大人の発達障害は職場で迷惑?3つの対応例と合理的配慮を精神保健福祉士が解説

2018.10.15公開 2018.11.03更新
 

職場の同僚や部下に発達障害の方がいたら、どのように接すればよいでしょうか?

 

「アイデアはいいんだけど、何で毎回書類をなくすの?」

「どうしてギリギリまでやらないの?」

「話を聞いていないんじゃないのか?」

「どうやって教えたらわかってくれるの?」

 

もしかすると、こういったお悩みを抱えている職場の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

今回は、職場の発達障害の方への対応について、考えてみたいと思います。

 

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大人の発達障害…職場で迷惑と感じるケース

ケース1.話を最後まで聞かない、話したことを忘れる

「A君、話は最後まで聞いて!」

 

飛び出しそうになるA君に、今日もMさんは声をかけました。

 

A君は行動力はあるのですが、話をよく聞かずに飛び出すので、いつも何かしら失敗をやらかしてしまいます。

 

ミーティングの最中も、なんだかキョロキョロしています。ポスターを見たり、ドアをみたり…。

 

頭の中は違うことを考えていて、話をきちんと聞いていないみたいです。

 

ケース2.片づけができない、物をすぐになくす

Bさんはいつもあたふたしています。机の上がとても汚いのです。

 

電話を受けるのにも「あれ?メモ帳がない」「ボールペンが無い!」等とやっているので、誰からかかってきたのか、メモを取れないこともしばしば。

 

机のペン立てにはボールペンが沢山あります。

 

「ボールペンなら、沢山あるでしょ」と言うと、「あれ、全部書けないんです!」

 

インクが切れたペン、壊れたボールペンを置いておいても仕方がないから、片づけるように言うと、「会社のものなので、捨てていいかどうかわからなかった…」とのこと。

 

書類も山積みです。

 

よく見ると、何年も前の研修の資料や、パンフレット等、出しておく必要の無さそうなものが、山と積まれています。

 

これでは、大事な書類がどこにあるのかわからないし、仕事もはかどりません。

 

ケース3.時間ギリギリ行動

Cさんのプロジェクトはいつも時間ギリギリです。

 

提出しなければならない前日になって、慌てて、半泣きになりながら、徹夜をしたりすることも。

 

「もっと前から余裕を持って進めればいいのに…」と周りの人は思いますが、いくら注意しても一向に改善しません。

 

このままではいつか身体を壊したり、大きな失敗をするのではないかと、周りの人も見ていてヒヤヒヤしてしまいます。

 

 

職場で必要な「合理的配慮」とは?

1.合理的配慮の定義

上の例の方達が発達障害で「今の会社の仕組みでは困難なことがあるので、配慮をお願いします…」という申し出があった場合は、職場は出来る限りの配慮をしなければなりません。

 

2016年に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(※1)」では、

「行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない」

とされています。

 

この法律が対象とする障害者は、障害者手帳をもっている人だけでなく、心や体のはたらきに障害がある人で、障害や社会的障壁によって、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人すべてが対象です。

 

つまり障害者手帳を取得していない発達障害の方で、障害や社会的障壁によって、生活に相当な制限を受けている方も対象です。

 

2.どんな配慮をすればよいのか?

合理的配慮とは、

・障害のある人から、社会の中にあるバリア(社会的障壁)を取り除くために、

・何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、

・負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者においては、対応に努めること)が求められるものです。

そして、例えば人手不足で、混雑している時間帯にそこまでの対応ができないといった、「重すぎる負担」であるとしても、

「障害のある人に、なぜ負担が重すぎるのか理由を説明し、別のやり方を提案することも含め、話し合い、理解を得るよう努めることが大切(※2)」

になります。

 

どんな配慮をすればよいかは、その人が何に困っていて、どんな配慮を必要としているのかにより異なりますので、話し合いをしながら、職場でできることを考えていくことが必要です。

 

それでは次に、さきほど上で挙げた三人の場合の配慮の例を示します

 

 

職場の発達障害の方への対応は?

ケース1.情報の伝え方に工夫を

話を最後まで聞かない、話したことを忘れてしまうA君。

 

発達障害の方の中には、興味の幅が狭く、一つのことに没頭する特性の方もいれば、好奇心が強く、注意がどんどんそれていってしまう方がいます。

 

A君の場合は、後者のタイプです。

 

このような特性の方は、話している最中に電話がなった、ドアが開いた、誰かが来た…とそれだけで、集中が途切れることがあります。

 

また、壁にポスターやちらし等、いろんな情報が貼ってあると、そちらに注意がそれてしまうこともあります。

 

A君のようなタイプの方に話を伝えるときは、

・静かな部屋で

・できるだけシンプルに

・要点を手短に伝える

とよいでしょう。雑談を交えたり、話が脱線すると、このような特性を持つ方には伝わりにくくなります。

 

聴覚情報処理が苦手なタイプの方と、文字情報の処理が苦手なタイプの方がいます。

 

聞くことが苦手な人には、文字や図を書いて説明したり、文字が苦手な人には、文書をただ渡すのではなく説明を加えたりするとよいでしょう。

 

ケース2.片づけのルールや段取りを伝える

片づけができない、物をすぐになくしてしまうBさん。

 

発達障害の方の中には、片づけがとても苦手な方がいます。

 

このような方には、頭ごなしに「ちゃんと片づけて下さい」と怒っても、どうやって片づけてよいのかわからず困惑してしまう人がいます。

 

会社で「暗黙の了解」とされているルールは、定型発達の方にとっても、わかりにくいものです。

「壊れた筆記用具は処分する」

「不足した文房具は、いつまでに倉庫から持ってくる」

「必要なものはいつまでに発注する」

「古い書類は何年分まではフォルダーに格納してキャビネットにしまう」

「机の上に出しておくものはコレ」

…と分類や整頓の手順やルールを具体的に示してあげるとよいでしょう。

 

ケース3.スケジュールを可視化する

いつも時間ギリギリになってしまうCさん。

 

発達障害の方の中には、時間をとても気にして、時間通りに進まないと不安になるという方もいれば、時間の見積もりが甘く締め切りギリギリにならないと行動できないという方もいます。

 

Cさんは後者のタイプです。

 

このような方には、タスクを細分化して、スケジュールを可視化すると効果があります。

 

例えば、大雑把に、「何曜日の会議までに書類を作って…」という依頼の仕方をするのではなく、

「何日までに、何を調べて」

「何日までに調べたことをまとめて」

「何日までにまとめたことを書類のフォームにして」

「何日までに何部印刷してホチキスで留めて会議室に運ぶ」

といった具合に、やらなければいけない業務を分解して、示してあげるとわかりやすいです。

 

 

その他、接する上での注意点

発達障害と一言でいっても、いろいろなタイプの方がいて、困り事もそれぞれに違います。

 

他に、発達障害の方によくある症状としては、感覚過敏もしくは鈍麻(音、光、匂い、触感などを異常に気にする、もしくは異常に気にしない)や、手先や運動神経がとても不器用という方がいます。

 

リラックスできると思ったアロマの香りが、発達障害の方にとっては耐えられないくらい苦痛だったり、ゴルフやボーリングに付き合わされるから会社を辞めたい…と思い詰めてしまうこともあります。

 

 

さいごに

今回は、発達障害の方に対する職場での対応について説明しました。

 

社会には多様な特性を持つ方が暮らしています。そして会社にもいろいろな特性を持つ方がいます。

 

深刻な人手不足の時代です。

 

人材を「人財」として育てられるように、お互いに思いやりを持って、できるだけの配慮をしながら、働きやすい環境を作っていけるとよいですね。

 

【参考サイト】

※1 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(e-Gov)

※2 障害者差別解消法リーフレット 「合理的配慮を知っていますか?」(内閣府)

 

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桜衣真里

精神保健福祉士

大学院修士課程修了後、専門学校、短大講師等を経て、公的機関の相談員として勤務。精神保健福祉士、保育士のダブルライセンスで、家庭問題、子どもの発達、保育・教育・療育関連の仕事に従事。東京都出身。二児の母。

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