就労移行支援とは?期間・対象者・利用料を精神保健福祉士が解説

 
シェア
ツイート
はてブ
あとで見る

社会人生活は、約40年間続くと言われています。その中で、1度も体調を崩さない自信はありますか?

 

「もう働けないかもしれない…」と感じることがある人は少なくないのではないでしょうか。

 

もしくは、「働いても長続きしない」、「なぜかうまくいかない」と心が追いつめられることがあるかもしれません。

 

長い就労生活の中では、病気で休職することや退職することは十分にあり得ます。

 

そしてその先、どうしていいかわからなくなってしまうこともあるかと思います。

 

今回は、働くことに難しさを感じている方、思わぬ疾病でこれまでどおり働くことができなくなってしまった方が利用できる就労移行支援サービスについてご紹介します。

 

 

就労移行支援とは?

精神疾患を含む、障害を持つ人は「障害者総合支援法」のもとに定められた「障害福祉サービス」を受けることができます。

 

これは、障害者が地域で安心して暮らせる社会を目指し、国が策定した仕組みです。

 

障害福祉サービスには、障害者が働くために訓練をする「就労系サービス」があります。このなかの一つが就労移行支援です。

 

就労移行支援事業所では、障害者が働くために様々な訓練や支援を行っています。

 

対象は身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、難病患者であり、医師の診断のもとに区市町村へサービス利用申請をすることで利用することができます。

 

このとき、必ずしも障害者手帳は必要ではありません。

 

就労移行支援では、事業所における作業訓練や面接練習など就職に向けたサポートを行い、就職後も6カ月間は職場定着支援を受けられることが特徴です。

 

就労移行支援事業所の数は全国で3,256ヶ所あり、32,611人が企業への就職を目指してサービスを利用されています。(2017年4月現在)

 

 

就労移行支援のサービス内容

就労移行支援事業所では、サービスを利用するひとりひとりの目標・課題が異なるため、サービス利用にあたって個別支援計画という計画を支援員が立てます。

 

利用者と事業者の同意のもと、個別支援計画にもとづいてサービスが提供されます。

 

就労移行支援事業所では、以下のような支援を行っています。

 

 

作業訓練

就労移行支援事業所に通所し、軽作業やビジネスマナー、パソコンなどのプログラムを行います。作業に取り組みながら、仕事をするための能力を培います。

 

訓練内容は就労移行支援事業所によって特色があります。

 

パソコンの知識や技術を向上させるためのプログラムが充実しているところ、資格取得の講座が豊富なところ、軽作業訓練が実際の受注作業になっており工賃が発生するところなどがあります。

 

就労移行支援事業所ごとに強みが違うので、どんな仕事に就くために何を訓練したいのか、見学や体験を通して具体的に考えてみるとよいでしょう。

 

 

企業実習

多くの就労移行支援事業所では、作業訓練の後に様々な企業での実習を行うことができます。

 

区市町村の障害者就労支援センターやハローワークと連携して、実習場所を確保しているところもあれば、事業所独自に実習先を設けているところもあります。

 

就業時間や休憩の取り方を実践、通勤の体験といった意味があり、訓練してきたことを試す機会となります。

 

 

就職サポート

通所訓練を通して、就労への準備が整ったら実際に求人に応募して就職活動をスタートします。

 

就労移行支援事業所では、ハローワークや民間企業が実施している求人情報に基づいて、就職に向けた支援を行います。

 

履歴書の書き方や面接練習など、助言を行うだけでなく、実際に面接に同行して支援員から見た利用者の強みや弱みを企業に説明してくれます。

 

面接同行のいいところは、求職者にサポートがついていることを印象付けて企業に安心感を与えることができる点です。

 

もちろん、利用者にとっても自分を理解して職場へ送り出してくれる支援員の存在は大きな強みになります。

 

事業所によって新規の求人を開拓しているところもありますが、ハローワークを通して求人に応募することが多いでしょう。

 

一般求人では、ハローワークを利用しない方も多いですが、障害者求人は行政からのチェックが入りやすかったり助成金の申請がしやすくなったりするため、ハローワークを通した求人が多いです。

 

 

定着支援

就労移行支援事業所では、就職が決まってから6カ月間の定着支援期間があります。

 

就職が決まったら、あとは自力で・・・というわけではなく、働き続けられるように支援を行うのです。

 

業務の進め方や就職後の体調の変化について、企業訪問や面談を通して利用者にも企業にも助言を行います。

 

「事業所ではできたのに、実際の業務になるとどうもわからないところがある」

 

「環境の変化によって体調を崩してしまいそう」

 

というときに、これまでの支援経過を踏まえて的確なアドバイスを行うことができるため、職場に馴染んで働き続けることがしやすくなります。

 

6カ月が経過した後も、電話相談や面談などを受け付けている事業所が多いので、悩んだときはすぐに相談できる体制が整っています。

 

 

就労移行支援と就労継続支援

ここまで、障害福祉サービスの就労移行支援についてご説明してきました。

 

では、就労に向けて2年以上の準備が必要なとき、または一般企業での就労はまだ想像できないというときには、どのような働き方やサービスがあるのでしょうか。

 

 

就労継続支援とは?

障害福祉サービスの中には「就労継続支援」というサービスがあります。

 

就労継続支援には2種類の事業所があり、通所して働きながら社会復帰を目指していくことができます。

 

 

就労継続支援A型

就労継続支援A型とは、障害福祉サービスのひとつです。

 

一般の求人と同じように、利用者と雇用契約を結び、都道府県の最低賃金を守って給与を支払います。

 

ハローワークやその他求人情報誌に求人を出すことができますし、社会保険が整っているところもあります。

 

 

就労継続支援B型

こちらも障害福祉サービスのひとつです。

 

A型のとの違いは、利用者と雇用契約は結ばず「施設利用」の範囲で作業を提供します。

 

最低賃金に関係なく、事業所の規定に基づいた作業工賃が支払われます。

 

 

就労継続支援A型とB型の違い

単純に考えると、最低賃金が保障されて社会保険が整っているのであれば、A型を選んだほうが良いような気がしますよね。

 

しかし、A型事業所は給与の保証がある分、利用者が仕事に対して請け負う責任が大きいです。

 

利用時間や通所日数について、高い目標を掲げているところが多く、給与に見合った作業内容を求められます。

 

生活リズムをつけ、ゆっくり働くことに慣れていきたいと考えている人には、就労継続支援B型のほうが柔軟な対応ができます。

 

自分が障害福祉サービスをどのように利用していきたいのか、それによって通所する場所を選ぶことが必要です。

 

 

就労移行と就労継続は併用はできる?

就労移行支援と就労継続支援は併用することはできません。

 

国の方針としては、一般就労できる人は移行支援で就労に向けた訓練を、それが難しい人は就労継続支援で働く習慣作りをするようになっているためです。

 

ただし、併用できないのは障害福祉サービスの就労訓練だけで、医療機関であるデイケアでの就労プログラムに参加することはできます。

 

医療機関のプログラムと、障害福祉サービスのプログラムは併用することが可能です。

 

(ただし、各施設の入所判断で、どちらかに集中してくださいと言われることはあります。)

 

 

工賃は発生する?

就労移行支援と就労継続支援には利用期限以外にも大きな違いがあります。

 

それは、利用者の働きを「訓練」とみなすか「作業」とみなすかです。

 

就労移行支援では、軽作業やその他のプログラム参加は労働ではありません。就職するための訓練です。

 

そのため、プログラム参加に対して賃金は支払われません。(外部から作業を請け負って、工賃出ることもあります。)

 

就労継続支援では、施設で継続して働くことを目的としているため作業に参加した分は工賃という形で賃金が支払われます。

 

 

就労移行か就労継続か選ぶポイント

「一般就労したい気持ちはあるけど、どちらのサービスを選んだらいいの?」と迷うことがあるかもしれません。

 

そのときは「自分がいつごろ就職したいのか?」という時期をポイントとするといいと思います。

 

「今すぐにでも就職したい。」「1年後には・・・」と考えている方は、就労移行支援で訓練を受けるといいと思います。

 

「いつかはわからないけど、そのうち・・・」という気持ちの方は、就労継続支援でゆっくり働きながら就職する時期を考えるところから始めてみましょう。

 

なぜなら、就労移行支援には2年間の利用期限があり、それを超えてしまうとサポートが受けられなくなるからです。

 

自分の中で、いつ頃働きたいのか、そのためにどんな訓練が必要なのか、想像がつくかどうかが大きなポイントです。

 

 

就労移行支援の対象者

就労移行支援に限らず、障害福祉サービスの利用は18~65歳で、医師にサービス利用が必要だと判断された方です。

 

近年では、障害は種別によらず、身体障害(肢体不自由、難聴、盲など)、知的障害、精神障害(統合失調症、気分障害、パニック障害、てんかんなど)、発達障害(ADHD、自閉症スペクトラムなど)、難病(障害者総合支援法の対象疾患)の方がサービスの対象になります。

 

先ほども述べたように、移行支援では一般就労を希望されている方へ向けたサービスとなっているため、自分がどんなサービスを受けたいのかよく検討することが必要です。

 

 

就労移行支援の利用者の年代

就労移行支援サービス利用者は、30代未満の方が5割、30代、40代がそれぞれ2割、50代が1割程度です。

 

若い方が多いように感じますが、実際に支援する中では40代、50代の利用者は珍しくないように見えます。

 

また、実際に就労されるときも年齢がネックになると感じるほどではありません。

 

 

就労移行支援の利用者の就労経験

一般就労したことがある方も、そうでない方も、

 

「学校を卒業して、新卒で入った企業で経験を積む。」

 

「未経験、職歴なしでは雇ってもらえない。」

 

というイメージが強いのではないでしょうか。

 

わたしが障害者の就労支援をしていて感じることは、大切なのは就労経験の有無ではないということです。

 

もちろん、就労経験があることは強みです。前職の知識や社会常識など、働き続けるうえで大切な要素はたくさんあります。

 

しかし、障害者雇用で求められているのは、

 

・社会生活を送るうえで必要なビジネスマナー

・報連相のタイミング

・指示を理解してこなしていく

 

などのようなことだと思います。

 

 

就労移行支援利用者の障害者手帳の有無

障害福祉サービスを利用するにあたっては、医師の診療情報と市区町村から出る障害福祉サービスの受給者証が必要です。

 

医師がサービス利用の必要性があると判断すれば、必ずしも障害者手帳が必要ではありません。

 

ただ、障害者求人に応募する際には障害者手帳の提出が必要になるため、就職活動をするまでには手帳を取得しておいたほうがいいと思います。

 

 

就労移行支援の利用期限

企業で働きたいと思ったとき、とても心強い就労移行支援ですが、そのサービスには利用期限があります。

 

利用期限は2年間です。

 

個別支援計画に基づいて、訓練や実習を積むことになりますが、最長2年で訓練終了・就職を目指すサービスになります。

 

長期入院から退院したばかりだったり、住環境が変わってとても2年間で就職を目指せる気がしなかったり、自分で無理があると感じたときは他のサービス利用も検討しましょう。

 

 

就労移行支援の2年間で就職できる?

上記でもお伝えしてきた通り、就労移行支援の標準利用期間(利用期限は)2年間です。

 

「期限内に就職できなかったらどうなるのだろう」と思われるかもしれませんね。

 

いろんな方の支援を通して感じることは、2年間で就職を決めることは十分に可能だということです。

 

大切なのは、2年間でどこかの企業に内定を得ることではなく、自分がどうして働きたいのか、働いていく中で何をポイントとするのか、自己理解をきちんと深めておくことです。

 

働いていくうえで、辞めてしまいたいと感じることはたくさんあります。それは障害の有無には関係ありません。

 

辞めたいと感じたときに「それでも働き続ける理由」がはっきりしていないと、就労生活を長く続けていくことは難しいと感じます。

 

就職活動も長引くことが多いです。

 

しかし、就職しないまま利用期間が過ぎてしまった場合はどうなるのでしょうか?

 

 

就労移行支援の再利用時、期間はリセットされる?

一度、就労移行支援を利用し、途中で辞めてまた入り直した場合には利用期間はリセットされません。

 

例えば、6カ月利用して、一度サービスの利用を辞めたときは、残り1年6カ月の利用期限が残ることになります。

 

 

就労移行支援の期間延長は可能?

利用期間が2年経ってしまっても、もう少しで就職できそうだと市区町村が判断したときは、最長1年利用期間が延長されます。

 

しかし、支給決定の厳しさは自治体による差が大きく、2年間のサービス利用を前提としておいたほうがいいと思います。

 

 

就労移行支援の利用が2年過ぎたら?

就職が決まらないまま、利用期限が終了してしまっても、その後の見通しなく施設を放り出されることはまずありません。

 

利用終了の数カ月前から、就労継続支援の施設を検討したり、地域活動支援センターという地域の活動場所を見学したりして、利用終了後の相談先を確保していきます。

 

 

就労移行支援の利用料

就労移行支援に限らず、障害福祉サービスの利用には原則として1割の自己負担が発生します。

 

具体的には、昨年の課税額によって負担量が変わります。

 

長期に渡って入院していたり、学生であったため税金を免除されていたりすると、障害福祉サービスの利用に対して自己負担は発生しません。

 

前の年に働いていた、自営業の役員になっていたなど、ご自身の収入と課税があるときには、最大9300円の利用料がかかります。

 

(前年の収入が600万円を超えるときには、37,200円かかります。)

 

ただし、移行支援事業所に通うための交通費や昼食費はこれに含まれません。

 

 

交通費助成について

移行支援事業所へ通う交通費は基本的には自己負担です。

 

しかし、自治体によっては通所のための交通費助成を行っていることもあります。お住いの市区町村役場に確認してみることをおすすめします。

 

 

就労移行支援事業所を利用するまでの流れ

医療機関の受診

サービスの利用には医師の診療情報が必要です。定期的な通院と治療はサービス利用の前提になります。

 

問い合わせ・見学

主治医に相談し、サービス利用の許可が出たらどこに通うか探し始めます。

 

市区町村の障碍者福祉課やハローワークの専門援助第二部門(障害者求人を取り扱っている窓口)などで、近隣の事業所を探してみましょう。

 

通いやすさや市区町村の交通費助成の上限などがあるので、お住いの市区町村で探したほうが通うところを見つけやすいかと思います。

 

事業所ごとにプログラム内容に特色があるため、見学時に相談しながらどんなことを身に着けて、どんな仕事をしたいのか考えていけるといいでしょう。

 

例えば、対人関係を重視したいときはSSTトレーニングのプログラムがあるところを選ぶなど、目的に沿った事業所を選ぶとサービスの利用がスムーズになります。

 

通所先の決定

見学や体験後、利用する事業所へ申し込みをして通所先を決定します。

 

利用計画の作成

障害福祉サービスの利用には「サービス等利用計画」の作成が必要です。

 

就労移行支援だけでなく、ヘルパーや医療機関を受診する頻度などを計画書として市区町村に提出します。

 

自分で利用計画を提出できることもありますが、多くの場合は、指定特定計画相談事業所で専門の相談員に計画の作成を依頼します。

 

通所事業所が決定した後、市区町村の窓口で計画相談事業所の紹介を受けることができるので、まずは通所先が決定したことを市区町村の窓口に伝えましょう。

 

サービス等利用計画の提出、受給者証申請・発行

市区町村の窓口に「サービス等利用計画」を提出し、障害福祉サービスの利用申請をします。ここで、担当者から「認定調査」が入ります。

 

医師の診断とは別に、本人にサービス利用が必要なのかどうかいくつか質問があります。

 

これに基づき、支給決定のための会議が開かれ、サービス支給の決定がおります。

 

障害福祉サービスの支給が決まると、障害福祉サービス利用受給者証が発行されます。

 

これには、支給決定期間が記載されており、どのサービスを何年間利用できるかがわかるようになっています。

 

※手順がとても多いように感じますが、通うところを決めたら市区町村に申請をして、サービス利用許可を待つという流れです。

 

※受給者証は約1年で更新する必要があります。更新の際、前年度の収入に応じた自己負担の金額が変わることがあります。収入がないのに、自己負担が増えることはありません。家族が経営する会社の役員になっている場合や、遺産相続があった場合は自己負担が増えることがあります。

 

利用契約・サービス利用開始

受給者証を受け取ったら、それを持って就労移行支援事業所に行きます。

 

事業所とサービス利用の契約があるので双方で同意の上、契約を進めます。

 

そして、最初の通所日を決めて利用スタートです。

 

 

さいごに

健康な時は、働くためにサポートが必要と考えることは少ないかもしれません。

 

ただ、思わぬ疾病で休職が続いたとき、仕事を辞めなければならなくなったとき、自分の状況に戸惑うことはあると思います。

 

誰もが働くことに成功するわけではありません。

 

自分の知らない制度や働き方について専門機関で知ること、自分に合った働き方を探す期間が必要です。

 

障害福祉サービスについてあらかじめ知ることができると、より選択肢が増えると思います。

 

Photo_18-04-19-19-40-29.093菊池恵未 精神保健福祉士

精神保健福祉士として、都内NPOにて精神障害者の支援を行う。就労支援担当として面接同行や就職後の業務メニュー作成などをしてきた。障害年金や生活保護受給の相談にものっている。JCTA日本臨床化粧療法士協会認定のもと臨床化粧アドバイザーとしてメイクアッププログラムを実施予定。

関連記事