【オンラインカウンセリング】効果や活用ポイントを臨床心理士に教えてもらいました
目次
オンラインカウンセリングの効果
テキストによる相談においても効果を示している先行研究が出ています。
・チャット相談でも電話相談でも事後において、気分が良くなる(Fukkink,2009)
・チャットによる認知行動療法を実施し、統制群と比較したところ介入群が有意に改善(Kessier,2009)
・即時的なチャットによるカウンセリングの効果検証研究をレビューしたところ、いずれも効果を肯定している(Dowing,2013)
例えば、Adam Grantによると、表出型の執筆行動を日常的におこなっていると、気分や幸福度の向上、ストレスレベルの軽減などの効果があると言われています。
・書くことで気持ちが客観視できたり、不安を漠然とした状態のままにせずに、具体的に把握できるようになって、気持ちを切り替えることができるようになりました。
・自分の思考を整理することができて、自然と気持ちも落ち着いてきたように思います。
・これまではただ未送信のメールフォルダに私の思いをため込んでいましたが、それを受け止めてくれる人がいることがこんなに安心できることなのかと感じています。
・普段はただ落ち込んでいましたが、書くことで考えをじっくりとまとめることができるように感じました。
まとまらなかった時には、質問をしてもらうことで自分の中で考えが広がることがあり、まとまらなくてもいいんだという気持ちにもなり、変に緊張しなくても良いんだと安心することができました。
(※ご本人から同意をいただいている感想となります)
これを心理学では「メタ認知」と呼びます。
そして、相手との距離感を冷静に捉えることができたり、その状況に合わせて柔軟に物事が対応できるようにもなると言えます。
こうしたメタ認知を磨くことができるのも書くことによるカウンセリングの効果でもあり、メリットと言えるのではないでしょうか。
「返事が欲しいこと以上に、自分の想いを文字にしたものを誰かが読んでくれる(受け止めてくれる)ところに価値があるんです」
と話す人もいらっしゃいました。
Zoomなどを使ったカウンセリングについての効果はどうなんでしょうか?
ビデオカウンセリングについても、対面での相談との効果は同等といった研究(例えば、Psychotherapy via internet as good as if not better than face-to-face consultations(University of Zurich,2013))は複数出ています。
・オンラインセラピーの効果量の平均は0.53で伝統的なface-to-faceと同程度(Barak,2008)
・対面式の治療とICBTで比べると、ほとんどの場合、効果は同等である(Cuijpers,2002)
・うつ病に対して、ICBTと問題解決法は、同程度に効果的である(Warmeredam,2008)
・ICBT、対面式CBTのいずれもパニック障害の症状と関連の問題に有意な改善が見られた(Kiropoulos,2008)
「案外、普通のカウンセリングだった」
と感想を話される人も少なくないと感じています。
個人がエンパワーメントされたり、ロールモデルを得られたりする一方、健康状態が悪化したといった研究もあります。
もちろん、全く問題がないというわけではありません。
例えば、オンラインでグループ療法を行った場合に、個人がエンパワーメントされたり、ロールモデルを得られたりする一方で、健康状態が悪化したといった研究もあります。
むやみにオンラインを勧めるわけではなくて、今ある課題を整理していき、今後に生かしていく姿勢を大事にしていきたいですね。
対面・オンラインカウンセリング、それぞれの違い
とはいえ万能な手段ではないと思うので、一長一短を詳しく教えていただけますか?
一方で、文章に落とし込む作業を難しく感じる人も一定います。
一方で、電話や対面などのように、その場のやり取りが求められないプレッシャーがないのはいいですね。
自分のペースで自分の思いを言葉にしていけるので、本当に伝えたいことを丁寧に考えて伝えられるのはメリットと言えます。
そういった場合、まずはテキストカウンセリングから始めてみても良いのではないかと思います。
顔を合わせずに、声を交わすこともなく、相談したいと思った時にすぐに相談を送ることができることにメリットを感じる人も少なくないようです。
カウンセラー側も部屋を用意する必要がないことなども含めて、対面カウンセリングよりも安価に設定していることが多いです。
こうした意味でも手軽に使いやすい利便性があるように思います。
実際に、相談のやりとりを見返すことで、「『カウンセラーに話したら、こんなふうに返してくれるんじゃないか』と考えるようになり、落ち着きやすくなってきました」などを話す方も少なくありません。
カウンセラーとのやりとりが「お守り」のようになる人もいらっしゃるようです。
テキストでのカウンセリングに興味のある人は、自分が相談しやすいのはどちからを考えてみると良いでしょう。
オンラインでマインドフルネスを行うメリットは?
「マインドフルネスに興味はあったけど、始めるきっかけがなくて…」
といった人にも、手軽にマインドフルネスを体験いただける良い機会になっていると感じています。
「隣の人はどうやってるんだろう…」
「こちらを見られていないか…」
と、周囲の目が気になって集中ができない人が思っている以上に多い印象で、「自宅でよかった」との声は多いですね。
言われてみれば、緊張しないわけがないですよね。
オンラインなので、頑張って外出して、緊張しながらマインドフルネスを体験して、帰りの電車が混んでて一気に現実に戻される…みたいなこともないのが良かったです。
自宅でマインドフルネスを体験して、終わったらそのままゆっくり過ごせたり、寝られる体験はすごく心地よかった。笑
ただ、マインドフルネスも対面と比べて、オンラインでもきちんと効果があるのか皆さんご心配な点かと。
オンラインでもきちんと、ストレス・不安・うつなどに効果があると示されているので2)安心して受講していただければと思います。
例えば、マインドフルネスに参加後に、自分の感覚を参加者とシェアすることで、よりストレスが下がったり、マインドフルネス度があがったりするそうなんです5)。
実際に、みんなそれぞれ悩みや苦悩を持っていることをシェアしながら、その仲間と一緒にマインドフルネスを体験する自体もケアにつながっている印象があります。
マインドフルネス、注意点や継続のコツは?
また、しんどくなったらすぐに中断するなども必要です。
ですので、自宅で行う際には安心した空間をつくった上での受講をおすすめします。
マインドフルネスってただリラックスできるものではなくて、自分の嫌な感覚に出会うこともあるんです。
正直、気が付きたくないことに気が付いちゃうこともあり得ます。
「リラックスできるもの=マインドフルネス」ではないこともお伝えしておきたいですね。
それから、マインドフルネスの効果を実感するためには、ある程度継続して取り組む必要があると聞いたことがあるのですが。
ただ、マインドフルネス自体はおおよそ8週間続けていただくことで、ストレス低減などの効果があると言われています。
「できなくてもいいよ」とお伝えしてしまうとなかなか習慣化しづらいため、受講者さんへの伝え方としては「毎日続けましょう」。
なのですが、実際は7,8割の実施度でもポジティブな効果は得られるようです。
とは言え、習慣化できるのがベストだと思うのですが、コツはありますか?
毎日同じ時間にやることで、毎日の変化にも気が付きやすくなるメリットがあります。
あとは定期的にプログラムに参加して、インストラクターや仲間と会う機会を作ることもモチベーションになるのではないでしょうか。
効果的な「書く」方法と注意点
その中で「書く」が一つのキーワードに出てきたと思います。
そこで、より効果的に書くコツなどあれば詳しく教えてください。
その出来事に何も感じない人もいれば、必要以上に自分のことだと思って受け止めてしまう人もいるでしょう。
カウンセリングの中で大事なのは、上司が怒った出来事よりも、上司が怒ったことによってその人がどのように感じたかなんですね。
自分の感情を捉えるのが苦手だったり、ついつい「大丈夫」と思って我慢して、感情をため込んでしまったり。
日頃の何気ない行動やふとしたときに浮かんだ考えをよく観察して、自分の考えや行動の癖をとらえることで自己理解が深まっていきます。
自分が好きな言葉や苦手な言葉、しっくりくる言葉や合わないと感じる言葉を丁寧に見つめる作業は、自分の感情を丁寧に見つめる作業にも繋がっていきます。
例えば、怒りと一言で言っても、激怒、おこ、激おこ、憤怒など様々あります。
最初のうちは、「怒りレベル5」「悲しみレベル2」とか数値を合わせてみても良いと思います。
また、問題を文章化してカウンセリングなどで対話することで、新たな気づきが促進されやすくなりますよ。
バーっと書き出してみて、落ち着いてきたら関係図みたいに言葉と言葉をつなげてみたり。
できたものをみると「これが自分か」と客観視できるので、特に考え事をしやすい人にはおすすめです。
どんな方法なのでしょうか?
ポイントは手を止めないことで、「うーん、出てこないな。あと1分どうしよう」と思ったらそれも書く。
強引にも感じますが、あれこれ考えて書き出せないよりはいいかもしれませんね。
きれいな紙や手帳だと書きづらいこともあるし、人に見せるSNSだと考えてしまう分、自分の本当の考えが出てきにくかったり。
「上手に書かなくちゃ」の義務感で必要以上につらくならないためにも。
ちなみに、書いてもすっきりしなかったり、逆に自己嫌悪する場合もあり得ますよね?
「それって何だろう」
「これからどうしていくか」
を一緒に考えていくのもカウンセリングの大切な役割でもありますので、ぜひ活用してもらえたらと思います。
さいごに
中でも、コロナ禍でオンラインのカウンセリングニーズが増える一方、対応するカウンセラー側のご苦労も垣間見えました。
2017年夏に⻑野県などでLINE相談が話題になってから、翌年以降の厚労省の取り組みとして、LINE相談の取り組みがされるようになりました。
2018年3月の自殺予防月間では、ともだち登録者数は6万人を超え、期間終了後も友達追加がされ続け、9万人を超えたそうです。
「オンライン臨床では●●は不得手な部分だけど、△△は利点だから、そこを生かしていくには、どうしていくのがいいか」
と知見を積み重ねていけると良いのではないかと思います。
制約がある中でも、うまく時間を使いながら支援を継続できる仕組みは、心理職の働き方改革にもなると思っています。
中村洸太さん:臨床心理士・精神保健福祉士。NPO法人日本オンラインカウンセリング協会理事。心療内科・精神科クリニック、大学病院でのカウンセリング・検査・研究を経て、EAP関連企業における臨床・研究や、国立大学での相談や高等学校でのスクールカウンセラーを中心に幅広い分野での活動を行う|中村さんのホームページはこちら
藤本志乃さん:臨床心理士・公認心理師。大学院修了後、スクールカウンセリング、東京大学医学附属病院・日本赤十字社医療センターにおいてカウンセリング業務に従事。全人的総合的腎不全医療の推進・普及を目指し、患者の精神心理面に関する臨床・研究・講演活動なども行う。2020年にカウンセリングルームLe:selfをオープン|藤本さんの詳しい情報はこちら。
【藤本志乃さんの記事はこちら】
>>【カウンセリングの効果】8つの疑問に論文を用いて臨床心理士に答えてもらいました
【参考】
1) Wolever R. Q., Bobinet K. J., McCabe K., Mackenzie E. R., Fekete E., Kusnick C. A., et al. (2012). Effective and viable mind-body stress reduction in the workplace: a randomized controlled trial. J. Occup. Health Psychol. 17 246–258.2) Querstret D., Cropley M., Fife-Schaw C. (2018). The effects of an online mindfulness intervention on perceived stress, depression and anxiety in a non-clinical sample: a randomised waitlist Control trial. Mindfulness 9 1825–1836.
3) Ruby N., Julie J.C., John P.M., (2020). Online Mindfulness Training increases Well-Being, Trait Emotional Intelligence, and Workplace Competency Ratings: a Randomised Waitlist Control Trial. Frontiers in Psychology 11: 255.
4) Sancez-W., Emma E., (2019). Bringing awareness to the workplace. Investigating the impact of an online mindfulness intervention on work situation awareness: a randomised wait-list control trial. Surrey Reseach Insight 10.15126/thesis.00852215.
5) Ying M., Zaozhuo S., Angela F-Ying S., Xianglong Z., Xinghua L. (2018). Effectiveness Online Mindfulness-Based Interventions on Psychological Distress and the Mediation Role of Emotion Regulation. Frontiers in Psychology. 9: 2090.
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2020年10月11日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。