離婚相談でよく聞く「夫がアスペルガーかもしれません」の4つの共通点とは?

(質問)夫の行動や会話が理解できず、日々ストレスを感じています。アスペルガー症候群の可能性があるかもしれないと感じており、離婚を考えていますが、どう対処すべきか悩んでいます。


【回答する人】
小泉道子さん
15年間、家庭裁判所調査官として全国の家庭裁判所で勤務。2017年、民間調停の機関である家族のためのADRセンター離婚テラスを設立。現在は、離婚等の夫婦問題を中心に相談や夫婦間協議のサポートを行っている。

 

「夫がアスペルガーかもしれません」

私は、ADR(エー・ディー・アール:裁判外紛争解決手続)という法務省の認証を受けた民間の調停機関(離婚テラス)で、離婚問題を取り扱っています。

 

「エーディーアール・・・?」と思われた方も少なくないかもしれません。

 

ADRとは、「Alternative Dispute Resolution」(「裁判に代替する紛争解決手段」)の頭文字から来ています。

 

ADRでは、離婚協議はもちろん、金銭の貸し借りなどの民事全般、残業代の未払いやハラスメントといった労働に関することなど、第三者の仲介のもと、話し合いを行ったり、合意書を作成したりということがスピーディーに行えます。

 

【参照】ADRとは|かいけつサポート(法務省大臣官房司法法制審査監督課)

 

日本でも少しずつ普及が進んでいるADRですが、紛争解決に要する期間が短く、費用も低廉に抑えることができることが特徴であり裁判との違いと言えます。

 

私の運営する離婚テラスでは、その名のとおり、日々離婚をはじめとする夫婦問題の相談を受けたり、問題解決に向けた話し合いの仲介を行っています。

 

その離婚の話し合いの際に、よく聞かれるのが「私の夫はアスペルガーかもしれません。」という言葉なのです。

 

そこで今回は、離婚の話し合いの場において、妻から語られる「アスペルガーの夫の4つの特徴」についてお伝えしたいと思います。

 

相手の気持ちを読めない

「言わないと分からない」ということは誰にだってあります。自分以外の誰かの気持ちを理解するのは難しいものです。

 

ただ、アスペルガーの夫の「理解できなさ」はちょっとレベルが違います。

 

例えば、不妊治療をしてもなかなか子どもを授からず、体外受精に失敗した当日、前婚の子どもとの面会交流に出かけていった夫もいます。

 

また、仕事で失敗をして、慰めてほしくて相談した妻に対し、改善点を箇条書きでメールで送ってきた夫もいます。

 

体調が悪いので、夕飯を買ってきてほしいと頼んだら、自分の分だけ買ってきた夫もいます。

 

いずれも、夫に悪意はありません。

 

夫にしてみれば、決まっていた面会交流の予定をこなしただけですし、妻がまた失敗しないように善意でアドバイスしたのです。

 

夕飯もそうです。「私の分も買ってきて」と言われなかったので、自分の分だけ買ってきただけなのです。

 

こだわりが強い

アスペルガーの夫を持つ妻からの相談で最も多いのは「夫のこだわり」についてです。

 

これまで、本当にたくさんの”こだわり”を聞いてきました。

 

ある人は、夫の「睡眠」に対するこだわりに困惑していました。

 

夫は必ず23時に就寝するため、23時が近づくと夜泣きしている子どもをあやす妻に対し、「もう寝る時間だから、泣き止ませてくれないか」と怒るのです。

 

子どもの夜間対応で寝不足の妻は、腹が立つやら情けないやら、何とも言えない孤独感を味わいます。整理整頓のこだわりもあります。

 

良かれと思って夫の部屋を掃除したところ、激怒されてしまうのです。

 

他人が見ると雑多に置いてあるように見えても、本人にとってはこだわりが詰まった配置だったりします。

 

食に対するこだわりや生活のルーティンに関するこだわりもあります。

 

こうしたこだわりは、一度特徴を理解すればうまく対処できるようにも思えますが、実はそう簡単ではありません。

 

毎日繰り返されるからこそ、互いのイライラやストレスが溜まりやすいのです。

 

空気が読めないことからくる対人不和

我々大人は意識せずとも多くの場面で空気を読み、期待された言動をしていますが、アスペルガーの人はそれが苦手です。

 

そのため、しばしば「空気が読めない人」だと言われます。以下に、ある妻が語ったエピソードを紹介します。

両親の結婚50周年を祝って金婚式をやりました。両親はまだまだ健康でしたが、もう80代でしたので、健康なうちに親族で温泉旅行にでも行こうという話で盛り上がったんです。

 

そしたら、うちの夫、「僕は集団行動が苦手なので遠慮します」って言ったんです。その場がシーンとなって…。

 

私は両親に何だか悪いことをした気持ちになり、せっかくのお祝いの場で雰囲気を悪くした夫を恨むような気持ちになりました。

恐らく、夫にしてみれば、集団行動が苦手な自分が同行しても周囲に迷惑をかけると思ったのかもしれませんし、そもそも自分が自由に楽しめないことにお金を払いたくないという気持ちがあったのかもしれません。

 

しかし、周囲からは「場を乱す」、「冷たい」、「話が合わない」といったマイナスの取られ方をします。

 

こんな風に、妻の親族とうまくやってくれないとか、友達家族と集まっても場を乱すということが続くと、妻は夫と共に行動したくなくなってしまいます。

 

また、周囲の反応もお構いなしで、自分の興味関心のあることを話し続けてしまった結果、周囲がひいてしまうということもあります。

 

知的に高く威圧感がある

アインシュタインはアスペルガーだったと言われていますが、アスペルガーの中には知的に高く、天才肌の人もいます。

 

文系よりも理系に多く、人間とのコミュニケーションより、機械(パソコン)や数字を相手にしていたいタイプです。

 

こうした人が夫だとどうなるでしょうか。

 

自分が求めたことに相手が応じられないとイライラしたり、「お前はなぜできないんだ」と責めたりします。

 

また、相手を言い負かすのが好きな人もいて、モラハラ夫になりやすい側面があります。

 

こうした特徴を持つアスペルガーの夫と生活をしていると、妻が精神的に疲弊してきます。

 

一番近しい存在であるはずの夫と気持ちのやり取りができない辛さや孤独感があります。

 

また、周囲からは「真面目でいい夫」だと思われていたりもしますので、友人や親族にも理解されず苦しむのです。

 

このような状態をカサンドラ症候群(医学的な名称ではありません)とよんだりするのですが、誰にも相談できず、辛い気持ちを抱えている人もいるかと思います。

 

“円満”な離婚のために

多くの妻は、そんな夫との生活の辛さに「アスペルガー」という名前が付くことでほっとしたと言います。

 

なぜなら、夫が悪いのではなく、アスペルガーという発達障害を原因にできるからです。

 

また、原因が分かれば対策することもできます。

 

書籍やwebで「アスペルガーの夫は聴覚情報より視覚情報の方が理解しやすい」と書いてあるのを見て、家中に付箋を貼った人もいます。

 

しかし、いくら対策をしても、努力をするのは妻だけです。

 

夫は、妻の辛い気持ちを理解しないのはもちろんのこと、自分がアスペルガーであることすら認めないことがほとんどです。

 

そのため、夫との生活に疲れて離婚を決意する人もいますが、アスペルガーの夫との離婚はその特徴のため、困難を伴うことがあります。

 

例えば、いくら離婚したい気持ちを伝えても理解してもらえなかったり、知的に高く高圧的な夫との離婚交渉では、言い負かされて終わり、ということもあります。

 

そんな場合にお勧めなのが民間調停の制度であるADRです。

 

ADRは弁護士をはじめとした専門家が夫婦の話し合いをサポートする制度です。

 

民間の機関ではありますが、法務省が管轄しているという点で安心感もあります。

 

公平中立な専門家が間に入り、冷静に話し合いができることで、二人では感情的になって伝わらなかったことを伝えることができますし、言い負かされて自分の主張ができないということも防ぐことができます。

 

何より、夫婦だけでは話し合いができないけれど、弁護士に依頼して裁判所で争いたいわけでもないという意思表示になり、穏便・円満に話し合いを進めることができます。

 

アスペルガーか否かにかかわらず、心を通わすことができない夫婦関係はしんどいものです。おひとりでなやまず、ぜひ専門家に相談してみてください。

 

離婚テラス|家族のためのADRセンター

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小泉道子

臨床心理士・行政書士

15年間、家庭裁判所調査官として全国の家庭裁判所で勤務。2017年、民間調停の機関である家族のためのADRセンター離婚テラスを設立。現在は、離婚等の夫婦問題を中心に相談や夫婦間協議のサポートを行っている

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2024年6月26日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。