希死念慮を薬以外で和らげる方法とは?心の専門家が解説

2016.12.18公開 2019.05.16更新

死にたい気持ちは生きているからこそ

希死念慮は、実は多くの人が一生に一度以上感じることのある症状です。

 

しかし、希死念慮を感じたからと言ってすべての人が自殺してしまうということはなく、一時的に「死にたい」と思っても時間が立てば気持ちが回復して、前を向けるようになります。

 

長いこと希死念慮が続いてしまったり、何度も繰り返してしまう人は、「辛い」という気持ちを一人で抱え込んでしまっているのではないでしょうか。

 

または、いつでも自分の失敗や嫌だったことばかりを思い返してはいませんか?

 

そうするとどんどん心が疲れて余裕がなくなってしまいます。

 

心当たりのある人は、少し考え方を変えてみましょう。

 

希死念慮は「生きているからこそ生じる」感覚なのです。

 

失敗して落ち込んだり、「死にたい」と思うのは、生きているからこそ生じる感覚なのです。

 

同じように、「楽しい」や「愉快」といったプラスの感情も、生きているからこそ生じる感情です。

 

「死にたい」と思うことは「生きている」ということです。

 

そして、「生きている」ということは、「楽しい」を感じられるということでもあります。

 

今「楽しい」と思えないのは、心が疲れてネガティブになってしまっているからです。

 

希死念慮は心が疲れていることを知らせるサインなのです。

 

よって、希死念慮に陥ってしまったら、心を休ませ、リフレッシュさせることで「死にたい」気持ちを和らげることができると考えられます。

 

 

疲れた心を癒やすには?

疲れた心を癒す方法は人それぞれですが、希死念慮を持っている方はその多くが人とのつながりを断ってしまいがちです。

 

ネガティブな気分の時は、人と話すのが億劫に思えてしまいます。

 

しかし、希死念慮を持ったまま人とのつながりを絶ってしまうと、悩みや愚痴を吐き出せる場所がなくなってしまい、ネガティブループにはまってしまいます。

 

時に誰かと会話をすることは、それが他愛のない雑談であっても心を軽くする効果があります。

 

信頼のおける誰かに話を聞いてもらうこと、落ち込んでいる人に声を掛けること。

 

これらは簡単なようで難しいですが、自殺予防などの効果としても期待できます。

 

 

体をほぐして心を癒やす

しかし、中には「人と話すことがよりストレスになる」という方もいるかもしれません。

 

そんな時には、無理せず別の方法で心をリラックスさせましょう。

 

散歩やヨガなど、体を動かすことや、マッサージを受けて体の緊張をほぐすのもいいかもしれません。

 

体が緊張していると、心も連動して緊張してしまい、疲れがたまりやすいのです。

 

少し専門的な心理療法では、自律訓練法というものもあります。

 

自分が無理をしなくてもいい方法で心と体をリラックスさせ、十分な休息をとることができれば、薬に頼らなくても希死念慮を和らげることができます。

 

ポイントは「無理せず心の疲れを癒す」です。

 

 

さいごに

希死念慮を感じている状態は、気分が暗くなりがちで生きづらいと感じてしまい、さらに希死念慮に陥るという悪循環を呼んでしまいます。

 

日頃のストレス発散だと思って、好きなことを目一杯したり、長めの休息をとって心の疲れを癒してあげましょう。

 

ただし、本当に無理は禁物です。

 

無理に「リラックスしなければ」と考えると余計に心が疲れてしまいます。

 

また周りの人も無理に話を聞き出そうとしたりせず、本人のペースに合わせて見守ることが大切です。

 

希死念慮は心が疲れていることを伝えるサインです。

 

「死にたい」というのは「休みたい」ということなのです。

 

このサインを見逃さず、心身共に休ませてあげてください。

 

あなたの心と体が元気になるよう、お力になれれば幸いです。

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【監修】杉山崇

臨床心理士

神奈川大学人間科学部 教授

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2016年12月18日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。