【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの回復の4ステップを具体例でご紹介
(質問)アダルトチルドレンにはどのような回復のプロセスがあるのでしょうか?回復の実感ってどんな感じなのでしょうか?
(回答)アダルトチルドレンの回復プロセスは個人差もあり、必ずしも同じステップを順番に進んでいくとは限りません。
回復に向けたステップを一進一退したり、時にはステップから脱線したりとさまざまな進み方をすることもあります。
ここでは、様々な回復プロセスの中から、アダルトチルドレンという考え方を提唱したクラウディア・ブラックという方が説明している、4つの回復ステップについてご説明します。
【関連記事】
>>【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの特徴…6つのタイプと機能不全家族との関係
>> 【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの生きづらさ…自分や他人を許せる7つの言葉
>>【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの克服方法。手軽に始められる5つの方法
>>【臨床心理士解説】アダルトチルドレン6つの性格タイプと18のチェックリスト
回復ステップ1~過去の喪失を探る~
これまでフタをしていた、子どものころから家族の中にあった問題や、自分の心に空いた穴「喪失」に気が付く段階です。
今までは、
「どこの家族にも多少は問題があるでしょ」
「この問題を口に出す(明確にする)のは家族にとってタブーだった」
と自分から触れることを避けていた部分に焦点を当てることになります。
この段階では、過去と改めて向き合うことで、当時から押し殺していた感情が生々しく湧き上がってくることを実感されるかと思います。
例えば、子どものころに父親が自宅でお酒ばかり飲んでいて、母親がそんな父親の言いなりになっていた、という家族の問題を改めて探るとき、これまでは押し殺していた、
「お母さんはお父さんのことばかり考えていて、全然私のことなんて考えてくれなかった」
「本当はお母さんに話をもっと聞いてほしかった」
「お母さんは私よりもお父さんの方が大事なんだ」
という母親への怒りや
「お父さんのせいで家にいても全然安心できなかった」
「お父さんなんて早くいなくなればいいのに」
という父親への想いを感じるかもしれません。
子どものころに本来ならば得られた、「安心できる家庭」「自分に愛情を注いでくれる親」を得られなかった、喪失感は怒りや悲しみの感情として感じられます。
このステップで注意したいポイントは、あくまでこれは自分の過去の喪失を知り、自分の(これまでないものとされてきていた)感情に気が付くための、自分のための作業だということです。
過去の親への怒りなどの感情をもって、親を責めるためのステップではありません。「どうしてあの時○○してくれなかったの!」と現在の親を責めるのはこのステップの趣旨から外れています。
ステップ22~過去と現在をつなげる~
ステップ1で過去について自分がどんな感情を持っているかに気づけたら、今度はその感情に振り回されずに、冷静に自分を振り返る番です。
子どものころから自分が体験してきた過去は、今の自己イメージにどんな影響を与えているか、今の人間関係のパターンにどう関係しているか、を見ていきます。
例えば、
子どものころから親に自分らしさを肯定してもらえず、いつも「お前はダメな奴だ」と否定ばかりされてきた過去が、「私はきっと何をやってもうまくいかない」という今のイメージに繋がっている、
といったことや、
親から無条件に愛されなかった過去が、「私は相手の役に立たないと好きになってもらえない」という考えに繋がり、過剰に相手に尽くしてしまったり、「ノー」が言えない現在の自分に影響している
といったことです。
こうして、自分の過去と現在をつなげていくことで自分自身の中にある課題に気づいていくのがステップ2です。
ステップ3~取り込んだ信念に挑む~
ステップ2で気が付いた、過去に影響を受けていた自分自身を苦しめる考え方や「信念」を別のものに置き換えていく段階です。
例えば、ステップ2の例で挙げた、「私は相手の役に立たないと好きになってもらえない」という過去から影響を受けた考えから生まれた「相手に尽くさなくてはいけない」という考えを、
「別に相手に尽くす必要なんてないんだ」
「嫌なら断っていい」
という考えに置き換えていく作業のことです。
自分で思い込んでいる、「しなくてはいけない」という考えを手放すステップでもあります。
長年の考えを手放すわけですから、最初は戸惑いを感じたり、なんとなく「こんなことしていいのか(例:人からの頼みを断っていいのか)」と罪悪感にも似た落ち着かない気持ちを感じることがあります。
ステップ4~新しいスキルを学ぶ~
ステップ3でこれまでの自分を生き辛くしていた考え方を手放したら、最後はこれまでと違った新しいスキルを自分に取り入れていきます。
例えば、これまで「ノー」と言えず、人に尽くしては辛くなっていた方が、ステップ3で「嫌なら断っていいんだ」と考え方に置き換えたとします。
そうすると今度は、「上手な断り方」というスキルを学ぶ段階へとステップアップしていく、といったことです。
これまで持っていなかった(活用できなかった)スキルを新しく学ぶ、ということですので、一人では新しいスキルを全く思いつかない、という場合も大いにあり得ます。
そんな時には自己流で四苦八苦するよりも、心の専門家を頼ったり、自分の課題を解決できそうな実践法の書かれた書籍を調べてみることをおすすめします。
さいごに
これら4つのステップは、アダルトチルドレンの方にとって簡単な道のりではなく、時間がかかることはもちろんのこと、一人で進んでいくのはとても難しいステップになります。
長年積み重ねてできたアダルトチルドレンの思考・行動パターンから抜け出し、回復の道を進んでいくためには、できれば安心できる専門家のサポートをつけることをおすすめします。
というのも、回復のステップを頭ではわかっていても、自分自身の行動や考えに当てはめるとなると客観的な気づきが無いと難しいからです。
信頼できる専門家と一緒にゴールを目指して走るような、「私は一人じゃない」という安心感をもってアダルトチルドレン回復への道を進んでみてください。
【関連記事】
>>【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの特徴…6つのタイプと機能不全家族との関係
>> 【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの生きづらさ…自分や他人を許せる7つの言葉
>>【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの克服方法。手軽に始められる5つの方法
>>【臨床心理士解説】アダルトチルドレン6つの性格タイプと18のチェックリスト
【引用文献】
〇西尾和美(1998):アダルト・チルドレン 癒しのワークブック、学陽書房
【参考文献】
〇C.L.ウッドフィールド(1997):内なる子どもを癒す―アダルトチルドレンの発見と回復、誠信書房
〇W.クリッツバーグ(1998):アダルトチルドレン・シンドローム、金剛出版
〇緒方 明(1996):アダルトチルドレンと共依存、誠信書房
〇岸見一郎、古賀史健(2013):嫌われる勇気、ダイヤモンド社
〇西尾和美(1997):アダルト・チルドレンと癒し 本当の自分を取りもどす、学陽書房
〇西尾和美(1998):アダルト・チルドレン 癒しのワークブック、学陽書房
〇アスク・ヒューマンケア:アダルトチルドレン――回復の4ステップ https://www.a-h-c.jp/article/7185(2023年4月閲覧)
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2023年5月10日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。