妻が育児で情緒不安定に…限界かも…夫はどうすれば?子育て中の臨床心理士が解説

2020.06.21公開 2020.06.25更新

情緒不安定な育児ママへの3つの接し方

近藤
情緒不安定な状態のママへの接し方で大切なポイントはどんなところにありますか?

まずは否定をしない、まるっと聞くこと

情緒不安定な状態になってしまっていると、どんな言葉をかけられても自分が否定されているような気持ちになってしまったりしてしまいます。

 

これは≪心の視野狭窄≫と言われるもので、どうしても違った観点で物事を見ることが難しくなってしまい、客観的・冷静な判断が出来なくなってしまうのです。

 

その状態から抜け出すためには、

・まずはひとしきり気持ちを吐き出すこと

・否定されずに受け止めてもらえること

といったことが大切なのです。

 

時にあまりにもネガティブな言葉が出たり、パパを傷つけるような言葉が出てきてしまうかもしれません。

 

ただ、その瞬間に反論してしまうと、余計に悪化してしまうため、まずは「聞くこと」に集中出来ると良いと思います。

 

パパ自身が感じたこと、思ったこと、考えていることもきちんと伝える

「自分だけが頑張っている」

「パパは子どものことなんてどうでもよくて、仕事が大事なのだ」

 

などの考え方は、どうしても育児中のママに浮かんできてしまいやすいものだと言われています。

 

もちろん、頭ではそんなことはないとわかっているのですが、情緒不安定になると、そのような思い込みが強くなってしまうのです。

 

そうならないためにも、

・日ごろから、ちょっとした子どもの成長について話すようにする

 

・パパ自身が育児について気づいたこと、感じたこと、面白かったことなどをママと共有する

などを実践してみると良いかと思います。

 

ハグをする、マッサージをするなど「母親」ではない時間を過ごせるようにしてみる

ママはどうしても24時間「母親」の役割を荷卸しすることが難しく、「しっかりしていなければ」「甘えてはいけない」と頑張りすぎる傾向にあるとされています。

 

ちょっと時間が空いたときに、マッサージをしてあげたり、ハグをするなど、「甘えられる体験」が出来ると、息抜きになると思いますよ。

 

ただ、性的なニュアンスになると途端に負担になってしまうママもいるので、性的にというよりは「親的に」といったようなケアとしてするようにしてみてくださいね。

 

また、ママのタイプによってはスキンシップを拒絶する方もいらっしゃいます。

 

まずは「肩、マッサージでもしようか?」など声をかけることから始めて様子を見ることがおすすめです。

 

育児ママの情緒不安定を予防するには?

近藤
情緒不安定な状態を未然に防ぐために夫ができることを教えてください。

まずは、パパが一人でも子守りが出来るように(例えば出かけるときの支度、おむつ替え、食事の様子など)、ママがどんなことをしているのかを良く観察することがおすすめです。

 

そうすると、ママがいかにたくさんのことを考えて、タスクをこなしているのかなど、色々なことに気が付けるのではないかなと思いますよ。

 

そうして感じたことなどを積極的に伝えてあげましょうね。

 

感謝の気持ちや褒める言葉など、ポジティブな声かけはきっとママにとっても嬉しいと思いますよ。

 

また、ママが一人で過ごせる時間を作れるようにお子さんとの一対一の関係をしっかりと作っていきましょう。

 

つい「子供を見ているから出かけてきていいよ」と言いがちですが、「子供と出かけて来るわ」のほうが嬉しいママもいますので、どちらが良いかはママの希望もぜひ聞いてみてくださいね。

 

そして、可能であれば夫婦二人だけの時間を作ることもおすすめです。

 

「母親ではない時間」は、ママのリフレッシュにとっても、パパのリフレッシュにとっても非常に大切だと思いますよ。

 

後は、「大きな長男」にならないように、なるべく自分のことは自分で出来るようにすることも良いと感じます。

 

服の脱ぎっぱなし、荷物の出しっぱなしなど、ちょっとしたことがママのイライラに繋がってしまうため、出来る範囲で構わないので心掛けるようにすることがおすすめです。

 

情緒不安定で病院に行くタイミングとは?

近藤
情緒不安定な状態で病院に行ったほうが良いタイミングや目安があれば教えてください。

・睡眠の問題(寝付けない、寝てもすぐに目覚めてしまい、再度寝付くことが出来ない、起きられないなど)

 

・食欲の減少or増加

 

・短期間での体重の急激な減少or増加

などは、体や心からのSOSのサインと言われています。

 

また、何もないのに涙が出てしまうことや、ネガティブな考え方が頭を占めてしまい、何を伝えても改善していかないこともチェックポイントとしては大きいと思います。

 

それらの状態が2週間以上続いているようであれば、積極的に受診をすることをおすすめします。

 

ただ、ママからするといきなり受診を勧められることで責められている気持ちになったり、否定されている気持ちになってしまう可能性もあります。

 

「自分が心配だから」「どうしたらいいか教えてもらいに行きたい」といった文脈で伝えられると良いですね。

 

また、情緒不安定な真っ最中にお話するよりも、少し気持ちが落ち着いている状態のときにお話したほうが、パパの気持ちも伝わりやすいと思います

 

さいごに

今回は、育児ママが陥りやすい情緒不安定さをテーマに、ママさん臨床心理士に解説していただきました。

 

仕事中心のパパであっても、日頃の生活でのちょっとした言動の積み重ねによって、ママの心を癒やすことにも繋がります。

 

ストレスフルになりがちな育児をママとパパが協力しあうことで、よりよいメンタル状態を保っていきましょう。

 

【関連記事】

>>育児中の妻を救うストレス解消法10選!育児中の臨床心理士が夫視点から解説

>>育児中の妻からの文句、愚痴、八つ当たりの元凶になるNGワードと簡単言い換え術

シェア
ツイート
ブックマーク

古橋さき

臨床心理士/公認心理師/保育士

心理系大学院修了後、臨床心理士資格を取得。医療、教育、産業領域など様々な機関にて、子ども(発達障害や不登校など)から大人(精神疾患、自分の生き方、就労支援など)まで幅広い年代への支援活動に従事。自身の出産、育児体験を契機に保育士資格、公認心理師資格を取得。現在は教育現場や相談機関にて子育て支援や親子関係、夫婦関係の問題などを抱える方の支援を行っている

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2020年6月21日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。