WRAP(元気回復行動プラン)の5つの要素とは?やり方を7ステップで精神保健福祉士が解説

2018.11.18公開 2019.05.16更新

 

WRAPに取り組む7つの手順

それでは、WRAPに取り組んでいきましょう。

 

WRAPは大きく分けて「日常生活管理プラン」「クライシス(危機的状況)プラン」のふたつに分かれます。

 

日常生活を元気に過ごすためのものと、体調を崩してしまったときに有効な手立てをあらかじめ考えておくものです。

 

イメージとしては自分が元気でいられるための要素をたくさん挙げておき、それを使いながら危機の度合いに応じて実践方法を変えていく感じです。

 

それでは、手順を解説していきます。

 

①元気に役立つ道具箱を作る

まずは、自分が元気でいるために必要なことを「元気に役立つ道具箱」の中身として、書き出していきます。

・ご飯を3食バランスよく食べる

・自分の部屋で過ごす

・家族や恋人といい関係を保つ

・好きなタオルケット

このように、生活する中でプラスに作用していることを挙げていくとよいと思います。

 

ひとつひとつは気に留めるほどのことではなくても、それがないと気分の良い状態は成り立たない。

 

または、しないことが元気になるためには必要だということが必ずあるはずです。

 

②「いい感じの自分」をイメージする

「こんな自分でいたいな」「こんな風に過ごせたら理想的だな」という自分を思い描き、キーワードを書き出していきます。

 

病気になる前の自分が理想だとしたら、その頃の写真や日記を見て「いい感じの自分」を感覚的に思い出すことができるかもしれません。

・冷静な自分

・落ち着いた自分

・自信に満ちた自分

このように、なりたい雰囲気や内面を挙げていきます。

 

そうすることでプランを立てる指針が作り出せます。

 

③日常生活管理プラン

道具が揃い、自分のイメージができたら、日常生活管理プランを作ります。

 

これは「いい感じの自分」で居続けるために、意識して取り組みたいことをリストにしたものです。

・朝、コーヒーを飲む

・午前中に起きる

・なるべく野菜を食べる

・毎日湯船につかる

このように、自分が気分良く過ごすための習慣や取り組みを挙げるのです。

 

気分良く、元気に過ごすための習慣を1日の中にうまく取り込んでいくと、良い気分を保ち続けることができます。

 

④引き金に対するプラン

体調が悪くなってしまう「引き金」について、対処法を考えます。

 

体調が悪くなるとき、一気にどん底まで気分が落ち込むのではなく「引き金」になっているものはありませんか?

・夜眠れなかった
・家族とけんかしてしまった

このように、体調をマイナスにするきっかけがあると思います。

 

それぞれに対する対処法をあらかじめ考えておきましょう。

・夜2時を過ぎても眠れなければ頓服を飲む
・友人に相談する

このように、体調悪化の引き金からずるずると悪くなっていかないようにあらかじめ対策をします。

 

対処方法は多ければ多いほど、いろいろなことを試せるのでたくさん挙げておくといいと思います。

 

⑤注意サインへの対処プラン

引き金に対して対処しても、「いい感じの自分」に戻れるとは限りません。

 

「いい感じ」から遠ざかってしまった自分はどうなるか、書き記しておきましょう。

・常にイライラしている

・誰かが悪口を言っているのではないかという思いが一日中消えない

例えば、このような引き金に気づかなかったとしても、「体調が悪くなってきているな」と気づけるようにしておきます。

 

注意サインに対しての対処法を一緒に考えておきます。

 

「人と会う予定を延期する」「この時点で主治医に相談する」など、良さそうな対処法を試せるように準備をします。

 

⑥調子が悪くなってきたときの対処プラン

いよいよ、体調が悪くなってしまったというときのプランです。

 

「いい感じの自分」が深刻に乱れてきてしまったとき、どうなるか書き出しておきましょう。

・食事をとらなくなる

・独り言が多くなる

・布団から出ない

このような過去に体調を崩したときの様子を参考にしてみるといいと思います。

 

体調を崩している中では、どんな行動が自分に必要かわからなくなってしまうことがたくさんあります。

 

どうすることで回復しそうか、何を避けたいのか、他の人にもわかるようにプランを立てておくことが大切です。

 

「服薬を忘れていないか、支援者と確認する」「自傷行為をしないようにしたい。家族に一緒に過ごしてもらう」など、混乱した中で適切な選択をとれるようにあらかじめ「こうしておきたい」ということを決めておきましょう。

 

自分でこうしておきたいということを決めておくと、不本意な入院や隔離などを避けやすくなります。

 

⑦クライシス(危機的状況)プラン

自分では対処できないほどの危機に直面したとき、どうするかを決めておくプランです。

 

家族や支援者と共有し、自分の状態を表現できないほどの危機的状況では、自分をどうしてほしいのか伝えておきましょう。

 

自分で決められないときには、誰に判断を委ねたいのかも書いておくといいと思います。

・○○病院に入院する

・作業所に入院すること、休むことを連絡してほしい

・入院時には自分のパジャマを着たいので、必ず持たせてほしい

このように、自分の意思を残しておくことで、危機的状況下で望まない環境に置かれることを防ぎます。

 

さいごに

WRAPのいいところは「自分の意思を反映させるプランを作ることができる」ことです。

 

体調が悪いときに、何がなんだかわからないまま、すべてを決められてしまった…という話は少なくありません。

 

体調が良い状態を保つために、日常生活管理プランを使用し、自己管理が難しくなったらクライシスプランをもとに対処してもらえるように、自分の意思を改めて書面に残しておくのもいいかと思います。

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菊池恵未

精神保健福祉士

精神保健福祉士として、都内NPOにて精神障害者の支援を行う。就労支援担当として面接同行や就職後の業務メニュー作成などをしてきた。障害年金や生活保護受給の相談にものっている。JCTA日本臨床化粧療法士協会認定のもと臨床化粧療法士®として隔月でメイクアッププログラムを実施中。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年11月18日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。