なぜ適応障害は甘えと思われるのか?適応障害を経験した看護師が解説

2017.01.20公開 2018.11.15更新
 

「適応障害です」と言うと、「ただの甘えじゃないの?」と思われてしまうことが、しばしばあります。

 

適応障害は決して甘えではないのですが、なぜそのように思われてしまうのでしょうか。

 

今回は、実際に適応障害と診断された、看護師でもある私の経験も踏まえて、お話ししてみたいと思います。

 

【関連記事】

>>【うつ病・接し方】職場での意外な8つの禁句とは?臨床心理士が解説

>>うつ病で職場復帰した同僚…接し方の3つの実践&声掛け例とは?

>>うつ病の部下への接し方…部下のSOS・NG対応・3つの心構えとは?

>>うつ病の接し方として「ほっとく」はアリ?OK・NGケースを解説

 

適応障害ってどんな病気?

まず、適応障害がなぜ甘えと思われるのかを考える前に、適応障害とはそもそもどのような病気なのか、というところから見てみましょう。

 

適応障害の定義とは

適応障害とは、

環境の変化やライフステージにおけるイベントなどのストレスによって、不安感や憂うつさなどの症状が現れたり、行動面で変化が現れたりする状態

を指します。

 

適応障害を発症する原因となるストレスは人によってさまざまで、身近な人間関係や災害など社会的レベルの問題まで、幅広く原因が考えられます。

 

また、症状の種類や程度にも個人差があり、この症状があるから必ず適応障害と診断される、と言うものでもありません。

 

他の精神疾患の診断基準に当てはまっていないかや、明確なストレスの原因があるかなどを総合的に見て診断されます。

 

適応障害は、ストレスの原因が除去されれば症状は持続しないと言われています。しかし、ストレスが持続的にある状態だと症状も持続しますし、のちにうつ病などの別の病気とされることもあります。

 

参考:みんなのメンタルヘルス(厚生労働省)

 

 

適応障害は甘えではない

適応障害は上に書いた通り、ストレスが原因で発症する病気であり、精神的に甘えているために起こるものではありません。

 

頑張ってその状況に適応しようとしていた人が、うまくいかずに適応障害を発症してしまうことだってあります。

 

症状がひどければ、休養して治療することが必要ですし、ストレスの原因は何なのかを考え、対処しなければなりません。1人での対応が難しい状況であれば、まわりの協力も不可欠です。

・症状に適切な対応をすること

・直接のストレス原因を取り除くこと

・ストレスに適応していく能力を身につけていくこと

が大切になってくるのです。

 

またそれは、短期的な応急処置ではなく、時間をかけてじっくり向き合っていく必要があると言えるでしょう。

 

 

適応障害はなぜ甘えと思われるのか?

では、適応障害がどんな病気なのかを知った上で、なぜ甘えだと思われてしまうのかを考えてみましょう。

 

同じストレスに対応できる人、そうでない人の違い

なぜ適応障害が甘えだと思われるのか、その理由のひとつは、同じストレス環境下でも対応できる人とできない人がいるからではないかと思います。

 

例えば、同じ会社の同じ部署に、同時期に数人が入職したとします。

 

同じように研修を受けて似たような業務を行っていても、それを楽にこなしてしまう人もいれば、負担に感じる人もいるでしょう。

 

その違いが、適応障害を起こす人が甘えていると思われてしまうひとつの理由であると、私は考えています。

「他の人はできているのに、なぜ1人だけできないのか?」

「他の人はストレスだと感じていないのに、過剰に考えすぎではないのか?」

「甘えているから、ストレスに感じるのではないか?」

「逃げようとしているのではないか?」

まわりと比較されて、そんなふうに思われてしまうために、適応障害は甘えだと考えられてしまうのではないかと思います。

 

 

弱音を吐き出しにくい社会

そしてもうひとつ私が考える、適応障害が甘えであるとされてしまう理由は、「できません」「つらいです」と言いにくい社会の風潮です。

「上司や先輩に相談しにくい」

「言うとダメなやつだと思われるのではないか」

といった環境が、適応障害が甘えだと思われる原因であるように感じられます。

 

1つのことを何が何でもやり抜くこと、根気強い努力、そういったものを美徳と感じる社会が、ストレスに適応できない人の居場所をなくしているような気がしてなりません。

 

逃げること、休むこと、やめることに、まだまだ社会の中で寛容さが足りないことが、甘えと思われてしまう理由なのではないでしょうか。

 

 

「適応障害=甘え」と思ってしまった自分

適応障害が甘えであるという考えは、まわりの人ばかりが持つものではありません。

 

適応障害を発症した本人が、そう感じて悲観的になってしまうこともあります。私自身が、実際にそうでした。

 

私は、新卒1年目に適応障害と診断されました。看護師として働き始めて、約半年が経った頃。たくさん学ばなければならない大事なときでした。

 

不眠やひどい憂うつ感、食欲不振などの症状に襲われた私は、職場に行くことができなくなってしまいました。

 

幸い、当時の上司や先輩は理解があり、私のことを甘えていると否定することはありませんでした。でも、私自身が、自分のことを甘えているのではないかと思ったのです。

「他の同期は仕事も課題もこなせているのに、私だけできていない」

「せっかく評価されているのに、『できません』なんて言うと評価を下げてしまう」

「できないなんて、途中で投げ出すなんて、ダメな人間だ」

そんなふうに、自分のことを考えて、自ら追い込んでしまっていたのです。

 

体育会系な職場だったせいもありますが、現状をつらく感じているのを相談することさえ、してはいけないような気がしていました。

 

そんな行為はできないと、つらく感じるのは私が甘えているからだと思っていたのです。

 

今になって振り返れば、それが考えすぎであったことはよくわかります。もっと早く相談すればよかったのに、と反省するばかりです。

 

でも、当時の私のように、ストレスに対応できない自分を「甘えている」と責めてしまっている人はいるのではないでしょうか。

 

「それは甘えじゃないんだ」と、自分自身に言ってあげるのも大切なことではないかと思います。

 

 

まわりも自分も寛容に

精神疾患に対する認知度や理解は広まってきていますが、まだまだ適応障害を甘えだと思う風潮はなくなっていないような気がします。

 

ストレスに対する感じ方も、反応も人それぞれです。適応障害になってしまうことは、甘えなんかではありません。

 

まわりと比べず、その人自身をまわりも自分も受け入れてあげることが、適応障害を乗り越える第1歩となるのではないでしょうか。

 

【関連記事】

>>【うつ病・接し方】職場での意外な8つの禁句とは?臨床心理士が解説

>>うつ病で職場復帰した同僚…接し方の3つの実践&声掛け例とは?

>>うつ病の部下への接し方…部下のSOS・NG対応・3つの心構えとは?

>>うつ病の接し方として「ほっとく」はアリ?OK・NGケースを解説

小松亜矢子

元看護師のフリーライター

自衛隊中央病院高等看護学院卒。22歳でうつ病を発症し、寛解と再発を繰り返し今に至る。自分自身のうつ病がきっかけで夫もうつになり最終的に離婚。夫婦でうつになるということ、うつ病という病気の現実についてもっと知ってほしいと思い、ブログやウェブメディアを中心に情報発信中。

記事をシェア
記事をツイート
記事をブックマーク
  • 本コンテンツは、メンタルヘルスに関する知識を得るためのものであり、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題について責任を負うものではありません。
  • ユーザーの皆様へ:ご自身のお悩みについて相談したい方は、こちらからご登録をお願いします。
  • 専門家の皆様へ:コンテンツついて誤りや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください

関連記事