな特徴や傾向があって困りがちなのか、悩んでしまうのかについてのヒントとして役立ててみてくださいね。
また、恋人や好きになる人の型としてはいかがでしょうか。
いつも同じような型の人を好きになってしまう場合には、もしかしたらあなたとその型の人との相性がそもそもうまく合わないところがあるのかもしれません。
あるいは、改善ポイントがみえてくるかもしれませんね。
自分にとって安心できる人、環境を知る
アタッチメント形成が未完成の方の場合、信頼し安心できる存在の獲得が未達成となっていることが考えられます。
私たちは「心の拠り所」として、安心できる場所、信頼・安心できる人を持つことは生きていくうえでとても重要なことでもあります。
ここなら安心できる、この人なら信頼して話しても大丈夫、失敗しても大丈夫、そのように思えるような場所や人をなにか一つでも見つけられると、それがあなたを守る「安全基地」となり手助けをしてくれる存在となるでしょう。
急に見つけて信頼することは難しいですので、少しずつ、あなたのペースで安全かどうか、信頼しても良さそうかを確かめながら、その存在をあなたの中で深めていっても大丈夫ですよ。
専門家を知る
いろいろ考えたり試したりしてみても、もうどうにもならない、苦しくてつらくて仕方がない、頼れる人も思いつかない、そのようなこともきっとあるかと思います。
そのようなときには、心理師などの専門家を頼ってみるのもひとつの方法です。
今日ではカウンセリングルームや病院へお越しいただいて対面でお話をするだけではなく、オンラインでの相談や電話、テキストによる相談サービスもあり、匿名性が守られているものもたくさんあります。
専門家へご相談されることによって、これまで気が付かなかった見方や考え方が発見できるかもしれません。
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【参考】
米澤好史 愛着の視点からの発達支援 -愛着障害支援の立場から- 発達支援学研究第2巻第2号 2022
友田明美 アタッチメント(愛着)障害と脳科学 児童青年精神医学とその近接領域 2018
川本薫, 後藤和史 愛着スタイルと境界性パーソナリティが恋愛依存に与える影響 - 日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第 77回大会
伊福麻希・徳田智代 2006 恋愛依存傾向尺度作成の試み-男女観における恋愛依存傾向の比較- 久留 米大学心理学研究
やさしくわかる!愛着障害 ―理解を深め、支援の基本を押さえる 米沢好史 2018 ほんの森出版
愛着と愛着障害: 理論と証拠にもとづいた理解・臨床・介入のためのガイドブック ビビアン・プライア , ダーニャ・グレイサー
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2023年7月6日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。