Gapから渋谷区へ。LGBTとOUT IN JAPANのこと【永田龍太郎さんPart1】

2018.06.04公開 2018.08.08更新
 
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はじめまして、永田龍太郎です。私は現在、渋谷区の職員として男女平等と多様性社会推進に取り組んでいます。

 

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渋谷男女平等・ダイバーシティセンター<アイリス>

 

大学卒業後、広告会社を経て、ルイ・ヴィトンジャパン株式会社、Gapでマーケティングの仕事に携わっていく中で、現在のお仕事に至りました。

 

広告会社でプランナーの仕事をした後、ルイ・ヴィトンジャパンに入社したのですが、表参道店がオープンしたり、村上隆さんとのコラボがあったり、本物を間近で見ながら貴重な経験を積みました。

 

その後、培ったマーケティングのスキルを他でも活かしてみたいという思いから、Gapに移ることになりました。

 

 

Gap時代とカミングアウト

Gapに入ってみたら、社内で当たり前のようにオープンにしている人がいました。

 

会社の中での会話って、「週末、何してたの?」というようなプライベートなことも少なくないと思うのですが、

 

「◯◯さん、パートナーとバケーションで旅行に行ってたんだって」

 

といった会話がごく自然にされていて。本当に自然だったので新鮮に感じました。

 

その中で、私自身も「言い出しづらい」とか「言ったら何かリスクがあるかも」ということを一日中、考えながら過ごすことが、どんどん面倒になっていったんです。

 

「言いづらさ」に対して、我慢したり、話す内容にフィルタリングすることに、24時間ずっと自分の脳みそを使い続けることって、微々たる労力でも、積み重ねると相当な負荷になるんですよね。

 

でも、「オープンにしたところで、別に困らないんだったらもういいや」と、たぶん入社して3-4年経った頃に思い立って、私自身のことをカミングアウトしたという感じです。

 

 

「面倒くさいからもういいや」

私の場合は、いきなり「ゲイです」と打ち明ける感じではなく、「週末、みんなで遊んでて…」みたいな普段の会話の中で、徐々に小出しにしていったような記憶はあります。

 

実は、自分自身のカミングアウトをどうやってしたかって、あんまり覚えていないんです(笑)

 

なので、自分のことを知って欲しいというよりは「面倒くさいからもういいや」っていう感覚でしたし、その感覚が持てたという意味で、Gapの環境はすごく有難かったなと思いますね。

 

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Gapのフラットでオープンな文化

Gapのフラットでオープンな文化には、1969年にアメリカ西海岸から始まったという背景もあります。

 

1969年のアメリカでは、ウッドストックという伝説的なライブが行われたり、自由で新しい価値観を求めるカウンターカルチャーが一世を風靡していた時代でもありました。

 

そんな時代に、夫婦がお金を半分ずつ出し合って作った会社がGapだったんです。

 

「50:50でお金を出し合ってるから、意見も50:50でね」

 

というくらい、フラットなカルチャーからスタートした会社で、その意識は海外の支社においても、とても大事にされています。

 

特に日本は、海外進出したての頃で、創業者が何度も来日して、自ら出店交渉などを行うくらい、創業者とゆかりの深い国です。

 

なので、創業者の想いや会社のカルチャーをよく知っている人たちが、私の周りにもたくさんいました。

 

また、Gapには「オプティミスティック(楽観的)」というキーワードをものすごく大事にする文化がありましたし、社内でもよく使われていました。

 

一般的に、「これが良くなかった」「ここが悪かった」というネガティブな議論で、ただ責めるだけで終わってしまうことって、様々な会社で少なくないと思います。

 

そこをGapでは、「何がオポチュニティ(機会)だったの?」という言い方をするんですね。

 

要は、物事をチャンスとして捉えて建設的な議論をしていく。これは今まで勤めていた会社ではなかなか体験しなかったことでした。

 

 

不満や恐れがないからこそ

間違いやうまくいかなかったことを直視する上で、不満や恐れを持たないということは、多くの面で良いことなんだということは日々感じていました。

 

そういった楽観的・明るいカルチャーが、それぞれの従業員が100%の能力を発揮しやすくなりますし、上司は自分の部下が100%の能力を出せるようにすることに常に気を配っていました。

 

もし仕事で結果が出なければ、それは部下ではなく、マネジメントに問題があると。それくらい徹底していました。

 

Gapのカルチャーに根ざした取り組みの一つひとつが、他者への理解や多様な価値観を受け入れることにも繋がっているように感じます。

 

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「安心していられるのはここなんだ」

以前、本国のCSR担当の人と話をした時、

 

「学校でも家庭でもカミングアウトできない。でも、僕がバイトで働いているこのお店ではオープンにしていられる。」

 

「自分が一番自分らしく、安心していられるのはここなんだ」

 

という話をしてくれた子がいたそうなんです。

 

その話を聞いたときは、さすがにちょっと泣きそうになりました。

 

改めて、カルチャーの力ってすごく大きいんだなということを感じましたね。

 

個人的にもGapですごく学ぶことが多く、LGBTやジェンダーの多様性と平等に取り組む中でも、すごくヒントになっています。

 

 

GW中に渋谷を埋め尽くした写真

実はGW期間中、マルイさんが、渋谷の公園通りにあるフラッグをOUT IN JAPAN(※)のポートレートで埋め尽くされました。

 

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(※)「OUT IN JAPAN」は、日本のLGBTをはじめとするセクシュアル・マイノリティにスポットライトを当て、市井の人々を含む多彩なポートレートを様々なフォトグラファーが撮影し、5年間で10,000人のギャラリーを目指すプロジェクト。(HPより)

 

そのOUT IN JAPANプロジェクトの立ち上げに、当時はGapの立場から1年間支援していました。

 

 

1000人のスタイリング

私もOUT IN JAPANのプロジェクトで撮ってもらったのですが、1000人のLGBT当事者の人たちのスタイリングのお手伝いをしました。

 

通常のスタイリングだと、「これがトレンドで」とか「こうするとモテるよ」といった、世の中の流れを踏まえた提案をする場面が多くあります。

 

ただ、OUT IN JAPANでは、10年20年経っても色褪せない、その人の個性がしっかりと表現をされている写真を創ることが目標でしたので、「これがトレンドだから、どうぞ」というようなお勧めの仕方はできないんですよね。

 

そうなると、

 

「今日、この人はどういう気持ちでここに来ていているのか」

「どういう自分でありたいと思っているのか」

 

という、被写体となる皆さん一人一人にしっかり向き合うスタイリングでした。

 

会話の中での一緒にスタイリングを形作っていく。これは通常のファッションの接客をしている人でもなかなかできない経験でした。

 

 

「テレビの中の人」と言わせない

OUT IN JAPANプロジェクトでは、「テレビの中の人でしょ」と言わせないことが目的の一つです。

 

実際、OUT IN JAPANのコンセプト文でも、「日本の市井に暮らすLGBTの人たち」と書かれています。

 

そして、ほぼ全員のポートレートには各々のメッセージが添えてあります。

 

参加するに至った思いや、ポートレートを見てくれた人に向けたメッセージなど、いろんな思いを寄せてくれましたが、まさに今、日本に暮らしている人たちの生身の言葉が、LGBTが当たり前の隣人であることを伝えています。

 

また、OUT IN JAPANのキャッチコピーとして、「カミングアウト・フォトプロジェクト」という言い方をしているものの、カミングアウトを推奨するのでは全くなくて、

 

「このポートレートを、メッセージを通じて、自分以外のLGBTにエールを送っている」

 

ことだと私は思っています。

 

可視化されたメッセージは何も非当事者に向けられたものだけでなく、声を上げられていない当事者にも届くものだからです。

 

 

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ショックだったある一言

約1000人もの方と接する中で、もともと知り合いだった、あるトランスジェンダー男性のスタイリングをした時は少し衝撃的だったかもしれません。

 

スタイリングする際、骨格に合わせることを意識しないと格好悪くなってしまうこともあります。

 

Gapってメンズライクなレディースアイテムの取り揃えも充実しているので、骨格に合わせて、レディースのセーターなども使ってスタイリングしました。

 

その方に「どう?」って鏡で見てもらうと、すごく喜んでくれて、その場で写真を撮っていたんですね。

 

それで帰り際にさらっと僕に、

 

「龍ちゃん。僕、50年生きてきて、ファッションが楽しいと思ったの生まれて初めてだよ。ありがとう」

 

って、さらっと言って帰られたんですね。

 

この言葉は洋服屋として、すごくショックでしたね。

 

「ちょっと明るい服を着ようかな」

「今日は暖かくなるから、これ着よう」

「春物は何着ようかな」

 

という日々の楽しみがファッションだと当たり前のように思っていたんです。

 

日々の生活の中で楽しめるのがファッションのはずなのに、その一方で、

 

毎日楽しくもないファッションが、明日も待っている…

 

そのことをわかっている生活、人生ってどうだったんだろうって思った時に…。

 

これは本当にショックでしたね。

 

自分が着たい服を着れていることが、自分らしさにどれだけ繋がっているのかということを痛感しました。

 

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きっかけは「格好良い」「素敵」

OUT IN JAPANプロジェクトを通じて、アートとかエンターテイメントの力ってものすごく大きいことも実感しました。

 

各々の写真を自分のSNSに投稿して、カミングアウトされる方もいらっしゃっていましたね。

 

カミングアウトとしての投稿のはずが、カミングアウトも何も、

 

「あの写真、すごく格好良い!」

「素敵!」

 

という反応がすごく多かったんです。

 

単に、「これは人権課題です!」という声の上げ方ではなく、「格好良い」「素敵」といった入口からLGBTのことを伝えていく

 

そういったアプローチが、マジョリティの中にある心の壁を壊していくきっかけになり得るのだということをOUT IN JAPAN を通じて学ばせてもらいました。

 

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>>Part2 お互い様の社会は、自分の中の多様性に気付くことから

 

永田龍太郎さん全インタビュー

【Part1】Gapから渋谷区へ。LGBTとOUT IN JAPANのこと

【Part2】お互い様の社会は、自分の中の多様性に気付くことから

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

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