「ほっといい場所ひだまり」安心できる居場所作りを通じて【後藤美穂さんPart1】

 
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今回のインタビューでは、ひきこもりや不登校をはじめ、様々な心の悩みを抱えている人のための居場所を提供している、看護師の後藤美穂さんにお話を伺いました。

 

 

ほっといい場所「ひだまり」

はじめまして。後藤と申します。NPO法人CNSネットワーク協議会の代表理事をしています。

 

これまで、看護師として精神科領域や企業保健師の活動、薬の開発等にも携わりながら、4年前の2014年の1月にNPO法人CNSネットワーク協議会を立ち上げました。

 

そして昨年より、ひきこもり等、こころの悩みや問題を抱えている人のための居場所として、「ほっといい場所 ひだまり」の運営を始めました。

 

「ひだまり」では、利用者の皆さんが、気軽に相談に来れるスペースとして運営しています。

 

「うちの子がひきこもっていて、医療機関になかなか繋がれない」

 

「病院でデイケアを勧められたけれども、本人としては『デイケアは自分の行く場所じゃない』などと言って、結局どこにも行けずにいる」

 

「バイトはするものの、長続きしない」

 

といった、親御さんからのご相談から利用に繫がるケースもあります。

 

私が病院勤務だった頃、多くの患者さんと接する中で、心や考え方が楽にならないことには、いくら投薬をしたところで限界があると感じることが増えていきました。

 

精神科の治療は、投薬と心理療法でセットになって進めていくのですが、病院だと投薬中心になりがちです。

 

そういった背景から、「ほっといい場所 ひだまり」を立ち上げることになったのが、昨年の4月でした。

 

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東京都若者社会参加応援事業の登録団体

その時、東京都の若者社会参加応援事業の研究団体として採択されて、現在は東京都の若者社会参加応援事業の登録団体という一面もあります。

 

東京都の事業としては「引きこもりの居場所」という位置づけになっています。

 

引きこもりの定義としては「6ヶ月以上社会生活ができない方」といったようなものがある一方で、「ひだまり」に通われてる方々は様々です。

 

例えば、

 

・普段はアルバイトしながら、ストレスを軽くする場所として利用されている方

・どこかでアルバイトをする前のトレーニングとして利用されている方

・就労移行支援施設を利用しようかどうか考えている方

・すでに就労移行支援施設に通いながら利用している方

 

といった、20代、30代、40代を中心に利用していただいています。

 

内閣府の調査などで、引きこもりは男性の方が多いと言われていることもあり、「ひだまり」でも女性が少ない傾向にあります。ただ、これは課題でもあります。

 

実際、家事手伝いや主婦といった肩書がある一方で、引きこもりに近い状態の女性の方にとって、自分が「引きこもり」であることを認識しづらい面もあるようです。

 

そういったことからも、「女性のための居場所作り」といった視点にも力を入れてやっていきたいなと思っています。

 

 

ひだまりの「居場所プログラム」

ひだまりのプログラムでは、認知行動療法を主に取り入れていて人気も高いです。

 

認知行動療法のメンタルトレーニングの場合、週1回程度、利用者さんに来てもらって、まずはアイスブレイクから始まります。

 

利用者さんの中には、「誰かと話すのがとても緊張する」「自分の意見が言えない」という方もいらっしゃるので、アイスブレイクのやり方も工夫しています。

 

アイスブレイクの中で、クイズを取り入れているのもその1つです。

 

例えば、私が「りんご」を思い浮かべたとして、利用者の皆さんが私に「赤いですか」「丸いですか」「食べ物ですか」などと質問を繰り返しながら、「りんご」を当てるといった感じです。

 

誰でも参加できるようなアイスブレイクを通じて、リラックスしてしゃべれるようになれる空気作りを大事にしています。

 

その他にも、「ワークプログラム」といって、就労や人と接するなど、社会生活を送るために必要なふるまいやコミュニケーションを学ぶプログラムも提供しています。

 

 

ひだまりが一番大切にしていること

ひだまりでは利用者さんに、

 

「今日の私の気分は、1~100のうち、80%ぐらいです」

「今日、調子が悪いのは、昨日嫌なことを言われて〜」

 

といった振り返りを行ってもらい、自分のことを他の人に伝える時間を設けています。

 

これは、自分の心を自己コントロールできるようになったり、自分で自分の心の状態を知ることを目指すことを、ひだまりとして一番大切にしているからです。

 

また、ひだまりには臨床心理士や看護師がいるので、

 

「前回はこうだったね」

「こういう状態になるとうつっぽくなっちゃうんだね」

 

といったことをホワイトボードなどを使いながら話し合うので、より自分の状態の理解が深まりやすくなります。

 

もちろん、他の利用者さんの話も聞けるので、「自分だけが辛い状態じゃない」と思ってもらえる場でもあります。

 

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否定しない、安心できる場

ひだまりのルールとして、「否定しない」「中傷しない」という前提のもと、自分の感情を吐き出してみたり、何でも言って良いというものがあります。

 

また、居心地の悪い状態にならないための工夫として、お茶を飲みながら気楽な雰囲気作りも大切にしています。

 

こちらからお題を出したりもしますが、おしゃべり会みたいな感じでやっています。もちろん無理して話さなくてもOKです。

 

利用者さん同士で、同じ趣味の話で盛り上がったりして、「ここでは否定されない」「何を話しても良いんだ」ということを感じ取って欲しいなと思っています。

 

ひだまりのプログラムは、すごく集中しないといけないわけでもないですし、何よりも安心できる場所であり続けたいなと思っています。

 

 

3ヶ月で復職した利用者さん

以前、ひだまりに通われていた、休職中だった利用者さんの例をご紹介します。

 

その方は、ひだまりに通い始めた当初、「仕事ができない」と口にすることが多かったのですが、通い始めて3ヶ月ほどで復職をして、今、正社員で頑張っていらっしゃいます。

 

休職中だった会社に正社員として戻るまでは、3ヶ月の間、1週間に2回ほどひだまりに来てました。

 

会社に戻るまでの期間、その方には「自分の取扱説明書」を作ってもらいました。

 

「こういった時に自分が具合が悪くなる」

「こうなったらこれぐらいの休憩が必要」

「1年間のうち、この辺で不調の波が来る」

 

「自分の取扱説明書」を通じて、自分の状態を見える化、自己分析することで自分としっかり向き合う時間を過ごしてもらったんです。

 

こういった取り組みを通じて、「無理をしすぎない」ということを学んでもらい、自信を持ってもらって無事復職されていきました。

 

 

不登校生の居場所としても

また、ひだまりでは、渋谷区の「こどもテーブル」活動として、不登校、いじめ、なんとなく学校に行きたくないといったお子さんの居場所としても利用してもらっています。

 

朝起きて、「学校に行きたくないな」と思っているお子さんに対して、受け入れられることを体感してもらえればという思いから、この取り組みを始めました。

 

ここでは、ひだまりに来てくれたお子さんに対して、「どうして学校に行かないの?」などと責めるように理由を聞くのではなく、言いたいことを言ってもらうということをまずは大事にしています。

 

ゲームを取り入れたり、絵を描いたりしながら、一緒に時間を過ごしていく中で、

 

「親が『学校に行きなさい、学校に行きなさい』って言ってて、それが辛い」

「実はいじめられてるけど、親には言えない」

「ここに来れば親が安心すると思って」

 

といった、誰にも言えなかった本当の気持ちをポロッと言ってくれるようになります。

 

学校ではなくても、朝起きてどこかに行くという生活リズムを崩さないことは、心の健康を保つ上でも大事と感じています。

 

 

「私は私」と言えた女の子

ひだまりに通っていた女の子で、お母さんの顔色を常に伺うような方がいました。

 

その女の子が何かをやろうと思っても、お母さんから「それはあなたに向いてないんじゃないの?」とか言われて、一歩を踏み出せなかったり…。

 

常にお母さんの顔色を伺うような子でしたが、ひだまりに通いながら、「自分の気持ちを出して良いんだ」と少しずつ意識が変わっていくようになったんですね。

 

そんな女の子がある日、お母さんに対して「『私は私だから』って言えた」って教えてくれたんです。

 

「私は私だから」の一言って、口にするまでが大変だったと思うんですが、このことを境に、その子は変わり始めました。

 

「お母さんはお母さん、私は私」という、親に対するある種の諦めだったり、自分とは別の生き方ということを感じ取った上で、自分の人生を前に進めていこうとする姿はとても印象的でしたね。

 

そういった利用者さんにとって、ひだまりがいつでも戻って来て良い場所として思ってもらえると嬉しいですね。

 

この団体の名前を「ほっといい場所 ひだまり」としているので、利用者さんには、ほっとしてもらいたいし、安心感を持って、いつでも来てもらいたい。

 

そして、自分で自分を知り、心をうまくコントロールできるようになって、次のステップに進む、そんな場所になれたらなと思っています。

 

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月に1度の家族会について

家族会ではテーマを決めて毎月行っています。

 

以前の例ですと、「共依存について考えよう」というテーマで家族会を開催したこともありました。

 

共依存は、お互いに依存し合う形で、特に引きこもりの場合、多くみられることがあります。

 

例えば、自分の子供が家に引きこもっていたら、親としては「どうにかしなきゃ」とは思う一方で、その子を見ている自分にほっとすることがあります。

 

それで、満足して落ち着いてしまうと悪いループに陥ってしまうので、家族会を通じて、そういったループを切ることにも役立ててもらっています。

 

ポイントは、いかに家族が、引きこもりのお子さん以外に目を向けられるというところにあります。

 

親のほうが新しい趣味を持ったり、新しいコミュニティで誰かと話してみることで、家庭内の雰囲気が変わることも結構あるんですよね。

 

お子さんとしても、親が常に自分にかまってばかりで、息苦しさを感じていることもあります。

 

親御さんが新しい趣味に目が向くことで、お子さんも気分が楽になることがきっかけで、引きこもりから卒業される方もいます。

 

 

同じ悩みを持つ人たちと繋がる大切さ

あるお母さんの例ですと、美術鑑賞の趣味を見つけて、お子さんとも一緒に美術館にも行きだすようになってから、子どもの引きこもりが終わったという方もいらっしゃいました。

 

引きこもりから卒業したお子さんに、「どうして引きこもりを止めて、外に出てみようと思ったの?」って聞いても、「なんとなく」「もういいかなぁと思って」としか言ってくれませんでした。

 

しかし、色々話を聞いていく中で、家庭内の空気を変えていったのは、お母さんが新しい趣味をみつけたり、友達を見つけて、外の世界に出ていくようになったことが大きかったようでした。

 

もちろん、家族会に参加したから1日で治るというわけではありません。

 

しかし、同じ悩みを持つ人たちと繋がってみることで、何か家庭内の空気を変えるきっかけになるという意味でも、「家族会って大事だなぁ」と感じています。

 

>>続きは第2回

 

 

後藤美穂さん全インタビュー

【Part1】「ほっといい場所ひだまり」安心できる居場所作りを通じて

【Part2】ひだまりを通じて「心の引き出し」をたくさん持てるように

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

 

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