「スポーツを一生懸命できる才能があることは忘れないで」スポーツ精神科医の想い
「練習に行くのが怖い」
「本番になると体が動かない」
「試合の空気を感じると気持ちが悪くなる」
懸命に練習を積み、結果をしっかり出す人たちがいる一方で、がんばっているからこそ、大きなプレッシャーの中で苦しんでいる人も、スポーツの世界では数多く存在します。
そんな苦しみを、そっと取り除くお手伝いをしているのが、“スポーツ精神外来”を設立された岡本先生。選手の悩みをじっくりと聞き、前に進めるようにサポートしています。
スポーツ精神外来ってなに?どんなことをしてくれるの?どんな症状の人が受診するの?
そんな疑問に、詳しくお答えいただきました。
【岡本浩之(おかもと ひろし)】埼玉県「北本心ノ診療所」の院長。中学、高校、大学、社会人時代に、自身も4回のうつ病を経験。マラソン選手を志していたときに、心身の不調でスポーツから一時遠ざかる。自身の経験を活かし、同じように心の不調に悩むスポーツ選手をサポートするためにスポーツ精神外来を設立。
〈インタビュアー くまのなな〉
「スポーツ精神外来」ってなんですか?
プロ・アマなど、スポーツのレベルは問いません。当病院では、病名がはっきり付く、病気の一歩手前の方を診察することが多いですね。
当病院では、そういった方の治療もお受けしているんです。もちろん、病名が付く方が受診できないわけではありません。
結果的に病名が付かない方であっても、じっくり心の不調を聞くようにしているということですね。選手の話を詳しく聞いて、あまり薬は出さずに治療を進めることも多いです。
本人が受診できない状態のときに、ご家族の方のみでご相談に来るケースもありますね。
「診察に来れないほど、身動きが取れなくなっている方もいるんです」
例としては、小学生のお母さんだけ受診した際に、問題を整理するお手伝いをすることなどですね。特に小学生や中学生のころは、ご両親との関係がお子さんのメンタルに大きな影響を及ぼすことも多いので…。
解決の糸口を一緒に探すだけで、お母さん側が落ち着いてくれることもあるんです。
精神科に行くか悩むレベルだと、ご自身できっといろいろ調べた後かと思います。コーチやご家族に相談して、それでも解決できなかった場合もあるかもしれません。
いろいろな解決策を試す中のひとつとして、重くとらえずにスポーツ精神外来を使っていただけたらと思います。
その上で、ご本人が競技をどれくらいやりたいのかを、しっかり確認するようにしています。もちろん、競技をやりたいかと聞いたら、やりたいと言う方が多いんですけど…。それが本心から出た願いなのか、そう言わざるを得ない状況なのかを把握したいんです。
それによって、「競技をやめる」選択肢を提示することができるので。
ただ、競技を続けるしか道がないと思い込んでいるからこそ、視野が狭まって苦しんでしまうこともあるので。あくまで選択肢のひとつとして、「やめる」道もあると知ってもらう程度です。
あとは、「なんのためにスポーツをしているのか」を、選手自身に考えてもらうこともありますね。
選手が、「このスポーツがやりたい!」と思ったときのことを振り返ってもらって、「じゃあ、いまスポーツをやっている理由は?結果と同じくらい、大事なものってなんだろう?」を考えてもらう。
それによって、結果が出ないことでガチガチに固まっていた気持ちがほぐれることもあるんです。
初診では、選手の方が抱えている問題を整理して、それに対しての解決策を一緒に考えていくことが多いです。
できないことがある中で、できることはなんだろう?と探していくんです。
小さなことから一歩ずつ、スモールステップですね。
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2019年11月1日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。