中年の危機による転職はNG?5つの視点から3つの選択肢を臨床心理士が解説

2019.08.07公開 2019.08.09更新

健康問題や容姿の変化、家族の巣立ち、親の介護などをきっかけに、自分の人生について不安や焦りを感じていませんか?

 

それは“中年の危機”かもしれません。

 

「自分の人生はこれで終わりなのか?」

「自分の夢は何だったのか……? 」

 

こういった悩みが頭をもたげた結果、

「会社を辞めて海外へ移住! 」

「昔から憧れていたけど家庭のために我慢していたあの仕事にチャレンジしたい……! 」

など、転職の意識が高まる方も多くいらっしゃいます。

 

今回は中年の危機と転職をテーマに、心理的メカニズムを詳しく説明していきます。

 

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中年の危機で転職したい3つの心理的特徴

40代を超えた頃から、「自分の人生はこれで終わりなのか?」といった後悔や焦りの気持ちが出てくることを特徴とする “中年の危機” 。

 

具体的には、

・仕事で今以上の展望が望めず、やる気が出ない
・以前はできたことができなくなるなど体力変化に焦りを感じる
・閉経や更年期症状を感じ、自分の年齢的変化を受け入れられない
・こどもが成長し、妻(夫)とどう過ごせばよいのかわからない

というように、多くの方が “人生の折返し” を意識した悩みを感じられます。

 

こういった心理を背景に、“夫婦関係” “仕事” “ライフスタイル” など、これまでの自分のあり方を壊し、“本当に自分が実現したかったこと” を追い求めたくなる気持ちが強くなっていきます。

 

その結果、離婚や転職、住環境を変えるといった行動の変化が起きるようです。

 

特にその行動変化が “職” に出る方は以下のような心理的特徴があると推測されます。

 

1. 親の期待を一身に受け、新卒時から同じ企業で働いている

これまでの人生において、

“自分のアイデンティティはなにか?”

“自分が人生で目指したいことはなにか?”

ということを考える機会が少ないほど、中年の危機の深刻度は強くなりがちです。

 

一度間違えたことをもう一度間違えたときは気づくのが早いですし、対応方法もすぐに思いつきますよね。

 

中年の危機とは “自分らしさというアイデンティティの再構築” を意味します。

 

したがって、これまでにご自身のアイデンティティと向き合ったことが少ないほど、混乱が強くなってしまいます。

 

特に、親の期待に応える職業を選んだ方は、40代を超えた頃から仕事に対する疑問を感じやすくなるようです。

「自分のやりたかったことは本当にこれなのか? 」

「もっと違う仕事のほうが自分の能力を伸ばすことができたのではないか? 」

といったように、現職に対する疑問を感じやすくなります。

 

2. 認知機能の低下により、仕事が難しくなってきている

50代半ば〜60代前半にかけ、認知機能の一部が徐々に低下することがわかっています。

 

こういった認知機能の低下の結果、“これまで普通にできた仕事なのに難しく感じる” “時間がかかるようになった” “能率が落ちた” というような自信の低下に繋がります。

 

その結果、「この仕事は本来の自分には向いていなかったのではないか?」という気持ちが高まり、転職を考える契機になりやすいようです。

 

3. 夫婦関係に悩みがあり、仕事を不満のはけ口にしている

中年の危機でテーマになりやすい “夫婦関係” 。

 

ここをうまく改善できないと、「自分の居場所は家庭にない」というような、心に穴が空いた状態が続きます。

 

その結果、自分の行動でコントロールできることが仕事だけに限られてしまい、転職といった行動化により心の充足を図ろうとする心理的変化が生じがちです。

 

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広瀬絵美

臨床心理士

心理学の大学を卒業後、広告会社にて勤務。退職後、心理系大学院修士課程を修了し臨床心理士資格を取得。精神科病院にて従業員のメンタルヘルスケア業務に従事する。また、国立研究所にて職場組織や妊婦さんのメンタルヘルスに関する研究にも携わっている。理想的な「ワークライフバランス」を目指し、研究と実践の両面から支援を行っている。一児の母。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2019年8月7日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。