親の高学歴が与える子供への影響とは?小学校の先生が事例で解説

2016.12.17公開 2019.05.16更新

子育てをしているあなたも、「子供が全然勉強をしなくて…」と、もしかしたら一度は感じたことがあるかもしれません。

 

「子供が勉強をするかしないか」というのは、いつの時代も親の悩みですね。小学校の先生である、私自身の悩みでもあります。

 

親が高学歴であればあるほど、子どもに対する期待も大きくなることはよくあります。

 

そこで今回は、親の高学歴と子供への影響には、どのような関係があるのかについて、私の経験も踏まえて、お話したいと思います。

 

 

親が出来ないこと

イギリスのことわざに、「馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない。」というものがあります。

 

これは、「馬を水辺まで連れていくことはできるが、そこで水を飲むかどうかは馬の意思と行動による。」という意味です。大人と子供の関係を考えるときに、よく引用されます。

 

高学歴の親とその子供に当てはめてみましょう。

 

「親は子供が自ら勉強するように環境を整えたりモチベーションを上げる手助けをしたりすることはできるけど、子供に無理やり勉強させることはできない。」となるでしょうか。

 

結局、勉強するかしないかの意思決定と行動のカードは、親ではなく子供自身が持っていると言えると思います。

 

 

高学歴な親と子供の事例

少し前の事例です。クラスにとてもよく勉強のできる一人っ子のA男さんがいました。両親共に都内の有名私立大学の出身で、大変教育熱心でした。

 

A男さんは親の期待を一身に受け、中学受験に向かってひたすら勉強をしていました。学校の休み時間も勉強をしていました。

 

しかし、中学受験の直前に体の不調が続きました。クラスの友達との会話も攻撃的になり、次第に孤立するようになりました。心の不調も目立つようになりました。

 

ある日、体育の授業が終わった後に、A男くんは突然大声で泣き始めました。理由を聞くと、

 

「親に無理やり勉強させられて辛い。中学受験に失敗したら、親は自分を見放すのではないかと不安になる。」と話してくれました。

 

この時のA男さんは、親に無理やり水辺に連れて行かれ、水を飲まされていたのかもしれません。

 

 

親が理解しておきたいこと

では、親ができることとは何でしょうか?

 

リビングや子供部屋に、さりげなく本を置いておくことかもしれません。

 

博物館や美術館で、本物に触れさせる経験かもしれません。

 

スポーツの試合やミュージカルの観劇かもしれません。

 

塾や習い事も環境の一つでしょう。

 

日々の出来事を、親子でざっくばらんに話せる雰囲気も大事なことと言えます。それでは、勉強のモチベーションを上げる手助けとは何でしょうか?

 

まずは私たち大人自身が、

 

「そもそも、親と子供の人格と人生は別である。」

「子供が、親と同じ人生や幸せをたどるとは限らない。」

 

ということを理解することでしょう。

 

世界はとても広いです。

 

「この子は、私の経験したことのない人生や幸せをたどる権利がある。」と理解することで、我が子の可能性が大きく広がると感じられるかもしれません。

 

 

子供が好きな大人とは?

学歴を通して、あなたが手に入れたものはなんでしょうか?

 

それは「高学歴」という肩書だけではないはずです。目標に向かって努力する強い心であったり、結果が出なくて落ち込んだ悔しさではないでしょうか?

 

夢や希望かもしれません。また、多くのかけがえのない人との出会いであったり、サークルやボランティア活動などの貴重な経験であったりしたのではないでしょうか?

 

私たち大人が、子供に語れることは

 

「お父さんは地理が好きだったから、生まれて初めての海外旅行はとても感動したよ。」

 

「お母さんは大学で親友との出会いがあり、未だに仲良くしてるのよ。」

 

「勉強が大変なときもあったよ。でも自分の夢が叶ったときに、その大変さは吹き飛んだよ。」

 

というような、「生き方」や「在り方」です。

 

子供は、自分の身近にいる生き生きとした大人の姿に、近い将来の自分の姿を重ね、目標を定めていくことがあります。

 

子供は、人生や生活を楽しんでいる大人が大好きなのです。

 

 

おわりに

「馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない。」ということわざを借りながら親子の関係についてお話してみましたが、いかがでしたでしょうか?

 

最後にこのような話を。

 

全く勉強をしない子供をもつお母さんがいました。

 

そのお母さんは国語が得意だったので、ある日、漢字検定の勉強を始めたようです。

 

楽しそうに漢字検定の勉強をするお母さんを見て、全く勉強をしないその子供が、自然と勉強を始めたそうです。

 

別の話です。都内の中高一貫校を受験した女の子が、合格発表後にこのようなことを言っていました。

 

「私は自分で受験を決めた。親は勉強しろとはほとんど言ってこなかった。ただ、私の体調をずっと気遣ってくれた。そして何も言わずに、私の合格と頑張りを見守ってくれた。受験には落ちたけど、親のありがたみがとてもよくわかって嬉しかった。だから先生、私は受験をしてよかったです。

 

全国の親と子供に、大きなエールを送ります。

 


img_1691【執筆者】

鈴木茂義 小学校 非常勤講師

鈴木さんのインタビュー記事はこちら

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  • 本記事は2016年12月17日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。