〈ほっといい場所ひだまり〉引きこもり、心の悩みに寄り添う居場所作りを通じて

2018.04.03公開 2020.06.03更新

今回のインタビューでは、ひきこもりや不登校をはじめ、様々な心の悩みを抱えている人のための居場所を提供している、看護師でNPO法人CNSネットワーク協議会 代表理事の後藤美穂さんにお話を伺いました。

 

精神科の看護師を志したきっかけ

はじめまして。NPO法人CNSネットワーク協議会の代表理事の後藤美穂と申します。

 

これまで、看護師として精神科領域や企業保健師の活動、薬の開発等にも携わりながら、2014年1月にNPO法人CNSネットワーク協議会を立ち上げました。

 

もともと、私が精神科の看護師を志した一番初めのきっかけは、すごく身近な人を自殺で亡くしたことでした。

 

すごく可愛がっていた従弟で、近くにも住んでいたし、近くで見ていたけれども、心の病といったことには全く気づけなくて。

 

その子が高校生の時、クリスマスイブに家族全員でクリスマスケーキ食べて「また明日ね」とみんなで別れたその日の夜のことでした。

 

12月25日の早朝に、みんなで探しに行って飛び降り自殺していたところが見つかったんです。

 

見つかった後、その子の部屋に戻って来ると、いつも散らかってた部屋がピシッと整理整頓されていました。

 

クリスマスイブの夜、「明日もみんなでケーキ食べようね」と言って別れたけど、従弟はもうみんなとケーキを食べられないことを分かっていて、自殺したのかもしれない…

 

そう思った時に、「私の従弟や、その周りにいる家族や親族と同じ思いをする人を出したくない」と強く感じたんです。

 

当時の私はまだ看護などの勉強をしていない普通の高校生でしたが、この思いはずっと私の中であって、それから精神科の看護師を志すようになりました。

 

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精神科看護師から産業保健師へ

看護師になってからの約5年間、精神科病院の閉鎖病棟やデイケアなどで働いていました。

 

患者さんともっといっぱい話したり、聞いてあげたいっていう思いがある一方で、病院ではやはり薬物療法中心で、業務の多忙さでなかなか時間が作れずにもどかしく感じたりもしていました。

 

そんなある時、勤めていた病棟で残念ながら患者さんが自殺されたことがありました。

 

そして、その自殺された患者さんの病室を見た時に、やっぱりピシッと整理整頓されていて。

 

私が従弟を亡くした時に感じた、あのサーッとする思いと全く同じ感覚が出てきました。

 

その時、「私、このままじゃだめだ」という気持ちが出てきたんです。

 

ここで看護師をしているよりも、入院や自殺となってしまうもっと前の段階から、精神科の看護師や臨床心理士が話を聞くところから始めないとだめだな、と。

 

薬だけでは取れないモヤモヤ感に対処したり、考え方を楽な方向に持っていくことで、自分で自分の心をコントロールできるようになってもらいたい、という思いがだんだんと強くなっていきました。

 

そこで、精神科病棟を退職後は予防的なアプローチもできる産業保健師としてのキャリアを始めました。

 

企業で働く人のメンタルケアには、かれこれ10年以上携わっています。

 

うつで休職し、復職を本人が希望していたとしても職場に戻れないケースは少なくないのですが、産業保健師として、いかに復職しやすい状態にしていくか力を入れて取り組んできました。

 

職場復帰や次のキャリアへ歩みやすくするために、自己モニタリングができる状態になることが一番大切なのかなと思っています。

 

例えば、躁うつの方で、仕事を頑張り過ぎてしまうと、そのうちダブルブッキングしたり、アポを忘れたりしてしまいます。

 

そういう場合、「◯◯といったミスが出たらSOSだよ」といったチェックポイントを手帳にメモしておいたりして、自分なりに把握してもらいます。

 

ある程度、メンタルの状態が良くなってからにはなりますが、「こうなったらSOSだよ」という行動を把握していくことは、復職にあたってすごく大事かなと思っています。

 

また、自己モニタリングができるようになると、自分のSOSのサインに気づいてもらうだけでなく、SOSのサインが出た時の対処法やSOSが出ないためのリストを書いてもらうようにしています。

 

「最悪な状態にならないために何をしたらいいのか」ということを思い出してもらうことや気づいてもらうこともやはり大事なポイントです。

 

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身近なコーピングをお守り代わりに

職場復帰を目指す方に、「身近なコーピングを20個出せるようになろう」とよく言っています。

 

コーピングは簡単に言うと「自己対処方法」という意味なのですが、お金がかかる方法ばかりだと、あまり実行できず形だけになってしまいますよね。

 

そうならないために、「自分がこの状態だったらリラックスできる方法」を20個、身近なところから見つけてもらうことを大事にしています。

 

でも、いきなり20個書けと言われても難しいかもしれません。でも本当に「身近」で良いので、例えば、

 

「コーヒー缶を開けた時の香りを嗅ぐ」

「とりあえずボーっとしてみる」

 

といった、お金がかからない本当に身近もので良いんです。

 

すぐできるコーピング20個を手帳とかにメモしておいてもらって、しんどいなって思った時に、すぐにできそうなコーピングを見て、対処するようにしてもらっています。

 

対処法として、病院に行くとか、誰かに相談することは物理的に難しかったりとハードルが高い場合もあります。

 

自分ですぐにできて、かつ無料であれば、手軽ですし、それが20個もあるとお守り代わりにもなりますよね。

 

ひだまりでは、身近なコーピングを一人ではなく、グループワークを通じて見つけていくので、他の人の対処法で良いのがあれば自分のものにしてもらったりもしています。

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近藤雄太郎

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  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年4月3日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。