「うつ病でも好きなことを諦めたくない」カメラが広げてくれた私の世界

常に感じていたのは、重い水の中で溺れるような息苦しさ

くまの
「家庭環境も悪かった」とのことですが、ご家庭のことでも悩んでいたんですか?
あるとさん
私が小さいときから母と父は仲が悪くて、よく喧嘩をしていました。2人の怒鳴り声を聞くのも、辛かったんです。
くまの
うわぁ…、それは本当に嫌だ。
あるとさん
親同士が怒鳴り合っている姿なんて、見たくないですよね。

 

結局離婚はしたんですが、母は再婚相手ともうまくいかなくて…。何回か、離婚と再婚を繰り返していました。

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「母と父が怒鳴り合っている声は、聞きたくなかったですね」

 

くまの
あるとさんは、お母さんと一緒に住んでいたんですよね。新しいお父さんができて、喧嘩して別れて、また新しいお父さんができて…を繰り返したってこと…?
あるとさん
そうです。再婚相手の家に、私と母が引っ越すことが多かったですね。

 

父や再婚相手は、私がうつ病だとは知らなかったと思います。「今日も学校に行かないんだなー」くらいは思っていたかもしれないけど。

くまの
そうなんですね…。中学を卒業してから、高校には進学を?
あるとさん
全日制の高校に進学しました。高校も、辛かったですね。

 

母には、「学校に行かなくてもいいけど、勉強はしっかりしろ」と言われていました。テストの点数が悪いと、叩かれたりすることもあって…。

くまの
え、お母さんに?
あるとさん
そうです。成績には厳しい人だったので。

 

高校の人間関係にもうまく馴染めなくて、苦しくて自分を傷つけてしまうこともありました。だんだん高校に通うことが難しくなって、最終的には退学して、高卒認定試験を受けたんです。

くまの
そうだったんですね…。
あるとさん
高卒認定試験に合格した時期に、また母が離婚をしたので、学費を出してもらうのが難しくて。アルバイトをしながら通えるところを探して、夜間の大学に進学しました。
くまの
えらい…!自分で生活費や学費を稼ぎながら、学校に行っていたんですね。大学生活は、振り返ってみてどうでしたか?
あるとさん
中学や高校と違って、いつも同じメンバーでいるわけでもないし、ずっと集団行動をしなくてよかったのは、とても楽でした。
くまの
そのときは、うつ病の症状は出ていたんですか?
あるとさん
出てましたね…。大学って誰かに強制もされないから、休もうと思えばいくらでも休めちゃうんですよね。だから、苦しいときは家に引きこもってしまって…。

 

でも、引きこもっているのもつらいんです。「このままじゃ駄目だ…」って罪悪感はあるのに、まったく起きられなくて。重い水の中で溺れているような息苦しさは、常に感じていました。

くまの
逃げ場がない感じですね…。
あるとさん
それでも、なんとか卒業はして。今は、都内で一人暮らしをしながら、広告関係の仕事をしています。
くまの
今は、うつ病の症状は落ち着いていますか?
あるとさん
今はそこまでひどくはないですね。ただ、梅雨の時期って症状が悪くなることも多いんです。湿度が高いから酸素が少ない感じがして、息苦しくなったり、動悸やめまいがしたり。
くまの
1年で1番、梅雨の時期がつらい?
あるとさん
そうですね。
くまの
うぅ…!こんな時期にインタビューを受けていただいてありがとうございます…!(インタビューは、7/20に受けていただきました)

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あるとさん
いえいえ(笑)
先月と比べると、今のほうがずっと楽なので!大丈夫ですよ。

 

引きこもっていた自分を、外の世界に連れ出してくれたカメラ

くまの
あるとさんは、撮影した写真をSNSでも発信していますよね。写真を始めたのは、いつ頃だったですか?
あるとさん
今から、2年前くらいですね。

 

前に勤めていた会社に、カメラが大好きな人がいたんです。その人と仲がよくて、カメラがいかにすばらしいか熱弁されて(笑)

くまの
熱弁!その方のお話を聞いて、興味を持った感じ?
あるとさん
そうですね。身近に写真を撮る人がいたのは大きかったです。

 

あとは、写真を始めたら、もっといろんなところに行けるかなと思ったんです。

くまの
ふむふむ。
あるとさん
本当は、もっと色々なところに行きたいと思っていたんです。でも、なにか理由がないと、家に引きこもってしまうことが多くて。そんな自分も嫌だったんですよ。

 

だから、外に出ていくきっかけになればいいなと思って。

くまの
すてきな理由ですね!カメラを始めて、生活は変わりましたか?
あるとさん
自主的に遠出をするようになりました。写真を始める前は行かなかったところに出かけたり、出かけた先で撮影に夢中になったり…。

 

とても活動的になったと思います。

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「写真を撮るために、出かけることも増えました」

 

くまの
とてもいい影響があったんですね。カメラを始めて、ご自身が救われたことってありますか?
あるとさん
ポートレート写真をご依頼していただいたときに、「初めて撮影してもらったけど、こんなに楽しいと思わなかった」と言ってもらったときは、本当に嬉しかったです…。

 

人からの言葉って、自分の励みにもなるから。

くまの
それは嬉しいですねー!やる気にも繋がりますよね。
あるとさん
本当にそう。あとは、撮影した写真を見て、自分で「いい写真が撮れたな」と思ったとき。自信になりますね。
くまの
心の病気になって、自分が楽しむことに対して、罪悪感を持ってしまう人もいるような気がしていて。そんな人は、どうしたらいいと思いますか?
あるとさん
きっと、自分を責めてしまっているんだと思います。

 

自分のできないことが目に付いて、「こんなこともできないのか」と思ってしまったり。「周りに迷惑をかけているのに、遊んでいいのか」と思ってしまったり。

くまの
そう思っている方は、多そうですね…。
あるとさん
でも、他人の声を気にしすぎると、自分が辛くなってしまうと思うんです。

 

無理に他人に合わせなくてもいいし、興味があることがあるなら「ちょっとやってみよっかな~」くらいの気持ちで始めてもいいんじゃないかなって。

くまの
あるとさんも、カメラを始めたときは、ここまでハマるとは思っていなかったですか?
あるとさん
思っていなかったです(笑)

 

最初は、メルカリで標準レンズが付いているものだけを買ったんです。撮影をしていくうちにのめり込んで、外付けのレンズを買うまでになりました。

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あるとさんが撮影した写真。

 

くまの
段階を踏んでいった感じなんですね!
あるとさん
そうです。ただ、症状が重いときは、外に出るにもつらいとは思うので…。無理のない範囲で誰かと交流しながら、自己肯定感を高めるのがいいのかなと思います。
くまの
あるとさんがカメラを始めたのも、職場の人と交流をしたからですもんね。
あるとさん
カメラのことを熱弁されたので…(笑)

 

ただ、自分がなにがしたいのか、なにが好きなのか分からない人も多いと思います。そういう人は、身近な人が楽しんでいることを見たり、話を聞いたりすれば、なにか発見があるかもしれないですよね。

くまの
確かに!誰かとお話をすることが難しければ、SNSをうまく使うとか?
あるとさん
そうですね!もしかしたら、私がカメラを楽しんでいるのを見て、カメラに興味を持ってくれる人もいるかもしれないし。

 

実際に、「カメラを始めたくなりました!」と言っていただけることもあるんですよ。

くまの
わ~~~!!それは嬉しい!
あるとさん
そういうコメントをいただけると、SNSで発信していてよかったなと思います。自分の投稿を見てくれているのは、やっぱり嬉しいですよね。

 

病気で苦しむ以外の時間も、大事にしてほしい

くまの
カメラを始めて、とても活動的になったんですね。
あるとさん
もちろん、カメラを楽しんでいる今でも、悩むことはたくさんあります。

 

どうやったらうつ病がよくなるとか、自分のやりたいことができるかとか…。試行錯誤しながら生きている感じです。

くまの
思い悩みながら、今まで進んできたんですね。うつ病の症状が出ているとき、あるとさんが意識していることってありますか?
あるとさん
気持ちが下がってきたら、「最近忙しいからな」「寝不足だったからな」と原因を探すようにしています。そしたら、「明日は早退して早めに帰るようにしようかな」「0時には寝るようにするぞ」って自分ができることを探す。

 

気持ちが下がっている理由と、それに対しての対策を自分なりに見つける感じですね。

くまの
おぉ、とっても分かりやすい考え方…!
あるとさん
最近は、撮影のご依頼をいただけることも多くて。とても嬉しいけど、やっぱりプレッシャーもあるんですよね。

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「人を撮影するときは、やっぱり緊張するんです」

あるとさん
けど、撮影日にはコンディションを上げていかなくてはいけないので…。冷静にできることを考えて、体調を整えています。
くまの
なるほど…。
あるとさん
あとは、うつ病の症状を否定しないことも大切だと思います。気持ちが苦しくなってしまっても、自分を責めたりせずに、「それだけ頑張っているんだ」と思うようにしています。
くまの
頑張っているから、苦しくなってしまうんですもんね。
あるとさん
そうなんですよね。

 

最近は、考え方ってとても大事だなと思っているんです。

くまの
どんな考え方ですか?
あるとさん
心を病んでしまう人って、とても頑張り屋さんで、優しくて、人の要望に応えようと思う人が多い気がしていて。

 

まずは、自分を大切にすることを意識してほしいなって思うんです。人に嫌われてもいいから、自分を労わって、褒めてあげることが大切だと思う。

くまの
その考え方ができたら、とっても気持ちが楽になりそうですね。あるとさんは、少しずつその考え方になっていったんですか?
あるとさん
昔は、私も自分を労わってあげられないことが多かったです。少しずつ、自分のことも考えてあげられるようになりました。

 

カメラを始めたことでも、「活動できている」ことが自信になって、自己肯定感が高まって、自分のことを考えられるようになって…。いい循環が起きているなと思います。

くまの
すっごくいい循環ですね…!
あるとさん
本当に、カメラを始めてよかったなと思います。病気になっても、好きなことを諦めたくなかったから。絶対に健康になってやると思っていたし…。もちろん、今でも。

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あるとさんが撮影した写真。

 

くまの
好きなことを諦めないあるとさんの生き方を見て、きっと、勇気をもらえる人もいると思います!最後に、この記事を読んだ方に伝えたいことはありますか?
あるとさん
私と同じうつ病の方も、双極性障害の方も、統合失調症の方も…。どんな病気の方も、とてもつらいと思います。つらくてつらくて、他のことは考えられないかもしれません。それでも、病気だけに囚われないでほしいです。

 

つらい中もがいて生きてるからこそ、病気に潰されてほしくない。

 

好きなものは美味しく食べてほしいし、好きな音楽はリラックスして聴いてほしい。病気で苦しむ以外の時間も、大事にしてほしい。

くまの
好きなものは美味しく食べて、好きな音楽を聞いて…。とても必要なことなのに、忘れそうになることもありますもんね。
あるとさん
私も、高校2年生のときに自殺未遂をしたことがあって。上京しても孤独だったら、本当に死のうと思っていたんです。でも、そこから素敵な人たちに会い、試行錯誤しながらも生きて、カメラも続けながら、今も楽しく生きています。

 

どうか病気に潰されないでほしい。つらいときは周りを頼って、楽しいことを見つけてほしい。

 

自分らしく、生きてほしいと思います。

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小学生からうつ病の症状に苦しんでいたあるとさん。もがきながらも、自分の好きなことを諦めずに、前に進んできたのだと思います。

 

インタビュー当日は、撮影をされる側になってきたそうです。自分で着たい制服を購入して、写真を撮ってもらったのだとか。カメラのことをお話しするあるとさんは、とっても表情豊か!目がキラキラしていて、本当に写真が好きなんだなぁと伝わってきました。

 

病気になっても、自分の好きなことを我慢する必要はないのだと、あるとさんの生き方で教えていただきました。どうか、ときには周りの声よりも、自分の心の声を優先して聞いてあげられますように。

あるとさんのTwitterはこちら>>@aruto_room
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くまのなな

ライター

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2019年8月9日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。