中学生の反抗期で勉強しない、屁理屈ばかり…親の対応を臨床心理士が解説
反抗期に勉強しない、屁理屈を言う心理
1.親の言う通りにやりたくない、なりたくない
反抗期の一番の目的は、親から離れて自分らしさを確立することです。
今まで通り、親から言われたことをそのまま実行していたのでは、親から離れることになりません。
だから、勉強しろと言われれば、勉強したくないし、ああ言われれば、こう言いたくなるのです。
特に、親から「ああしろ、こうしろ」と指示的・高圧的に言われて育ってきた子供は、支配力の強い親から自立するために、激しく反抗をする必要があります。
それでも親が支配を止めないなら、暴言を吐いてみたり、物を壊してみたり、暴力に訴えてみたりするのです。
それくらいやらないと、支配的な親からの自立は不可能なのです。
2.自分の力を試したい心理
親から離れて、自分だけの価値観を見つけるためには、親の言うこととは違うことを試してみる必要があります。
何かにつけて屁理屈を言うのは、
・自分の理屈や言語力を試してみたい
・大人の理屈に抗ってみたい
という気持ちの表れで、一種の対話力トレーニングです。
親からみればただの屁理屈でも、子供は親とは違う筋の通し方を試しているのです。
ここで上手くトレーニングが積めると、社会に出たときに柔軟に物事を受け入れられるようになります。
3.今しか見えない
親は自分も通ってきた道なので、「現実的にどういう結果になるのか」を心配したり、もっと効率的な方法を提案しようとします。
しかし、子供は先のことなど想像できず、今しか見えないことが多いからこそ、
「反抗すること」
「エネルギーを発散すること」
自体に意味があるのです。
親として、この視点の違いを理解しておく必要があります。
勉強しない、屁理屈を言う子供への対応例
それでは、実際の対応例を見ていきましょう。
勉強をしないケース⇒パラドックス(逆説的)な指示
中学2年生になったAくんは、家でまったく勉強をしません。
ゲームばかりで、まったく宿題も提出さず、成績もどんどん下がっているようです。
お母さんは「このままでは高校にいけなくなってしまう」と心配していました。
Aくんは、今までどんなに勉強しても、親に
「これでは足りない、もっと勉強しろ」
と言われてきたので、勉強をしないことで親に反抗しているようでした。
そこで、親が「勉強しろ」と言うことに反抗して勉強しないのですから、逆に
「勉強するな」
という指示を出すように伝えました。
お母さんは「『勉強するな』っていうと本当に勉強しなくなるのでは?」ととても心配していました。
しかし、今でも十分勉強しないので、違う方法を試してみる価値はあるということで納得していただきました。
そこでお母さんが「もう勉強しないでいいよ」と伝えると、なんとAくんは勉強するようになりました。
勉強しないというのは、母親の指示に従うことになり、反抗にはならなくなってしまった…ということから、Aくんは勉強をするようになったとも考えられます。
言い訳・屁理屈ばかりのケース⇒海外からの留学生として?
中学1年のBさんは、近頃お母さんに屁理屈ばかり言い、ひどいときは、暴言を吐くこともありました。
ああ言えばこう言うし、母親の容姿や仕草、やることなすこと、何から何まで馬鹿にしたような言い方をするので、お母さんも困っていました。
Bさんの心の中には、
「母親のようにはなりたくない」
という漠然とした気持ちがあり、自分でもその気持ちがコントロールできないようでした。
そこで、屁理屈や暴言を吐いたことを咎めず、過剰に反応しないように伝えました。
心の持ちようとしては、
「外国から言葉の通じない留学生がホームステイしている」
と想像しながら対応してもらうように伝えました。
屁理屈や、何かひどいことを言っても、
「そうね。本当に、お母さんもそう思うわ。」
「まったく、あなたの言う通りよ。」
「あなたの言うことも一理あるわね。」
「そんなこと言えるようになったの?」
「よくそんな言葉知っているわね!」
という具合に同調したり、留学生が新しい言葉を習得したように対応してもらいました。
お母さんは、最初こそおそるおそるでした。
しかし、だんだん慣れてくると、本当に娘の理屈に一理あると思えるようになってきて、いちいち怒ったり、心配するのが無駄に思えてきたそうです。
そのころには、Bさんもお母さんは何を言っても動じないことが分かってきて、反抗することがばかばかしくなってきていました。
あんなに「なりたくない」と思っていた母親の心の大きさを垣間見ることができたようでした。
さいごに
反抗期が始まると、親としては戸惑い、「何とかしなくては」と思うかもしれません。
しかし、子供の反抗期にはきちんと意味があり、大人になるための大切なプロセスなのです。
子供の成長の証である「反抗期」を受け入れ、親も一緒に成長していく必要があります。
今まで「心配だから」と手を出し、口を出してきたのなら、
子供を信じて、「待つ」「受け入れる」
といった対応を身につけていかなくてはなりません。
もし、今まであまり手をかけず、ほったらかしにしてきたのであれば、「愛情を注ぐ」ことを始めなくてはなりません。
子供だけでなく、親にとっても反抗期は自立前の大きなターニングポイント
であることを心に留めて子供と接してみてください。
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- 本記事は2019年5月30日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。