大人の発達障害は職場で迷惑?3つの対応例と合理的配慮を精神保健福祉士が解説

2018.10.15公開 2020.06.01更新

職場の同僚や部下に発達障害の方がいたら、どのように接すればよいでしょうか?

 

「アイデアはいいんだけど、何で毎回書類をなくすの?」

「どうしてギリギリまでやらないの?」

「話を聞いていないんじゃないのか?」

「どうやって教えたらわかってくれるの?」

 

もしかすると、こういったお悩みを抱えている職場の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

今回は、職場の発達障害の方への対応について、考えてみたいと思います。

 

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大人の発達障害…職場で迷惑と感じるケース

ケース1.話を最後まで聞かない、話したことを忘れる

「A君、話は最後まで聞いて!」

 

飛び出しそうになるA君に、今日もMさんは声をかけました。

 

A君は行動力はあるのですが、話をよく聞かずに飛び出すので、いつも何かしら失敗をやらかしてしまいます。

 

ミーティングの最中も、なんだかキョロキョロしています。ポスターを見たり、ドアをみたり…。

 

頭の中は違うことを考えていて、話をきちんと聞いていないみたいです。

 

ケース2.片づけができない、物をすぐになくす

Bさんはいつもあたふたしています。机の上がとても汚いのです。

 

電話を受けるのにも「あれ?メモ帳がない」「ボールペンが無い!」等とやっているので、誰からかかってきたのか、メモを取れないこともしばしば。

 

机のペン立てにはボールペンが沢山あります。

 

「ボールペンなら、沢山あるでしょ」と言うと、「あれ、全部書けないんです!」

 

インクが切れたペン、壊れたボールペンを置いておいても仕方がないから、片づけるように言うと、「会社のものなので、捨てていいかどうかわからなかった…」とのこと。

 

書類も山積みです。

 

よく見ると、何年も前の研修の資料や、パンフレット等、出しておく必要の無さそうなものが、山と積まれています。

 

これでは、大事な書類がどこにあるのかわからないし、仕事もはかどりません。

 

ケース3.時間ギリギリ行動

Cさんのプロジェクトはいつも時間ギリギリです。

 

提出しなければならない前日になって、慌てて、半泣きになりながら、徹夜をしたりすることも。

 

「もっと前から余裕を持って進めればいいのに…」と周りの人は思いますが、いくら注意しても一向に改善しません。

 

このままではいつか身体を壊したり、大きな失敗をするのではないかと、周りの人も見ていてヒヤヒヤしてしまいます。

 

 

職場で必要な「合理的配慮」とは?

1.合理的配慮の定義

上の例の方達が発達障害で「今の会社の仕組みでは困難なことがあるので、配慮をお願いします…」という申し出があった場合は、職場は出来る限りの配慮をしなければなりません。

 

2016年に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(※1)」では、

「行政機関等及び事業者は、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない」

とされています。

 

この法律が対象とする障害者は、障害者手帳をもっている人だけでなく、心や体のはたらきに障害がある人で、障害や社会的障壁によって、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人すべてが対象です。

 

つまり障害者手帳を取得していない発達障害の方で、障害や社会的障壁によって、生活に相当な制限を受けている方も対象です。

 

2.どんな配慮をすればよいのか?

合理的配慮とは、

・障害のある人から、社会の中にあるバリア(社会的障壁)を取り除くために、

・何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、

・負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者においては、対応に努めること)が求められるものです。

そして、例えば人手不足で、混雑している時間帯にそこまでの対応ができないといった、「重すぎる負担」であるとしても、

「障害のある人に、なぜ負担が重すぎるのか理由を説明し、別のやり方を提案することも含め、話し合い、理解を得るよう努めることが大切(※2)」

になります。

 

どんな配慮をすればよいかは、その人が何に困っていて、どんな配慮を必要としているのかにより異なりますので、話し合いをしながら、職場でできることを考えていくことが必要です。

 

それでは次に、さきほど上で挙げた三人の場合の配慮の例を示します

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桜衣真里

精神保健福祉士

大学院修士課程修了後、専門学校、短大講師等を経て、公的機関の相談員として勤務。精神保健福祉士、保育士のダブルライセンスで、家庭問題、子どもの発達、保育・教育・療育関連の仕事に従事。東京都出身。二児の母。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年10月15日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。