【臨床心理士解説】「無気力症候群」とはどんな状態?原因・セルフチェックをご紹介

2023.01.11公開 2024.02.11更新

40代になり無気力感が増えた…

 

心身の変化が増える中で、何をしようとする意欲がなくなったり、以前のようにものごとに関心が持てなくなってしまうといったことも少なくないようです。

 

そこで今回は、「無気力症候群」についてその状態や原因、セルフチェックのポイントについて臨床心理士に解説してもらいました。

 

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無気力症候群かも?

無気力症候群とは、

「意欲が低下したり、自発性が低下したり、感情の起伏が小さくなったり、周囲に無関心になったりするような無気力な症状を呈すること」

と定義されています。

 

日本では、もともとステューデント・アパシーといって、学生でありながら学業に意欲が持てないというような、学生に特有の無気力状態が広く知られていました。

 

たとえば、大学の新入生における五月病のように、厳しい受験戦争を勝ち抜いて大学に入学したはいいものの、大学に合格することがゴールとなってしまったばかりに、その後の目標が持てずに入学後に無気力になるといったものです。

 

しかし近年、より高い年齢となる40〜50代、いわゆる中年期においても、無気力症候群の症状が見られることが指摘されています。

 

無気力症候群では、あらゆることにやる気が出ない場合もあれば、学生であれば勉強、社会人であれば仕事といったように、本業に対して無気力が生じやすい場合もあります。

 

その場合は、逆にいえば、本業以外の遊びや趣味、友人との交際といった活動では無気力は生じにくく、普段通りの活動ができる場合が多いのかもしれません。

 

無気力症候群の原因は、

強いストレスから心を守るための逃避反応

だとも言われています。

 

無気力症候群の原因は?

何が強いストレスになるかは人それぞれですが、ここでは中年期の無気力症候群に多いストレスの原因を挙げていきます。

 

空の巣症候群

子どもが進学、就職、結婚といったタイミングで自分の元から離れて行くにあたって、喪失感や不安感を感じる状態のことを指します。

 

雛鳥が巣立った後の鳥の巣の状態に例えて、このように呼ばれています。

 

子育てに専念してきた専業主婦に多く経験されますが、身内の介護が終わった、長年勤めていた会社を退職したといった場合にも経験する可能性があります。

 

子育てや介護、仕事といった大きな責任を伴う活動が終わり、ある意味ではストレスから解放されているように思われるかもしれません。

 

しかし環境の変化という意味では、新たな生活スタイルを考えさせられるという心の負荷にも繋がりやすいといえるでしょう。

 

更年期障害

閉経などに伴ってホルモンバランスが崩れ、様々な不調を呈する状態です。

 

のぼせや顔のほてり、脈が速くなる、動悸や息切れ、異常な発汗、血圧が上下する、耳鳴り、頭痛やめまいといった身体的な症状だけでなく、憂うつや不安、不眠、イライラといった精神的な症状も起こります。

 

身体の疲れやすさやだるさから、何もしたくないという無気力に繋がることも少なくありません。

 

ミッドライフクライシス(中年の危機)

中年期というのは、仕事や家庭に長い間従事してきて、それなりの立場や役割が与えられる時期です。

 

長年取り組んできた仕事が一つの大きな形になったり、子どもが成人したりと、人生の大きな節目を迎えやすい時期でもあります。

 

それと同時に、人生の折り返し地点ともいえる年齢となり、残された時間が限られていることや、体力の衰えにも意識が向きやすいでしょう。

 

このような自分自身の内的な変化や周りの環境の変化に伴って、

 

「自分の人生はこれでいいのか?」

「このまま残された時間を過ごしていいのか?」

 

といった、人生の意味への問い直しが起こります。

 

仕事の場合だと、長年現場でやってきたのに管理職になり、やりがいが見出せない、仕事ばかりしてきたので退職後にどう過ごしていいかわからない、という戸惑いが起こるかもしれません。

 

家庭では、子育てに注力していた専業主婦が、子どもが育ち上がった後に人生の目的を見失ってしまうといったように、空の巣症候群と重なるところがあります。

 

これらに代表されるような強いストレスを経験することによって、無気力症候群が起こると言われています。

 

無気力症候群は病気ではありませんが、長引くとうつ状態に発展する場合もありますので、定期的なセルフチェックをおすすめします。

 

無気力症候群のセルフチェックは?

セルフチェックのポイントとしては、

・何もしたくないと感じる

 

・体がだるく、疲れやすいと感じる

 

・だらだらと過ごしてしまうことが増えた

 

・何をやっても面白くないと感じる

 

・以前よりもめんどくさいとよく感じるようになった

 

といったものが挙げられます。

 

これらの症状が続いて心身がつらいようであれば、一度病院を受診してみるのも良いかもしれません。

 

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【参考文献】

・厚生労働省 e-ヘルスネット (2019). 無気力症候群 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-059.html (2022年10月20日閲覧)

・長内 優樹 (2015). 無気力状態尺度の再検査信頼性ー大学生を対象とした縦断調査による検証ー モチベーション研究, 15, 22-26. https://imsar.jp/pdf/imsar04/imsar_04_05.pdf (2022年10月20日閲覧)

・中道 泰子 (2015). 中年期女性の危機に関する一考察 佛教大学教育学部論集, 26, 1-14. https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/KO/0026/KO00260L001.pdf (2022年10月20日閲覧)

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鈴木のぞみ

臨床心理士/公認心理師

大学院在学中から、放課後等児童デイサービスや中高生へのソーシャルスキルトレーニング等の現場に携わる。修了後は精神科救急病院に勤務し、カウンセリングや心理検査等の業務に従事してきた。出産を機に退職し、現在は育児の傍ら相談業務を行っている。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2023年1月11日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。