乳児期育児のポイント!声かけ、過保護と過干渉の違いを臨床心理士が解説

2018.07.17公開 2019.05.16更新

今回のコラムでは、前回に引き続き、乳児期の育児のポイントをいくつか紹介しましょう。

 

 

乳児期は親にとって苦行でもある

私は日頃から、「子どもの人生のどこかで、親として精一杯、手や心をかけなくてはならない時期がある」と感じています。

 

それは、「自分の時間と労力を全て捧げて、自分の意志を消して、子どものために生きる」くらいの覚悟で行う「苦行」のようなものだと思います。

 

この苦行を行うベストなタイミングが、この乳児期の1年半~2年間くらいだと思うのです。

 

しかし、最近は、親の前では空気を読み、手がかからないいい子を演じ、親がいないところではめをはずして、他人に迷惑をかけたり、本来なら親の前でやることを外でやろうとする子が増えてきているように思います。

 

このことは赤ちゃんでも同じです。

 

あまり泣かず、よく寝て、親に手をかけさせない空気の読める赤ちゃんが増えてきています。

 

これは、とても怖いことだと感じています。

 

 

乳児期の子育て、2つのポイント

親にとって、本来育児とは楽しさや希望だけでなく、手がかかるものであって、子どものために自分の全てをなげうって、自分を犠牲にして赤ちゃんに尽くすくらいの「苦しさ」を味わうものなのですが、

 

「人に迷惑をかけない、手のかからない『いい子』を育てよう、『いい母親』になろう」

 

という思いが強すぎて、ときに高圧的なやり方で、親の希望をこどもに叶えてもらおうとする「子どもに甘える親」が増えてきているのではないでしょうか。

 

・赤ちゃんが、しっかり泣いて自分の希望を伝えようと努力しているか、

 

・自分が親として、子どもの希望をしっかり叶えているか、子どもに甘えていないかどうか、

 

これらのことを一度振り返って、よく確認しましょう。

 

 

子供の自立心を育む声のかけ方

お母さんとの関係に安心していて、信頼感を感じられる子どもは、人見知りの時期を過ぎるころから、まわりの人たちも信頼できるので、手をさしのべられれば、その人のところにニコニコと行くことができます。

 

そして、ハイハイやヨチヨチ歩きが始まるとともに、自分の力でどんどん外の世界へと自分の好奇心に従って「冒険の旅」に出ることができます。

 

前回のコラムでご紹介した「基本的信頼感」が、子どもの冒険心・好奇心、さらには自立心を支えてくれるのです。

 

「お母さんがいつも見ていてくれる」と信じられるから、怖いときや不安なときは、すぐに振り返ることでお母さんを確認します。

 

そして、お母さんが見ていてくれたり、「大丈夫だよ」と言ってくれることで、安心してまた冒険の続きができるのです。

 

子ども達は不安と自立を繰り返して、どんどん自分の世界を広げていきます。

 

いつでも側にいて、子どもが振り返ったときは、「ちゃんと見ているよ」「安心して、やってごらん」という対応を心掛けましょう。

 

 

子どもの気持ちが主役の過保護

「何でも望みを叶えてあげる」というと「過保護」だな、と感じるかもしれません。

 

ただ、乳児期の育児においては、いくら「過保護」になっても過保護すぎることはないと思います。

 

「過保護」とは、こどもの甘えを満たしてあげること、望んだことをその通りに叶えてあげることで、子どもの気持ちが主役です。

 

 

親の気持ちが主役の過干渉

一方、「過干渉」とは子どもの望んでいないことをやらせすぎることです。

 

子どもではなく親が主役になっていることが多く、親が自分の感情を満足させるために、子どもに甘えているということです。

 

過保護になっても問題はないですが、過干渉では子どもたちは希望を叶えてもらっているという安心感は育ちにくいのです。

 

「子どもの希望を望んだとおりに叶えること」と「親の希望を子どもに叶えてもらうこと」は大きく違うということを理解しましょう。

 

 

基本的信頼感を育むために

乳児期の子ども達に一番身につけてもらいたい大切なことは、「基本的信頼感」です。

 

そのために親ができることは、

 

・赤ちゃんの望みを十分叶えてあげること

・たくさん抱きしめて安心を与えること

・たくさん話しかけたり、笑いかけること

 

これらのことを通じて情緒的な発達を促すことです。

 

育児というのは、本来「子どもに振り回される、手がかかるもの」で、「いい子・いい母親」を目指すことが目的ではないのです。

 

親としては、子どもに振り回される子育てという苦行を1年半~2年間も続けるのはとても大変なことでもあります。

 

しかし、この乳児期の苦しさやつらさは、子どもたちが健全に育っている証拠で、育児においては何一つ間違いではないのです。

 

 

周囲を頼ることも忘れずに

社会的に見ても、育児がやりにくい世の中になってきているという意見はたくさんあります。

 

確かに、人間関係が希薄になる中で、「他人に迷惑をかけないようにしなければ」と育児に対する社会的なプレッシャーは、大きくなってきているように思え、少子化に歯止めをかけようとしている流れとは逆行しているようにすら見えます。

 

しかし、どんなに複雑な社会になっても、親がぶれずに大切なことをしっかり守っていければ、人を信じ、自分を大切にできる子どもは育つと信じています。

 

それでも、育児がどうしてもつらく苦しく耐え難くなったり、孤独を感じさみしいと感じたり、子どもが「かわいい」と一切思えなくなることがあるかもしれません。

 

そんな時は、一人で抱え込まずに、躊躇せず旦那さんや家族、保育施設、ときには専門家を頼り、上手に息抜きをしながら、この大変な苦行を一緒に乗り越えましょう。

 

子どもの成長とともに、今の苦労が報われるときが必ずやってきます。

 

子どもたちが無事に次のステップへ上がっていったときの、言葉では言い表せない達成感・幸福感こそが子育ての報酬なのではないでしょうか。

 

【執筆者】

おやこ心理相談室 佐藤文昭 臨床心理士

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  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年7月17日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。