【臨床心理士解説】子どもの無気力…親としてどう対処したらよい?

2023.01.09公開 2024.02.11更新

子どもからネガティブな言葉や行動が増えていることに気が付き、親としての振る舞いや言動に問題があったのではないかと心配…

 

すぐに言動を変えることは難しいかもしれませんが、親としての子どもとの接し方は、子どもへの影響がとても大きいもの。

 

そこで今回は、無気力な状態になってしまっている子どもへの接し方や親としての対処法について臨床心理士に解説していただきました。

 

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子どもというと活発に走り回っている姿をイメージしますが、やる気が起きない、元気がないといった無気力状態を呈する子どもも一定数います。

 

無気力な状態というのは、

自分の力ではどうしようもない困難を繰り返し経験して、一種の諦めが生じてしまっている状態

ということができます。たとえば、

「何をやってもどうせダメだ」

「私にはできない」

といった発言が当てはまるかと思います。

 

他にも、長い間成功体験が得られなかったり、自分の欲求が満たされない経験が続くと、目標を見失ったように無気力になることがあります。

 

「何をやったらいいかわからない」

「やるべきことが見つからない」

 

といった発言があったり、周囲から見ると自分といったものがない、何を求めているのかわからないように感じられるかと思います。

 

子どもの無気力への対処法は?

子どもの無気力に対する対処法として、以下が挙げられます。

 

どうすれば課題をクリアできるのかを一緒に考える

学校に行き始めると、必然的にテストや受験といった競争を意識する場面が多くなります。

 

点数や成績、合否という形で明確に結果が出てくるため、自分や他人の能力の高さを比べることに意識が向きやすくなり、「どれだけ頭が良いか」が重要だと考えるようになります。

 

そこで優劣ばかりに目を向けてしまうと、自分の能力や運といったコントロールできない要素に原因を置くようになります。

 

うまくいっているうちはそれで良いのですが、失敗すると「頭が悪いから」「運が悪かったから」と原因を考えてしまい、次に向けての改善策に繋がりにくくなります。

 

そのような経験が続いた結果、「何をやってもどうせダメだ」という無気力状態に陥りやすくなります。

 

反対に、自分の努力といったコントロールできる要素に原因を置くことができると、失敗しても次に繋げることができるため、無気力状態に陥る可能性は少ないといえるでしょう。

 

努力に原因を置く方が、粘り強く課題に取り組むことができるというメリットもあります。

 

あまり努力をせずに諦めてしまっている子どもに対しては、努力をすればできるという意識を持たせることで、無気力を改善できる場合があります。

 

方法としては、難しい問題に出会って解けなかった際に、「一生懸命考えれば解けるはず」であることを伝えたり、やり方を一緒に考えていくことが有効なようです。

 

自信を失っているような場合には、まずはスムーズに正答できるレベルの問題を繰り返し解かせて成功体験を積んだ後に、難しい問題を経験すると良いでしょう。

 

様々な分野から本人の得意を見つけ、伸ばしていく

ここまで紹介した方法は、あまり努力をせずに諦めてしまっている子どもに対しては有効ですが、努力も万能なわけではありません。

 

努力をしているにも関わらず良い結果に繋がらないこともあり、その場合にもやはり無気力感を抱えやすくなってしまいます。

 

一昔前までの学歴社会では勉強ができることが重要な要素でしたが、現代では机上の勉強に限らない「生きる力」そのものを育てることが大切であることが指摘されています。

 

勉強が得意でなければスポーツをやらせるといったように、特定の分野のみで結果を求めるのではなく、様々な分野が選択可能であり、どこかで自分の得意を伸ばせば良いことを伝えていくことが大切です。

 

もちろん生きていく上では、やりたくないけれどもやらないといけないこともあります。

 

そのような時には、自分の能力であればどの程度できるかを知り、それに見合った目標を立てていく力が必要になります。

 

自分の得意不得意やできること、できないことを知っておくことは、生きていく上でとても重要な力になります。

 

そのような力を子どもの頃から身につけられるよう、サポートをしていくと良いでしょう。

 

本人のやりたいという意志を尊重する

子どもが何かに興味を持ってやりたいと思う時、誰かから促されたり強制されたりするわけではなく、自分から進んで行うことが多いのではないでしょうか。

 

しかしそれが親の望む行動でなかった場合、親はいい顔をしなかったり、子どもがしたいといった活動を止めてしまうことがあります。

 

たとえば、宿題をまだ終えていないのにゲームをしたがる、といったような状況です。

 

この時、はじめから「ゲームはダメ、宿題をやりなさい」と言ってしまうと、子どもは自分のやりたいことを否定されたという経験で終わってしまいます。

 

「ゲームがやりたいのはわかった」といったように、子どものやりたいという気持ちを一度受け止めてあげると、子どもは自分の意思が尊重された体験を積むことができ、自己効力感に繋がっていきます。

 

また、「先に宿題を終わらせたら、ゲームをしてもいいよ」といったように、ゲームを交換条件として宿題をさせるのは、実はあまりお勧めできません。

 

なぜなら、人はごほうびをもらうことで、さらにやる気をなくしてしまうことが知られているからです。

 

一度このようにして宿題をさせてしまうと、次からも何か報酬がないとしないようになり、宿題を自発的にやることが難しくなってしまいます。

 

おすすめの方法は、「ゲームと宿題、どっちを先にする?」と子どもに決定権を委ねることです。

 

この方法だと、ゲームをしたいという子どもの意思を尊重できますし、自分で決めた約束は守りやすいという利点もあります。

 

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【参考文献】

・波多野 誼余夫・稲垣 佳世子 (2020). 無気力の心理学 ーやりがいの条件ー 中央公論新社

・高山草ニ (2006). 無気力と無力感 ー動機の期待×価値理論からの分析ー 島根大学教育学部紀要 (人文社会科学), 39, 45-53.

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鈴木のぞみ

臨床心理士/公認心理師

大学院在学中から、放課後等児童デイサービスや中高生へのソーシャルスキルトレーニング等の現場に携わる。修了後は精神科救急病院に勤務し、カウンセリングや心理検査等の業務に従事してきた。出産を機に退職し、現在は育児の傍ら相談業務を行っている。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2023年1月9日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。