治験ボランティアとは?安全性・メリット・留意点を精神科看護師が解説
目次
治験の安全性への取り組みとは?
治験は、人に対して行われるものです。
そのため、参加する人の人権や安全性、プライバシーを守るために、非常に厳しいルールと厳しいチェックの中で行われます。その一端をご紹介しましょう。
治験審査委員会による審査
治験が始まる前に、「治験審査委員会(IRB)」で安全性などが厳しく審査されます。
治験審査委員会とは、治験に参加する人の人権や安全の保護、科学的に適切であるかを審査する独立の委員会です。
人権への配慮から、治験を行う病院と利害関係のない人や医療関係者以外の人(例:弁護士、一般の会社員など)も委員として加わり、治験の安全性について議論を交わします。
厚生労働省の厳格な基準に則って実施
治験は、患者さんの権利と安全を守るために、厚生労働省の定めた厳格な基準(ルール)に則って実施されます。この治験のルールを「GCP(医薬品の臨床試験に関する基準)」といいます。
万が一の副作用時の処置
治験薬の投与前、投与中、投与後も、検査や専門医による診察を行い、患者さんの安全を確保します。万が一、副作用が出た場合には適切な処置が受けられるようになっています。
どのような人が治験に参加する?
治験には、先述のとおり、健康な人を対象に行うものと、患者さんを対象に行うものがあります。
治験によって参加する方の特徴は変わりますが、以下のような方が治験に参加されています。
・診察や検査を受けるお時間がある方
・ご自身の状態を詳しく知りたい方(→通常では行われない検査などが治験では受けられる場合があります)
・治療を始めたいけれどなかなか踏み出せない方(→治験という基準のもと、安全に最大限配慮して治験薬を使用します)
・従来の治療を続けていてもなかなか効果がみられない方
治験参加の4つのメリットとは?
治験に参加するメリットとしては、次のようなことが考えられます。
1.治験薬が、いま飲んでいる薬よりも合う可能性がある
従来の治療でなかなか効果が見られなかった人の中には、治験薬で効果が見られる方もいます。
これは治験の最大のメリットであるといえます。
2.専門医による検査と、経過の詳しい説明を受けることができる
治験に参加すると、定期的な検査や診察によって、通常の治療よりも詳しく患者さんの状態を確認します。そのため、自分の病状をよく知ることができます。
3.新しいくすりの研究開発の貢献ができる
現在、世に出ている薬も、長い年月をかけて多くのボランティアの協力のもとに生まれてきました。
治験に参加することで、自分と同じ病気やケガなどで苦しんでいる人や、新たな治療を必要としている人へ貢献することができます。
4.費用負担が軽減される場合がある
治験薬を使用している期間の検査費や一部のくすりの費用は無料になります。
治験薬も費用はかかりませんので、経済的な負担が大きくなることはあまりありません。
また、通院にかかる交通費などの費用を「負担軽減費」として、一定の範囲で製薬会社が支払います(ただし、初診料やその後の診察費は患者さんの負担です)。
負担軽減費は、1来院あたり7,000円~10,000円ほどですが、金額や支払い回数は治験によって異なります。
治験はボランティアですので、「高額アルバイト」といった金銭を目的とするものでは決してありません。
治験参加のデメリットは?
治験への参加はメリットばかりではありません。治験には良いことも、心配なこともあります。
1.来院数や検査の増加
体調の変化がないか、副作用がないかなどを慎重に診察するため、通常の治療よりも通院する日数や検査の回数が増えることがあります。
2.生活上のルール
一緒に飲んではいけないくすりや、食べてはいけないものがある場合もあります。また生活上、守らなければいけない注意事項もあります。
3.副作用
ごくまれに、これまでに知られていなかった副作用が現れることがあります。
メリット・デメリットは、治験ごとに異なります。
必ず、治験に参加する前に医師やCRCからその治験のメリット・デメリットの説明がありますので、よく聞いて納得することが大切です。
説明を受けて、参加するかどうかを考える時間もありますので、十分に検討して、納得してから治験に参加しましょう。
治験参加する際の留意点
治験はだれでも参加できるというわけではなく、参加条件があります。
それは治験に参加する人の安全を確保するためです。参加の条件は治験によってさまざまです(例えば年齢や、ご病気の状態など)。
治験に興味があるけれど、自分が参加の条件に当てはまるかどうかわからないという方は、まずは主治医などに相談してみてください。
また、治験はいつでも途中でやめることができます。
やめたからといって不利益になることはありませんし、医師の判断で中止になることもあります。
辞退や中止になった際も、その人の安全を一番に考えて、診察や検査を行います。
そもそも、治験はどう探すの?
最後に、治験の探し方をご紹介します。
現在、病気でお悩みの方は、まず主治医などに相談してみるのがよいでしょう。
病院内の掲示板などで募集ポスターが貼ってあることもあります。
大学病院や地域の大きな病院では治験管理センターや臨床研究管理センターといった治験を担当する施設がありますので、インターネットで検索したり、問合せをしてみることもおすすめです。
病院以外では広告などでも募集されています。
新聞の折り込みチラシでご覧になった方もいるかもしれません。
最近はインターネットで臨床研究や治験の募集情報が掲載されることが多くなってきています。
NPO法人CNSネットワーク協議会でも、精神科の治験の募集を行っています。
WEB上で治験ボランティアにご登録いただき、ご希望や条件があえば、治験をご紹介できる仕組みです。
登録時に、治験へのご質問やお問合せも受け付けています。お気軽にお問合せください。
さいごに
多くの治験ボランティアの方のご協力のおかげで、新しいくすりが誕生してきました。
治験は、なかなか表には見えませんが、実は私たちの病気や健康と無関係ではありません。
多くの方に治験について知ってもらい、身近なものと思っていただけたらと思っています。
>>治験ボランティア募集ぺージ(NPO法人CNSネットワーク協議会)
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2018年11月17日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。