安全配慮義務とメンタルヘルス「4つのケア」の関係とは?臨床心理士が解説
過労死、精神障害を理由とする休職、労災認定など、労働災害を巡る問題は近年増加の一途をたどっています。
「労働者の安全と生活を守る」という企業の役割を果たす上で、今、その概念や方法論について学びを深めることは、管理職として必須と言えるでしょう。
自分の部署から多くの休職者が出た場合、労働環境に対する責任を問われるだけでなく、熟練した人員が多数抜けることによる、生産性の低下にも責任を取らなければならないでしょう。
平成28年6月、厚生労働省による「平成27年度 過労死等の労災補償状況」が公表されました。
この報告では、精神障害による労災補償状況に関しても詳細にデータが載っています。
それによると、昨年よりも決定件数は多少落としたものの、5年前と比べると高い水準で推移しています。
電通過労死事件などの影響もあって、働きすぎやメンタルヘルスに関連する労働災害の注目は高まっています。
単純に労働災害というだけでなく、労働環境は社会的評価の側面も持つようになりました。
若者の間で流行っている「ブラック企業」という言葉がその象徴でしょう。
これを読んでいる皆さんの会社が「ブラック企業」認定されないために、どのようなことが必要なのか考えていきたいと思います。
事業者の安全配慮義務
最高裁の判例がもとになっている概念で、雇用契約を行うと事業者には労働者の安全に配慮しなければならないという義務を負っているというものです。
よく考えれば当たり前の話ですが、意外とこの考え方が浸透していないと思うことは多いです。
フィクションの事例ですが、安全配慮義務が履行されていないと考えられるものを挙げてみましょう。
Aさんは就業時間が終わっても、膨大な仕事量に追われ残業を繰り返しました。
多いときで月の残業時間は100時間になっていました。
100時間は36協定の範囲外である時間数です。
Aさんの上司は、積極的に残業する彼を誉めてとても評価しました。
もちろん、100時間の残業を行っていたことも知っています。
しかし、ある日の朝を境にAさんは出社できなくなり、遺書を書き残して自殺してしまいました。
非常にざっくりした事例ですが、このケースは安全配慮義務を履行したとは言い辛いです。
なぜなら、36協定外の異常な残業時間を知りながら、それに対して何もしなかったというのは、労働者の安全に配慮したと言えるのでしょうか。
「早く帰りなさいと、上司が言っても帰らなかったらAさんの責任だ」
こういう意見もよく聞きますが、もしこれに近いことを考えているならば、少し注意が必要です。
それでは、何をしたらメンタルヘルスにおいて労働者の安全に配慮したと言えるのでしょうか。
「4つのケア」の概念から見てみましょう。
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- 本記事は2017年2月24日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。