「小さな勇気で人生が変わるように」〈ゆめが丘DC〉就労支援の現場から

2017.01.10公開 2020.05.09更新

今回のインタビューは、横浜市の就労継続支援B型事業所 「ゆめが丘DC」管理者・サービス管理責任者の永井千尋さん。

 

社会福祉士・精神保健福祉士の資格を持つ永井さんに、福祉の仕事を志した背景や「ゆめが丘DC」との出会い、「ゆめが丘DC」での取り組みなどについてお話しいただきました。

 

100%永井千尋さん 「ゆめが丘DC」管理者・サービス管理責任者

 

【関連リンク】

>>就労継続支援B型事業所 「ゆめが丘DC」

>>ゆめが丘DC代表 関茂樹さんのインタビュー

 

父の死と自分の変化

小さい頃はとてもおとなしい子で、自分から社交的に話しかけるようなタイプではありませんでしたね。

 

ところが、小さい頃に父が亡くなり、すごく甘えっ子だったのに小学校高学年くらいから、急に積極的になったことを覚えています。

 

周りの人に「母子家庭だから…」などと、とやかく言われないように「自分がしっかりしなきゃ」という思いがあったんです。

 

そのおかげもあって「人前に出るのがこんなに楽しいのか」と自分の世界が大きく広がっていく感覚がありました。

 

高校卒業後、最初に就職した病院はとても規模が大きなところでした。

 

実は、高校の授業後に医療事務の学校に3ヶ月ほど通って、医療事務の資格をとっていたんです。

 

私が配属されたのは人工透析を行う棟。毎日400人位の患者さんが入れ替わりで来る、まさに戦場のような現場でしたが、それはそれで面白かったんです。

 

毎日大変でしたが、患者さんが話してくれる人生経験から得た話を聞くのが楽しかったですね。

 

「この人、いつも治療だけに来てさっと帰っていたけど、本当はこんなこと考えていたんだ」

 

という新しい発見もたくさんあって「本音を自分に話してくれているんだ」と思うと、やりがいのある仕事でした。

 

その後、知的障がい者施設に転職しました。

 

最初は利用者さんの視線が怖いと感じることもあって、「しんどいな」と思うことはありました。

 

しかも配属先は、介護度が一番高い方たちのグループ。毎日が本当に大変でしたね。

 

でも、だんだんと利用者の人にも愛着が湧いてきて、こういう言い方も失礼ですが、みなさんとてもとても人懐っこくて、かわいらしいんです。笑

 

私が研修で数日間、施設に来れないと「永井さんが帰って来る日をカレンダーに○付けて待っていたよ」と言われたこともあったりして、うれしかったことを覚えています。

 

その後、就労支援施設や生活支援ができるグループホームなどで働いていました。

 

施設で働きながら通信制大学に通って、社会福祉士の資格をとったのもこの頃でした。

 

ゆめが丘DCとの出会い

そんなときに、ゆめが丘DCのお話を頂いたんです。

 

代表とは前職の法人で一緒だったこともあり、「支援の現場の責任者として来てくれないか」という打診をいただきました。

 

実は最初はお断りしたんです。

 

どうしても家族のことが引っかかって、遠方で働くことを決断できずにいることを全部正直にお話ししたんです。

 

でも、

 

「やっぱりこのままじゃいけない」
「このまま家族の壁から逃げていたら、新たに学ぶことももうないんじゃないか」

 

と、思ったら急に焦ってきて。一度はお断りしたんですが、今度はこちらからお願いしに行きました。

 

「ゆめが丘DC」は立ち上げから関わっていますので、それはもう大変でしたね。

 

最初は利用者さんがいませんので、病院のケースワーカーさんや相談支援事業所さん、区役所の福祉担当者などを訪ねて、新しい事業所を立ち上げたことを広めていかなければいけません。

 

今では利用者さんは徐々に増えていって、現在(※2017年1月時点)は40人以上の方が登録されています。

 

定員は20名ですが、月~金まで毎日来所する人は少なくて、週に2~3回とか週1回、午前午後のどちらかだけという場合もあるので、平均で1日15~16人が利用しています。

 

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ゆめが丘DCは、「物作り」に焦点を当てています。

 

利用者のみなさんの感性を生かしていただいて、デザインしてもらったり、自分の手先を使って何か自分で作るということが主な活動内容となります。

 

ゆめが丘DCの開所前、うちの代表がたまたま福島県の畳屋さんの近くを歩いていたら、畳の縁(へり)で作った小物が置いてあるのを見かけたんです。

 

それで話を聞いてみると、「こんなことができたら面白そう」というお話をたくさん聞かせてもらえたんです。

 

実際の縁(へり)を見せていただくと、ドット柄やチェック柄、花柄など可愛いもの、かっこいいものがいっぱいあって。

 

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そういった偶然の出会いから、畳の縁を活用した作業を「ゆめが丘DC」に取り入れることになりました。

 

ちなみに、その畳屋さんが福島県の浜通りにある海沿いにあって、「ゆめが丘DC」は横浜。

 

そしたら、開所に向けてのミーティング時に、うちの代表が「浜印」というロゴを早速作って来ていました。「もう出来たよ」みたいな感じで。笑

 

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また、「浜花」というブランド名でフラワーアレンジメントもおこなっていて、事業所の最寄りのゆめが丘駅にも置かせてもらっています。

 

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小さな勇気で人生が変わる

「ゆめが丘DC」は自由に通所のペースを決められることも特徴です。

 

精神疾患を抱えている場合、体調や気持ちの変化が生じやすくもありますので、毎日の通所は負担と感じる人もいます。

 

ただ、就労支援という観点では譲れない部分もあります。

 

例えば、点字の用紙をリサイクルした物作りです。これは事前の準備も検品もとても大変な作業なので、みなさん苦手意識が強いんですよね。

 

利用者さんは基本的に好きな作業を選択出来るのですが、点字の作業だけは必ず取り組まなければならない作業としています。

 

そのようにして、好きなことを自由にやっているだけ…ではなく、あえて大変な作業も組み込んでいます。

 

利用者さんの作品はホームページから購入できます。

 

売れると皆で喜びますし、売れなければ「あそこがいけなかったから売れないんだな」と自分で改善点を模索する利用者さんもいるんですよ。

 

現在、ありがたいことに見学者さんが多くいらっしゃいます。私自身、見学対応のために出勤してるんじゃないかと思うぐらいです。

 

そこから利用に繋がる人もたくさんいるのですが、

 

「とりあえず見てみる」
「どうするかは、見学後に考える」

 

くらいの気持ちで、一歩ちょっと勇気を出してみてほしいなと思っています。

 

意外とそんなに怖い所でも、狭い所でもないですし。笑

 

実際、勇気を出して施設に通うことでどんどん良い方向に進んでいった人たちをたくさん見てきました。

 

まずは気軽に顔を出してみて下さい。そこからまた何かがつながるかもしれませんし、新しい一歩になるかもしれません。

 

もちろん私たちも、みなさんが気軽に立ち寄れる空間であり続けたいと思っているので、お店に行くような感覚でちょっと顔を出してもらえたら嬉しいですね。

 

>>就労継続支援B型事業所 「ゆめが丘DC」

 

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近藤雄太郎

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  • 本記事は2017年1月10日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。