【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの生きづらさ…自分や他人を許せる7つの言葉
(質問)アダルトチルドレンで生きづらさ感じることが多いです…。が、いきなり病院はハードルが高いです。日常生活で始められる対処法があれば教えてほしいです。
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※アダルトチルドレンは診断名ではなく医学的な概念ではありません。
アダルトチルドレン 6つのタイプ
アダルトチルドレンのタイプは以下の6つに分けられます。
・ヒーロー(英雄)
・スケープゴート(生贄)
・ロストワン(不在)
・ピエロ(道化)
・プラケーター(慰め)
・イネイブラー(支え)
これらのタイプはあくまで人との関わり方のパターンです。
1つのタイプの特徴だけを持っているという人の方が少なく、自分自身がアダルトチルドレンであることを悩んでいる多くの人達にとってはこの複数のタイプが織り交ざっていたり、時と場合によって、相手によってタイプを使い分けていることがほとんどです。
そのため、タイプ別に克服を考えるよりも、アダルトチルドレンであることで感じている生き辛さ自体に目を向けて対処法などを考えていくことをおすすめします。
普段の生活の中でアダルトチルドレンの克服・心の回復をしていくためにはまずその下準備として【土台】を整えることが先決です。
アダルトチルドレンの克服の土台づくり
自分自身の心に目を向ける前に、以下のことができているかを確認してみてください。
〇朝起きて夜眠るという規則正しい生活リズムをとれているか(夜勤シフトなどで不可能な場合を除く)
〇バランスの取れた健康的な食事をとれているか
〇自分の心や体が危険にさらされない、安全な居場所はあるか(例、自宅の一室等)
〇身体的・精神的に大きな病気やけがはしていないか
自分の心に目を向けるというのは根気や体力を必要とする行為です。
上記の中でうまくいっていないものがある場合にはまずそこを整えることから始めましょう。心と体は無関係ではありません。まずは目に見える体の健康と安全を確保してください。
【土台】が整ったら、日常生活の中で以下のことを意識してみてください。
自尊心を守る
健全な人間関係を築いて生き辛さを克服していくためには、健康な自尊心が必要です。
ところが、機能不全家族の中で心を殺し、沢山の傷つき体験をしてきたアダルトチルドレンにとっては自尊心を守る・育てるという感覚が不十分なことが多くあります。
そこで、まずはこの無防備で弱ってしまっているであろう自尊心を守って、育てていくことを考えます。
そのために、日常生活の中では以下のような自尊心を傷つけるシチュエーションを避けましょう。
〇人を馬鹿にしたり、見下したりする
〇人をむやみに評価したり、行動をジャッジする
〇人に暴力をふるう
〇人に嘘をついたり、陥れようとする
〇人を追い詰めたり、試すような事をする
上記の「人」というのは、相手だけではなく自分自身も当てはまります。自分がする側になっても、される側になっても、上記のシチュエーションでは自尊心は傷つき、小さくなる一方です。
もしも上記のようなことをしそうになったら(されそうになったら)その場から一旦離脱してください。「ちょっとトイレ」と言って席を外すのも手です。
自分を許す・相手を許す
子どものころに褒めてもらった経験が少なかったり、努力を認めてもらえなかったり、些細なことでも怒られていたというアダルトチルドレンにとって、「許す」ということはとても難しいことです。
なぜなら、許す(許される)という経験が圧倒的に少ないからです。「許す」ということがどういうことなのかもピンとこないという人もいるでしょう。
そこで、日常生活の中で自分や相手を許しながら、少し肩の力を抜いていく具体的な言葉をお伝えします。
〇大丈夫
〇まぁ、いっか
〇及第点で充分
〇いいんじゃない?
〇そんな日も(事も)あるさ
〇よくやった方だよ、たぶん
〇●●はできるてるんだから良し
自分に対しても相手に対しても、「良(よ)い加減」で手を打つ、ということは許すためにはとても大切です。
何かに(自分でも相手でも)に対して怒りや不満を感じたとき、上記の言葉で状況に合いそうなものを選んで口に出してみてください。
自分の人間関係(コミュニケーション)のパターンに気づく
アダルトチルドレンの生き辛さは、特に対人関係において出てくることが多いです。幼少期から知らず知らずのうちに身についてしまったコミュニケーション(対人関係)のパターンを繰り返してしまうため、出口のない苦しさを感じてしまいます。
そこでまずは自分自身のコミュニケーション、対人関係にどんなパターンがあるのかを知ることが、生き辛さの根本に気づく第一歩になります。
具体的にお勧めするのが、日記です。
人間関係は一日にしてならず、です。初めて出会ってからだんだんと打ち解ける時間があり、そこからしばらく一定の関係性に落ち着く、という流れがあります。
生き辛さを感じるのは、その時間経過の中で自分にとって辛く苦しい関係性になることや、良好だった関係が悪化したり破綻してしまう(関係性が失われる)場合です。
人間関係の変化は長期にわたるため、後から振り返った場合には忘れていることがあったり、見たくない記憶には都合よく蓋がされることがあります。
そのため、その時の率直な記録ができる日記はとても便利なのです。日記には、以下のようなことを記録します。
〇誰とのことか(例:友達に紹介されて初めて会った●●さん、彼氏、母親、など)
〇何があったか(例:ご飯に誘われた)
〇何を考えたか(例:面倒だと思ったけど断る方がもっと面倒だったから「行く」と伝えた)
〇どんな気持ちになったか(例:憂鬱な反面ひょっとしたら楽しいかもという期待)
この日記にも完璧を求める必要はありません。
絶対に毎日書かなくてはいけないものではなく、覚書のように気楽に書いてみてください。
定期的に読み返していくうちに「あれ、このくだり、前にもあったな・・・」「似たようなこと思ってる(してる)日があったな」というようなパターンに気が付くかもしれません。
以上のようなことから、日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
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【引用文献】
〇西尾和美(1998):アダルト・チルドレン 癒しのワークブック、学陽書房
【参考文献】
〇C.L.ウッドフィールド(1997):内なる子どもを癒す―アダルトチルドレンの発見と回復、誠信書房
〇W.クリッツバーグ(1998):アダルトチルドレン・シンドローム、金剛出版
〇緒方 明(1996):アダルトチルドレンと共依存、誠信書房
〇岸見一郎、古賀史健(2013):嫌われる勇気、ダイヤモンド社
〇西尾和美(1997):アダルト・チルドレンと癒し 本当の自分を取りもどす、学陽書房
〇西尾和美(1998):アダルト・チルドレン 癒しのワークブック、学陽書房
〇アスク・ヒューマンケア:アダルトチルドレン――回復の4ステップ https://www.a-h-c.jp/article/7185(2023年4月閲覧)
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2023年4月19日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。