【臨床心理士解説】何もしたくない、ずっと寝てたいって病気のサイン?対処法は?
「何もかもが面倒くさい。何もしたくない…」「このままずっと寝ていたい…」
誰しも一度はそんなふうに感じたことがあると思います。
ただ、そうはいっても行動しなければならない!ということも多いですよね。
無気力感を改善するための対処法を考える時には、“その無気力感がどこから来ているのか?”を探ることが解決につながるヒントとなります。
そこで今回は、「無気力感」への対処法や病院に行くべきタイミングに関するセルフチェックのポイントについて臨床心理士に解説してもらいました。
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無気力感を改善する具体的な対処法
無気力になった頃に起きた出来事や変化を振り返ってみる
いつ頃から無気力になったかがはっきりしている場合、その頃に起きた出来事や変化を振り返ってみてください。
例えば、1カ月ぐらい前からやる気が出ず、何も手につかなかったとします。
1カ月前を思い返してみると、ちょうど失恋してしまった時期だったな…と気づいたら、「思い切って誰かに気持ちを話してみよう」といった対処法が見つかりやすくなると考えられます。
辛いことや悲しいことだけでなく、嬉しいことも無気力を引き起こすきっかけになる出来事や変化になりうるということに注意してください。
例えば、進学や昇進、引っ越し、結婚、出産などが挙げられます。
人生における大きなイベントは、嬉しいことであっても精神的には負担な場合が少なくありません。
環境が大きく変わったり、「頑張らなければ!」というプレッシャーがかかったりするからです。
嬉しいことも悲しいことも含めて、「無気力になった頃にはどんなことがあったかな」と振り返るのがポイントです。
いつもより多めに休みをとる
疲れがたまっている場合、しばらくはいつもより多めに休みをとりましょう。
無気力感と同時に、疲れを自覚していることもあるでしょう。
「起きた時から疲労感がすごい。朝身体を起こすのもしんどい」
「常に頭が重いので何事にも集中できない。それでやる気が起きない」
こういったことがあるようであれば、いわば「エネルギー切れ」の可能性があります。
1~2週間ぐらいは多めにお休みをとってみてください。
お休みとは、睡眠や食事、適度な運動、リラックスタイムや気分転換のことです。
いつもより少しでも長めに睡眠時間をとるのもよいでしょう。ゆっくりお風呂に入るのもいいですね。
自分の好きなことや趣味のことをする時間も大切です。
休養して、心と身体の足りなくなってしまったエネルギーを取り戻しましょう。
「3分だけやろう」を試してみる
「やらなければならないこと」のみ無気力になる場合、「5分だけやろう」を試してみることもひとつです。
「勉強は手につかないけれど、ゲームは楽しんでできる」
「仕事はやる気が出ないけれど、音楽が大好きで今度ライブに行く!」
…思い当たる人もいるのではないでしょうか。
実は、人間には「やりなさい」と強制されると、選択の自由を奪われたと感じて「やりたくない」と反発してしまう心理があります。
これを「心理的リアクタンス」と言います。
特に勉強や仕事は「やりなさい」と言われたり、「やならければならない」と感じたりすることが多いですよね。
そのため、無気力感が現れやすいとも考えられます。
対処法としては「5分だけやろう」と考えて、とりあえず手を付けてみることをお勧めします。
「とりあえずこの作業を5分だけでいいからやろう。5分経ったらやめていいことにしよう」
といった感じです。
この考え方によって「やめる」「続ける」という選択肢ができることになり、「心理的リアクタンス」が働きにくくなります。
また、「5分だけならやれそうだな」と行動を起こしやすくする効果もあります。
やっているうちにエンジンがかかり、気が付いたら集中していた…ということも少なくありません。
自信がつくような考えや行動をしてみる
頑張っても報われない経験を繰り返してきた場合…自信がつくような考えや行動をしてみましょう。
「何回企画を出しても上司に却下される。なぜ却下なのか聞いても、いつも『自分で気付かないとダメだ!』と教えてもらえない…」
「テストで良い点を取ろうが悪い点を取ろうが、いつも親に怒られる…」
こういった状態が何年にもわたって繰り返し続いたらどうでしょうか。
「もう企画を出すのはやめよう…」
「勉強をやってもやらなくても怒られるなら、やらない…」
こう考えるようになっても不思議ではありませんよね。
このような場合は、「学習性無力感」に陥っている可能性があります。
学習性無力感とは、「長期間にわたって回避できないストレスにさらされると、ストレスから回避するための抵抗すら諦めてしまう」という現象を言います。
頑張っても頑張っても認められないことが続けば、「自分はやれる!」という自信が失われ、やる気もなくなってしまいます。
もし思い当たるようでしたら、自信を回復するための考えや行動を意識してみてください。
例えば、
・自分がこれまでやってきたこと・できたことを再確認する
・「やれる」「大丈夫」と自分にプラスの自己暗示をかける
・毎日5分のランニングを継続する
といったことがあります。
無気力になってしまうこととは直接関係がない方法でもかまいません。
無理に高い目標を立てるより、スモールステップで達成感を得ることを大切にしましょう。
「自分はこのタイプかな?」「これはやってみることができそう」などあれば、参考にしてみてくださいね。
また、「もしかしたら自分の無気力は病気からきているのかも?」とご心配な方もいるかもしれません。
病院を受診した方がよいタイミング
病院を受診したほうがよい場合についてお伝えしておきます。
・眠りたいのに寝付けない
・寝付いても時々起きてしまう
・朝起きたい時間より早く目が覚めてしまう
・睡眠時間は変わらないがぐっすり眠った感じがない
・食事をとるのがおっくうで、食べずにいることもある
・最近食欲が増した/減った
・体重が急激に増えた/減った
・お風呂に入る気力が起きず、何日も入らないままでいる
・以前は楽しめていたことが楽しめなくなった
・生活のほとんどの場面で無気力感が強い
こういったことがあるようでしたら、生活にかなり支障が出るでしょうし、お困りになる場面も多くなると思われます。
ぜひ病院へ一度ご相談に行ってみてください。
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【参考文献】
●森川那智子(2007)『なんにもしたくない! ちょこっと、自分を、休ませてあげる本』すばる舎.
●大芦治(2013)『無気力なのにはワケがある 心理学が導く克服のヒント』NHK出版.
●田中正人編著(2020)『図解心理学用語大全 人物と用語でたどる心の学問』斎藤勇監修,誠文堂新光社.
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2023年1月16日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。