「日本の普通に殺された」心を見失いそうになって気がついた“自分らしさ”

 

 

「空気読めよ」

 

この言葉に、「みんなの言う空気ってなに?普通ってなに?」と悩んだことのある人も、きっと少なくないはず。

 

協調性を求められることが多い日本では、ときに自分らしさとはなにか、忘れそうになることもあります。

 

「日本の普通に殺された」と語るYAMATOさんは、京都生まれ・ニューヨーク育ちの帰国子女。周囲に合わせて生活する自分に苦しみ、ひとり部屋で泣いたこともあったそうです。

 

その苦しみを、どのようにして乗り越えていったのでしょうか。YAMATOさんのお話を伺いました。

 

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【YAMATO(やまと)】

原体験(げんたいけん)を掘り起こす「dig your life(ディグユアライフ)」のライフコーチとして活動中。自分らしさがわからない人、自分らしく生きる方法がわからない人に対して、原体験から自分を読み解くサポートをしている。

〈インタビュアー くまのなな〉

 

自分の過去を掘り起こすことで、探していた答えが見えてくる

くまの
恥ずかしながら、原体験(げんたいけん)という言葉を初めて聞きました。『人の考え方に影響を与える過去の体験』という意味だそうですね。「dig your life(ディグユアライフ)」も、一般的に使われている言葉なんですか?
YAMATO
いえ、オリジナルの言葉です。ぼくが行っている活動を表すために、「dig your life」というサービス名を作りました。他の人に言っても、伝わらないと思います(笑)
くまの
あ、そうなんですね!そもそも、どうして原体験を掘り起こそうと思ったんですか?
YAMATO
もともと、ぼくって原体験オタクなんですよ。周りの人の過去に強い関心があるんです。

 

振り返ると、学生時代から「なんでなんで?」とよく聞いていたと思います。

くまの
なるほど、確かに…。(インタビュー開始前に、YAMATOさんから「くまのさんはなんでインタビューを始めたんですか?」と質問がありました。原体験オタクを行動で示している方だ…)
YAMATO
ぼくは、自分自身の行動に対して「なんで?」が説明できるんです。でも、自分に対しての「なんで?」を説明できない人って、案外とても多いんですよ。

 

自分のことがわからないがゆえに、迷ってしまったり、答えは自分の中にあるのに、うまく言葉にできない方がいる。

 

そのことに気がついてからは、気持ちを言葉にするためのお手伝いをさせてもらっています。

 

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身振り手振りも交えて、わかりやすく説明してくれるYAMATOさん。

 

くまの
「自分も原体験を掘り起こしたい!」と思った方のサポートをしていると解釈していいですか?
YAMATO
はい。ぼくが質問をすることもありますが、答えは相手の中にしかないので、あくまでも掘り下げる手助けをするだけ。

 

記憶って、楽しいものだけじゃないですよね。悲しい過去であったり、苦しい経験であったり。それに、ひとりで向き合うのは辛いじゃないですか。

くまの
そうですね…。
YAMATO
ぼくという客観的な視点も入れることで、安全に掘り下げることができるのかなと思っています。

 

過去を振り返るのって、落とし穴を掘るのと似ているんです。掘った後は、ちゃんと出れるように設計しておかないといけないんですよね。

くまの
なるほど…。掘った穴に、ハシゴをかけておくイメージ?
YAMATO
そうです。せっかく掘ったのに、その穴に埋もれてしまう…、となったら最悪ですからね。

 

「日本の普通に殺された」アメリカとの文化の違い

くまの
YAMATOさんの原体験が書いてあるブログも、拝読しました!ボリュームのある記事ですよね。
YAMATO
10,000字書きました(笑)

 

それでも、だいぶ削ったんですよ。

くまの
ブログに出てきた「日本の普通に殺された」という言葉、強烈でした。幼少期をアメリカで過ごしたYAMATOさんですが、アメリカでは普通を感じることはなかったんですか?
YAMATO
アメリカには、人種も言語もバラバラの人が混ざって住んでいます。その中にいると、「普通」という概念がなくなるんですよ。

 

例えば、誰かの家に行くときに、「この家は靴を脱いで上がるのか?それとも靴のまま上がるのか?」がまずわからない。

くまの
な、なるほど…!そこからなんですね。
YAMATO
相手にとっての普通がわからないから、ひとつずつ確認していくんです。コミュニケーションのコストはかかりますけどね。

 

でも、そのおかげで、いつの間にか抑圧されている人は日本と比べて少ないように思います。

 

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一番右がYAMATOさん。アメリカでは、多種多様な文化を感じていたといいます。

YAMATO
日本に帰ってきて感じたのは、良くも悪くも、日本の社会は共通の前提が多いということです。暗黙の了解とも言いますよね。

 

「空気読め」という言葉も、「読む空気」があるから生まれた言葉なんだろうなと思います。

 

「みんなこうだよね」と共有されている価値観に自分が当てはまらなかったときは、とても苦しかったですね。

くまの
YAMATOさんは、中学入学と同時に日本に帰国したんですよね。やっぱり、学校の中で日本の普通を感じることが多かったですか?
YAMATO
いや、通学のときでも、感じることはありましたよ。

 

みんな同じ服装じゃないですか。サラリーマンの人は黒いスーツだし、学生は制服だし、小学生はランドセルを背負ってて。

くまの
視界に入ってくる情報が、全部同じだったんですね…。
YAMATO
そうです。「黒いスーツ着ている人、出て行ってくださーい」と言ったら、ぞぞぞっといなくなってしまうような。こんなにも、ひとつの条件で人が消せちゃうのか…と思いました。

 

学校に行っても、あるべき姿を求められているように感じました。

 

ぼくの通っていた中学は私服だったのに、キャップは「なんとなくダメ」って言われたり…。

 

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学生時代のYAMATOさん。クラスメイトからの言葉は、「普通、キャップを学校には被ってこないだろ。脱げよ」。

 

くまの
私服OKなのに、キャップはNGなのか…。
YAMATO
そうなんですよ。あとは、ぼく、ガムが好きなんですけど。ガムって、日本ではマナーの問題で学校では噛んじゃいけないですよね。

 

でも、ぼくからしたら「メジャーリーガーは噛んでるやん!」って思うんですよ。しかも、くちゃくちゃ噛みたいからじゃなくて、集中力を上げるために噛んでるんですよね。噛んでいるときのほうが、記憶の定着率がいいって研究もあります。

 

それに対して、「いや、いま噛んでいる人少ないじゃん?」って曖昧な理由でNGになったり。授業中の水も、「みんなが飲んでいないからダメ」だったりする。

くまの
授業中の水はダメ!ありますよね…!
YAMATO
喉が渇いているなら、飲んだほうが健康にいいじゃん!って思うんです。そういう、「みんながやっていないからやらないほうがいいルール」に、めちゃめちゃ反発心を持っていました。

 

でも、反発心があることで、いじめにあってしまって。自分を守るために、周りに合わせた時期もあったんです。

 

スクールカーストに疲れ果てた中学時代

くまの
周りに合わせたというと、具体的には…?
YAMATO
どこの学校でも、ヒエラルキー高めの部活ってあるじゃないですか。それが、ぼくの学校ではサッカー部だったんです。

 

だから、自分もサッカー部を選んだりとか。

くまの
なるほど…。スクールカーストってやつですね。
YAMATO
ただ、ぼくが入っていたサッカー部、めちゃめちゃ弱かったんですよ。中学3年の引退試合も、すぐに負けてしまって。

 

でも、弱いなりに、みんな夢中でやっていました。

くまの
へぇ!いいですね。
YAMATO
引退試合に負けたときは、みんなわんわん泣いていましたね…。

 

ぼく、その姿を見て、一気に心が冷めてしまったんです。

くまの
えっ、どうしてですか?
YAMATO
たぶん、サッカーに対しての熱量の違いが、その瞬間にはっきりしたんでしょうね。

 

周りの子は、高校でもサッカーを続ける子がほとんどでした。泣いている姿を見て、「本当にサッカーが好きなんだな」と思わされたんです。

 

ぼくは、純粋にサッカーが好きで部活に入ったんじゃない。人気者の仲間に入りたかったから、選んだ部活だったんです。

 

「自分は泣けない。なんだこの温度差は」とモヤモヤしたまま家に帰って、自分の部屋に入ってから、やっと泣けてきました。

くまの
それは、どんな意味の涙だったんでしょう…。
YAMATO
ぼくがサッカー部で活動するために、母親は毎朝お弁当を作ってくれたり、父親はスパイクを買ってくれたり、親に支えてもらっていたのに、自分は本気でやれていなかった。

 

その事実を叩きつけられて、めちゃくちゃもったいない生き方をしていたと感じたんです。

くまの
中学生で、「もったいない生き方をした」と思ってしまうのは辛いですね…。
YAMATO
「なんとかしたい!」と強く思い、まずはサッカー部に退部届を出しました。でも、その後どうすればいいのかわからなかった。

 

教室でぼーっとしたり、田舎だったので田んぼを眺めながら、「俺、なにしたらいいんだろう…」と悩んでいましたね。

くまの
悩んでいた時期は、どれくらいだったんですか?
YAMATO
サッカー部を辞めてから1年くらいは、「自分の好きなこと」がわからない時期がありました。

 

でも、これは必要な時間だったと思います。

くまの
どうしてですか?
YAMATO
好きなことを探すためには、「好きじゃないことをした時間」と同じくらいの時間が必要だと思っているんです。

 

例えば、ブラック企業に勤めていた人が、ある日ぷつんと糸が切れて退職したとしますよね。でも、辞めた瞬間に、「よし!自分の好きなことするぞ!」と思える人って少ない気がするんです。

 

「自分の好きなことを思い出す時間」をあげないと、自分が好きだったコトやモノを、なかなか思い出せないのかなって。

くまの
なるほど…!いま、すごい納得しました…!
YAMATO
さっき、教室でぼーっとしたり、田んぼを眺めていたって言いましたよね。「普通」は、まっすぐ家に帰ったほうがいいんですよ。ぼくは帰宅部だったので。(笑)

 

だけど、あの頃のぼくにはその時間が必要でした。「あっちの道なにがあるんだろう?」と思ったら、その好奇心に従って、学校帰りに永遠と散歩をすることもありましたよ。

 

自分の「好き」のエネルギーに従うことで、自分らしさを取り戻していったんです。

 

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くまのなな

ライター

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2019年6月26日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。