LGBT当事者の臨床心理士が語る、LGBTのマイノリティ性とは?【大賀一樹さん:前】

2016.10.19公開 2016.11.10更新
 
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第1回目は、LGBTの当事者で、臨床心理士としても活躍されている大賀一樹さんにお話を伺ってきました。

 

カウンセラーの仕事だけではなく、LGBTの活動をNPOでもされている大賀さん。

 

専門家としての一面と、悩みを抱えていた当事者という一面の、二つの側面を持つ大賀さんのインタビューをお楽しみください!

 

 

幼少期から自覚していた性の違和感

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はじめまして。大賀一樹と言います。いきなりですが、私はLGBTの当事者です。このことは、幼少期からずっと自覚していたんですけれど、なかなか言えずに悩んで、ずっと隠して生きていました。

 

しかし、カウンセラーになりたいと思った時に、自分自身が隠れて、矛盾した状態で生きるのは、接する子供ですとか大人の方にも失礼だなと思うようになりました。

 

「自分自身が自分らしく生きられてないのに、その人の自分らしさとか幸せを考えられないんじゃないか」と考えたんです。そして、今ではLGBTであることを公にして活動するに至っています。

 

 

学校は嫌い。だからスクールカウンセラーに

臨床心理士・スクールカウンセラーを志したきっかけは、心理学に興味があったというのもあるんですけれど、生きづらさを抱えて生きていたということと、学校の中でいじめにあってきたという経験が背景にありました。

 

私自身、いじめに遭っていた中で、いじめというのは、その人の中にトラウマを作ったり、あるいは成長の阻害、その人の中の自分らしさや将来、希望を大きく削ってしまうということを感じたんです。

 

そういうことを無くしたいという気持ちが強くあって、学校という場は嫌いなんですが、あえてスクールカウンセラーという職業を選びました。

 

自分の中で、まだ学校に対しての色んな思いがあるのは事実です。

 

しかし、あえてそういった自分があんまり好きじゃない現場で、本当に悩んでいる子供をもし支えることができたら、自分自身の学校に対する価値観も変わっていくかな、という考えで、今の仕事をしています。

 

 

幼稚園から始まったいじめ

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いじめのきっかけになったのは、幼少期からすごく女の子っぽかったことが大きいと思います。行動や振る舞いが、同じ世代の男の子と違うというか。

 

「この子は、なんで人と違うんだろう?」と言われたり、「協調性が無い」ようにみんなに見られていました。「なんで君はこうしないの?」といった感じでずっといじめられていました。幼稚園から高校にかけて、ずっとです。

 

しかし、その頃は、その狭い社会で生きるしか術が無かったので、ちょっと不良みたいになって身を守ってみたり、人を遠ざけて生き抜いたり、自分自身が少し不安定な感じでした。

 

また反対に、優等生になって先生からは好かれるというか、社会的な評価を高めてみよう、みたいなことを頭の中でぐるぐる考えたりしながら、色々なことを試しながらやっていましたね。

 

 

逃げるように上京

大学に入って、東京に出てきました。どこかで完全に自分を否定できないし、自分を否定した瞬間、それは自殺とかそういった方向に行ってしまうし。それは嫌だと思って、逃げるように上京しました。

 

実際に東京に出てみると、色んな見た目や振る舞いの方がいて、それが当たり前の文化になっているように感じました。なので来た瞬間に、これまで私にあったような偏見が一切無くなったんです。

 

この18年間むしろなんでいじめられてたんだろう、って思うくらい、普通に自分自身が受け入れられたので、東京に来て良かったなって本当に思いましたし、そういった多様な価値観の人がいて良かったなという風に思います。

 

 

覚悟を決めて両親にカミングアウト

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両親には、大学院を卒業した年に、LGBTであることをカミングアウトしました。

 

もし、カミングアウトしたことで縁を切られてしまって、自分の人生自体が経済的にも成り立たなくなってしまったら…と考えたときに、学部生時代にはカミングアウトできませんでした。

 

大学院を卒業して、自立できると思ったタイミングで言ったのですけれど、結局そのリスクは考えなくても大丈夫でした。相変わらず家族でいてくれたので、受け入れてくれてホッとしたことはよく覚えてます。

 

 

伝えることへの覚悟と葛藤

もちろん、カミングアウトすることに、葛藤や抵抗はありました。

 

例えば、親が私に対して、「将来、普通の会社員になって、普通に結婚して子どもを産んで…」みたいな気持ちがどこかにあるとしたら、それを踏みにじることになるんじゃないかなっていう葛藤もありました。

 

ただ、カミングアウトしてもしなくても、「LGBTである」ということは結局変わらないなんです。

 

それはどうしたって変わらないので、ちゃんと伝えないと、この先ずっと嘘をついていくことになるのも嫌でした。なので、そこは「伝えるしかない」っていう覚悟を持ちました。

 

でも、カミングアウトしたことで、家族がそのことで思い悩んで、家族自身が孤立したり、最悪の場合、自殺したりというケースもあると知りました。

 

そんなことがないように、カミングアウトと同時に、家族のサポートに関する本を一緒に渡したりして、家族のケアも考えていました。それくらいしか出来なかったですが。

 

 

ある性同一性障害の人との出会い

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臨床心理士になって、ボランティアやNPOの中で直接的な支援をする中で、あるLGBT当事者の方に出会いました。

 

その方は性同一性障害の方で、戸籍上は女性だけれども、男性として社会生活を送ることを望んでいました。けれど、ずっと踏みきれずに40代になってしまい、その40年間ほぼ隠れて生き抜いてきた、という方でした。

 

自分自身が矛盾した中で生きておられて、ストレスもかなり溜まっていたようで、うつ病や解離性障害などの精神疾患の診断も受けていました。性同一性障害のことも、打ち明ける勇気がなく、生き辛そうにしていました。

 

 

「自分が悪い」

カウンセリングを開始して、最終的に男性として生きられる決断をされるまでには、結構かかりました。3~4年くらい関わっていましたね。

 

やはり最初は、自分自身が性同一性障害であるということ自体受け入れられなくて、自分自身が悪いと思い込んでしまって、自殺願望なんかも持っていらっしゃいましたね。

 

「自分自身がこう生まれてきたせいで駄目なんだ」って自分のことを責めてばかりでした。周囲の人に伝えたり、色々な公的機関にも足を運ぶ勇気を持つまでに1,2年ぐらいかかってっていう感じでした。

 

発達障害の子供や、DVを受けた被害女性の話でも、共通する部分はあると思いますが、「いじめられる自分が悪い」「社会に適応できない自分が悪い」などと思ってしまう人が多いように感じます。

 

先ほどの性同一性障害の方は、うつ病とか解離性同一性障害とか色々あったんですけど、やっぱり根本は、自己肯定感の低さや自信のなさ、自分自身を卑下したり、否定するところだったように思います。

 

「あなたは悪くない」ってことをはっきり伝え続けたことが、良い方向に進んだ大きなポイントではなかったのでしょうか。

 

 

弱さやマイノリティ性は誰にもある

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LGBTの支援には色々な方法論がありますが、私はその方に対して、自分自身がLGBTの当事者であるということ、だから自分もマイノリティであり、弱みもたくさんあるということも伝えました。

 

そして、横の目線で相互支援のような形で、お互い成長していくという視点を通して、その方と触れ合っていきました。

 

それによって、少しずつその方の心も整理されていきましたし、自分自身で障害を受け止めて、自己受容をされていきました。

 

最終的には、性同一性障害専門の精神科外来に行くこともでき、無事に戸籍も変更されて、元気に生きていらっしゃいます。

 

精神疾患もほとんど回復されました。体調が回復されたことももちろん良かったですが、自分がLGBTであることを言える仲間や場所の存在に対して、ご本人も意識されるようになったことも良かったことではないかなと思います。

 

 

生きる道はたくさんある

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誰だって自分自身の弱さやマイノリティ性を受け入れることって確かに難しいことではあります。

 

しかし、例えばLGBTで言えば、13人に1人くらいの割合なのですが、それって左利きの人と同じくらいの割合なんですよね。

 

そういう基本的な情報を伝えるだけでも、「え、そんなにいるんですか?」「自分一人じゃ無いんですね」って、少しずつ状況を整理できるようになる人は意外といると感じています。

 

 

「自分はこの世界に一人で、変わり者でおかしいんだ」という考え方ではなく、「一人一人が違って、みんな誰にも言えない秘密があったり、弱さがあったり、マイノリティ性がある」ということが、ある意味当たり前なことだと、認識できる人がもっと増えれば良いですよね。

 

それぞれ、弱さやマイノリティ性があるからこそ、色んな発想や文化が生まれているっていう事をずっと伝えてきたつもりですし、生きる道はたくさんあるということはこれからも発信し続けていきたいですね。

 

 

・・・・・・・・・・・

編集後記

大賀さんのお話を伺って、実はLGBTの方は左利きの方と同じくらいの割合いらっしゃるということを知りました。

 

もしかしたら、私の周囲にもLGBTであることを公言できずに苦しんでいる方がいるのではないかな?と、ふと思いました。

 

ご自身がマイノリティであるということを自ら公言されている大賀さん、とってもかっこよかったです。

 

明日は大賀さんのインタビュー後編をお届けいたします!後編はこちら

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

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【専門家の方へ】

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、

Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

 

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