【臨床心理士解説】アダルトチルドレンで恋愛が苦手…恋愛を楽しむための方法って?

(質問)幼少期に親から健全な愛情を与えられなかった所謂アダルトチルドレンです。男性からの好意を素直に受け止められず、いつも恋愛がうまくいきません。大好きな人とちゃんと恋愛できるようになるにはどんな所に気を付けたり、意識をするといいのでしょうか?

 

(臨床心理士からの回答)アダルトチルドレンで恋愛がうまくいかないことを自覚していること、そして大好きな人とちゃんとした恋愛がしたい、という想いをもっている時点であなたはアダルトチルドレン克服の道をもう歩き始めています。

 

大切な人と幸せな生活を送るために意識したいポイントを3つ、ご説明します。

 

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※アダルトチルドレンは診断名ではなく医学的な概念ではありません。

 

「愛」と「甘えの欲求を満たすもの」は別物

愛については何が正解なのかについて様々な考え方がありますので、ここでは一旦置いておくとして、少なくとも「甘えの欲求を満たすもの」と考えてしまうと恋愛はうまくいきません。

 

「甘えの欲求」とは具体的には、「私を満足させて!」という気持ちのことです。その気持ちを満たしてくれるもののことを「甘えの欲求を満たすもの」と呼びます。

 

例えば、一緒に食事に行こう、と誘われたとき。

相手が「何食べたい?」と聞いてきたので「どこでもいいよ」と答えるとします。すると相手が連れてきたのはどこにでもあるファミレス。

 

どこでもいいよ、といったのは本心のはずなのに、連れてこられたのがファミレスというのはなんだか腹立たしい。

 

「この人、本当は私を好きじゃない(愛してない)んじゃ?私のこと大事なら、もっとおしゃれなお店に連れていくでしょう?」

 

と頭をよぎる。

そんな不満が態度に出て、それをみた相手は「どこでもいいって言ってたのに」と嫌な気持ちになる。その嫌そうな態度はさらにこちらの不満を大きくさせる。

 

これは、愛とは甘えの欲求を満たすものだ、という考えが根本にあるときに起きる、よくあるエピソードです。

 

自分としては食べたいものに対しては特に希望は無いものの、相手に対しては

「(私のこと好きなら)私が満足するお店に連れて行ってね」

という甘えの欲求があるのです。

 

このように、自分のことが好きなら自分を満足させてくれるはずだ、という気持ちを相手に対して抱いていると、事あるごとに不満を感じ恋愛はうまくいかなくなります。

「相手は自分を満足させるために存在しているのではない」

 

「自分を満たしてもらうためにこの人と付き合っているのではない」

という意識は自分にも相手にも必要です。

 

尽くす行為は無意識に見返りを求めている

恋愛をうまく続けるには相手に尽くすことが必要、という考えのアダルトチルドレンの方もいます。

 

また、そう考えている自覚は無くても、結局いつも気づけば相手に尽くす形になっている、という方もいます。

 

この背景には、幼いころに無条件に愛してもらえず、親から

「良い子にしていたら優しくしてあげる」

「これが出来たら受け入れてあげる」

といったような条件付きの愛のメッセージを(言葉でなくても態度から)受け取っていたことが関係していることもあります。

 

あるがままの自分では受け入れてもらえないと経験から学んでしまっているので、相手に尽くすことで

「だから嫌わないで」

「だから私のこと気にかけて」

「尽くした分だけ、私を愛して」

という見返りを相手に求めてしまうのです。見返りを求める姿勢は当然相手に伝わります。

 

すると、相手からは「なんか重い」と思われてしまうのです。

 

相手のことが好きでも、相手のために尽くす必要はないのです。

 

「(尽くさなくても)私のままでいいんだよ」という意識を心に留めておいてください。

 

心の距離が近くなったときこそ注意

片思いしていた相手が自分のことを好きだとわかったとき

お付き合いが始まったとき

遠距離だった相手が近くに戻ってきたとき

同棲を始めたとき

結婚したとき

これらのように、これまでよりも心の距離が近くなったときこそ、アダルトチルドレンにとっては注意が必要です。

 

というのも、子どものころに心の距離が(本来ならば)近い相手である両親との関係や、子どものころから心に押し込めてきた怒りなどのネガティブな感情を、こころの距離が近くなった相手に重ねてしまうからです。

 

心の距離がこれまでよりも近くなったタイミングで、

「自分ではどうしてなのか分からないけど彼のことが嫌になってきた」

 

「なんか彼といるとイライラする」

 

「好きな気持ちが冷めてきた」

という気持ちが生まれます。

 

そして、また相手との距離が離れると、今度は自分の愛情を満たしてほしいという気持ちや、彼を好きだった本来の気持ちが戻ってきて離れたことを後悔する、というパターンを繰り返すことも。

 

どこかのタイミングで急に相手に対してネガティブな感情が湧き上がり距離を取りたくなったとき、その原因にはっきりとした心当たりがないとき、もしかしたらこれまでよりも心の距離が近くなったのではないかと振り返ってみてください。

 

もしそうなら、そのネガティブな感情は相手に対してではなく、昔からあなたの心の中にあった両親などへの気持ちが顔を出したものかもしれません。

 

そのことに気が付けば、なぜだかわからなかった相手へのネガティブな感情に振り回される必要はないのです。

 

相手もあなたも、全く悪くありません。

 

さいごに

最後に、アダルトチルドレンの方は長年の家族との関係の中で知らず知らずのうちに、恋愛がうまくいかなくなるような思考のパターンを身に着けていることがとても多いです。

 

そして、まさに恋愛で悩んでいる最中にそのパターンに自分から気づいて、意識して思考や付き合い方を変えることはとても大きなエネルギーがいることで、何度も失敗しながら、時には傷つきながら進んでいくことになります。

 

そこで私がお勧めするのは、「ちゃんとしたお付き合いがしたい」「大切にしたい」と思えるパートナーができた時点、もしくはそういった人が現れる前から(うまくいかなくなる前から)、心の専門家にいつでも相談できる環境を作っておくことです。

 

専門家と話をすることで、アダルトチルドレンとして消化できていない過去の気持ちを整理したり、これまでのうまくいかなかった恋愛のパターンを一緒に検討してみたり、現在進行中の恋愛についての自分の感情や考え方の変化を客観的に見て新しい気づきを得ることができ、悩みながらも良い方向へと進んでいこうとするあなたの力になるかと思います。

 

話す内容によっては直接専門家と顔を合わせては話しづらい、ということや、予約をして必ずその日時に行かなくてはいけない、ということにハードルを感じることもあるかと思いますが、最近では匿名でメールなどを使って専門家に相談できるものもありますので、あなたのライフスタイルにあった相談方法を選んでみてはいかがでしょうか。

 

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※アダルトチルドレンは診断名ではなく医学的な概念ではありません。

 

【引用文献】

〇西尾和美(1998):アダルト・チルドレン 癒しのワークブック、学陽書房

 

【参考文献】

〇C.L.ウッドフィールド(1997):内なる子どもを癒す―アダルトチルドレンの発見と回復、誠信書房

〇W.クリッツバーグ(1998):アダルトチルドレン・シンドローム、金剛出版

〇緒方 明(1996):アダルトチルドレンと共依存、誠信書房

〇岸見一郎、古賀史健(2013):嫌われる勇気、ダイヤモンド社

〇西尾和美(1997):アダルト・チルドレンと癒し 本当の自分を取りもどす、学陽書房

〇西尾和美(1998):アダルト・チルドレン 癒しのワークブック、学陽書房

〇アスク・ヒューマンケア:アダルトチルドレン――回復の4ステップ https://www.a-h-c.jp/article/7185(2023年4月閲覧)

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福丸みお

臨床心理士/公認心理師

臨床心理士・公認心理師。大学院修了後、精神科やメンタルクリニックにてカウンセリング業務やデイケア、生活相談等に従事。心の病から日常生活での悩みまで幅広く対応し、多くの相談者の心に寄り添う。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2023年4月28日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。