「障害者=単純作業ではない」ことを伝えていきたい【LITALICOワークスPart3】
障害を持つ方の就職事情がどうなっているか、なかなか知る機会はないように感じます。
就職事情は、人それぞれの部分もあると思いますが、実際に就職活動をする前に知っておきたいこともあるはず…。
そこで今回は、LITALICOワークスの中の人に、就労支援の現場から、障害を持つ方の就職事情について、お話をしていただきました。
>>【LITALICOワークス】インタビュー全4回まとめ【就労移行・障害者雇用】
今回、お話いただいた人
吉村紘樹さん(LITALICOワークス ヒューマンリソースグループ マネージャー)
恒吉麻実子さん(LITALICOワークス ヒューマンリソースグループ 社会福祉士)
障害を持つ方の就職事情
障害者雇用は増えていますか?
吉村さん:障害者雇用率は、13年連続でいわゆる右肩上がりになっています。特に、精神障害者の方だけで言うと、追い風の状態がずっと続いています。
追い風となっている1つの背景は、法律です。
障害者雇用促進法という法律があって、今は「企業は従業員の2.0%の障害者を雇用する」というルールになっています。それが平成30年から2.3%に上がるんです。
国の後押しなどで精神障害がある人が、ようやく雇用対象と見られるようになってきたことや、将来の雇用率アップに備えて今のうちから採用しようという企業の動きがあって、ここ数年は特に精神障害の方の雇用が増えています。
実際、LITALICOワークスにいらっしゃる方も、60%ぐらいが精神障害の方、20%ぐらいが発達障害の方なので、精神保健福祉手帳を持ってる方が非常に多いですね。
うつ病とか発達障害という言葉が社会的に認知され始めているので、精神障害の方を雇用するハードルは低くなってきているという実感はすごくあります。
吉村さん:そもそも障害者雇用って、成り立ちでいくと、戦争でケガを負った傷痍軍人などの存在が背景にあるんです。
そこから身体障害の雇用が制度化され、知的障害、精神障害…という流れに沿って、法律が整ってきた背景があります。発達障害も、最近すごく認知されてきていますよね。
恒吉さん:精神障害に関しては、診断を受ける人も増えましたしね。
吉村さん:そうですね。「ちょっとクリニック行ってみようか」という言葉が普通の会話で生まれてくることに、以前よりもネガティブさはなくなりましたよね。
先ほどの雇用促進法は中小企業も対象ですか?
吉村さん:社員50人以上の企業が対象になります。仮に、従業員が50人いる企業の場合、障害者を1人雇用しないといけないという形にはなっています。
障害を持つ方を雇用する際には、その方のことをちゃんと知ることが何よりも大事なのではないでしょうか。そのために私たちみたいな機関を使って、気軽に相談していただければと思います。
「障害者雇用で困ってて相談したい」と電話してもOK?
吉村さん:全然大丈夫ですね。私たちは雇用される企業様に対しても、啓発も含めてアプローチをしていくことが必要だと思っています。
ですので、企業様から直接ご連絡いただくことに関しては、全くネガティブじゃなく、むしろ有難いですね。
LITALICOに相談するとなると、どんな流れになるんですか?
吉村さん:お問い合わせいただいた後に、実際に企業様に訪問して、「私たちがどんなことをしてるのか」ということをご説明します。
当然、障害者雇用についてどう考えているか企業様によくお伺いするのですが、「障害者と接したことがない」とか「障害がある方が近くにいなかった」といった、ネガティブなイメージが基本的に多いんです。
でも、実際に障害を持つ方にもお会いしていただくと、「全然大丈夫」っていう方ばかり。
百聞は一見に如かずじゃないですけど、LITALICOワークスにお越しいただいて、打合せをさせていただくと、企業様にとってもスムーズですよね。
あとは、本人の許可を取ってからですけど、LITALICOのスタッフでも、手帳を持っているスタッフがいますので、打合せに同席してもらうこともあります。
打合せの中で色々とお話しした後に、「ちなみに、手帳持ってますけどね」と打ち明けてみるんです。そうすると、企業様のご担当者の障害者へのイメージが全く変わることが多いですね。
「LITALICOさんの存在を知っておく」ことが大切ですね
吉村さん:そうですね。障害者雇用をするからといって、障害全般について詳しくならなくても全く問題なくて、LITALICOのような事業所を活用しながら、雇用しようとしているその1人の人のことを理解してもらえれば、それだけで大丈夫なんです。
障害者は本当に就職できていますか?
吉村さん:一般企業などに勤務するという意味でいうと、計算してみたら就職ができている方が14%ぐらいで、まだまだ少ないというのが現実です。
そこで、法律で企業なんかが障害のある人を雇用する数を「雇用率」として決めてるんですけど、達成している企業がまだ49%。半分の企業が雇用率を達成できていない現実があります。
障害を持つ方と企業の双方にニーズはあるのですが、双方の掛け合わせが上手くいっていないっていうのが事実なので、就職の数は微増傾向ではありますが、なかなか進んでいないという感覚は少なからずありますね。
就職以外のゴールもあり得ますか?
吉村さん:「働かない」という選択肢を閉じてるわけではないので、最終的に色々なことを考えられた結果、「働かない」という選択をされる方もいらっしゃいます。
自分らしく生きていけるかどうかを考えた時に、「就職だけがゴール」とも思っていないので、それがだめなものだと、私たちは全く思っていません。
ただ、就労移行支援事業所である私たちが社会に求められているのは、就職者をきちんと輩出していくということなので、そこに関してのチャレンジは常にし続けていきたいなと思っています。
LITALICOさんの同業他社はどんな感じ?
吉村さん:全国的に展開されている同業他社は数社あります。その中で、良い意味で、LITALICOをずっと追随してくれているような会社さんもいらっしゃいます。
でも、私たちは同業他社さんの存在に対して否定的ではありません。
とりわけ福祉の世界では、どの事業者を利用しようかという利用者さん側での選択肢が少なかったりします。住んでる場所によっては「そこしかない」みたいなこともあります。
恒吉さん:むしろ、利用者さん側の選択肢は増えたほうが良いし、競争原理をもっと働かせたほうが良いとも思っていて。
吉村さん:業界が活性化していくということは、業界全体の質が高まっていくということにもなりますしね。
業界全体の質は上がってきていますか?
吉村さん:業界全体としては、まだ上がってきたという実感はないです。
今は業界自体が「量が増えました」「質はまだまだ追求したほうが良い」っていう感覚。それは私たちも含めてなんですけど。
やっぱり、利用者さんの内訳として難病の方が増えたり、利用される方の層がそもそも変わったりしている中で、質はずっと求め続けないといけないと思っています。
その上で、今の業界において、「すごく良い質ができてるか」と言うと、まだまだかなと。たしかに、事業者さんの数は増えてきていますが。
障害者雇用について、最後に一言ずつお願いします
吉村さん:障害を持つ方の就職率に関しては、たしかに右肩上がりにはなってきているんですけど、今まだ就職できてない方の率を越えるほどではないのも事実です。
だからこそ、障害者雇用を知らない企業と就職ができてないご本人を繋げていくような機会が、今後もっと必要になってくると思うんです。
恒吉さん:一見、就職先としては難しいと思われてる、エンジニアやデザイナーといった技術職にもチャレンジしていきたいと思っています。
単純作業だけだと、なかなか上がりづらいお給料も、市場を広げることによって、双方に生産性が生み出せて、経済活性化にもつながるのではないでしょうか?
必ずしも「障害者=単純作業ではない」というメッセージを伝えていきたいです。
吉村さん:実際に、今ご利用いただいている方に対して、一番力を入れているサポートは「自己理解をいかに深めるか」ということです。
自分の健康や働きやすさを考えて、「だめなものはだめ」「嫌なものは嫌」といったことを本人が無理なく職場の人たちに伝えられるようになれるといいなと思います。
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- 本記事は2017年2月9日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。