激務での抑うつが転機に。女性の「働く」をサポートするキャリアコンサルタント

2016.12.26公開 2020.06.08更新

働きたいのに働けない女性の力に

その後、結婚を機に退職して、静岡に移住。

 

そこで雇用能力開発機構という「公共の職業訓練校」のキャリア形成支援員として、出産するまでの11ヶ月の間、キャリアカウンセリングをしていました。

 

その後、出産でブランクがありまして。専業主婦を7年間しているんですが、その間に主人の転勤が東京に決まったので、横浜に引越したんです。

 

2011年に来たので、来年の5月で丸6年。こちらでCDAの資格を取って、さまざまな活動を始めました。

 

結婚・出産を通して、ますます女性のキャリア形成の難しさを痛感しています。

 

子どもができると、時間も場所も、女性だけに制限が付いてくるんですよね。

 

男性は大まかなところは変わらないんですよ。働き方も変わらない。むしろ奥さんの援助が付いたことで、ますます働くことができちゃいます。

 

だから、ますます男性は活躍するんだけれども、女性は家の中で1人で全部育児を回していくっていう状況になってしまう…。

 

「働きたいのに働けない女性たち」を一人でも多く支えられたら良いですね。

 

私がエージェント会社に入って最初に関わったカウンセリングは、20代の有名私立大学卒、大手企業に勤めていた男性で「転職をしたい」と相談に来られました。

 

その方は、大学時代にスポーツも勉強も結構頑張っていた方で、「自分はこんなところでくすぶってる人間じゃない」みたいな少しプライドの高いところがあって。

 

「どんな仕事に転職したいんですか?」って聞いた時に、「コンサルにいきたい」と。

 

それで、とりあえず未経験でも大丈夫そうなコンサル案件を、いくつか提案してみました。

 

あんまりコンサル案件がなくて、それでも見つけるたびに送るんですが、その方、何を送っても応募しないんですよね。「転職したい」って言っているのに全然動かなくて。

 

動かなかったら変わらない

エージェントのサービスは通常6ヶ月で終了します。その方は何も動かないまま6ヶ月が経過してしまいました。

 

でも経歴が優秀だったので、頑張れば転職できそうだな、と思い、「もう1回来てみますか?」と言ってもう一度面談をしたんです。

 

その時も「僕はこんな所でくすぶってる人間じゃない」なんて言いつつ、全然動かない。だんだん私もイライラしてしまって。

 

「あなたが動かなかったら変わりませんよ」と言っちゃったんです。

 

「動いたら、自分が手に入れたいものを手に入れれるかもしれない」って。そうしたら「頑張ります」って、その方がついに動き出したんです。

 

それから、次から次へと応募をして。

 

「可能性を狭めないほうが良いから、とりあえず懸念事項があっても受けてみてください」とアドバイスをして、とにかくコンサルに関するような仕事を幅広く受けてもらいました。

 

そして、ついに内定が出まして、彼もすごく喜んでいました。彼が最初に私の所に来てから丸1年ぐらい経っていましたね。

 

後日、その彼からとても嬉しい言葉をいただきました。

 

「あの時、鈴木さんに発破かけられなかったら、僕は動けませんでした」と。

 

「でも実は、あなたが初めてカウンセリングした人なんですよ」って言ったら、

 

「そうだと思っていました。たどたどしいし」なんて言われて(笑)。成長できたのは、お互いさまだったんですね。

 

その後、その人も結婚をして。私も結婚して専業主婦をやっている時に、「実は僕、結婚して子ども生まれました」とメールを送ってくれたんですよ。

 

初めてカウンセリングをした人と「まだ繋がれてる」ことがとてもうれしかったですね。

 

自分が「転職しよう」と思った時、どんな選択肢があるのかなと自分なりに持っておくと、不安がある程度なくなると思います。

 

「こういう仕事内容だったら会社の規模はこだわらないとか、場所はこだわらない」とか。

 

そうやっておくと、自分のこだわりとかが見えてきたり、可能性の広がりとかが見えてくるので、事前に情報をまず調べておくことが必要です。

 

カウンセリングに来る前には「そもそもなんで自分が転職したいのか」「なぜキャリアで悩んでいるのか」、その根本の部分を自分なりに突き止めておく必要があります。

 

でも「それが辛い」と感じてメンタルが病んでしまう人もいるので、自分の気持ちの捌け口をどこかに作っておくっていうことも忘れないでくださいね。

 

グレーゾーンがあってもいい

話を一番聞いてくれるのは、親であることもあります。

 

大人になって、家族、父とか母とか兄弟とかに話すのは「恥ずかしい」と思うかもしれませんが、意外と話してみると割と頼りになりますし、スッキリするんです。

 

それが的外れであっても、「聞いてくれる人がいた」と思うと安心できますよね。

 

本当にメンタルに病んでしまったら、まずは最初に家族に話してみることもひとつだと思います。

 

以前お世話になった精神科医の先生に、「性格は変えられるんだよ」って言われたことがあります。

 

その言葉がすごく刺さって、「きっと私、今性格を変えないと、考え方とかものの見方を変えないと、これから先もつまずくんだ」と気が付きました。

 

今、メンタルが病んでいるっていうことは、「今のやり方じゃだめだよ」っていうサインだと思うんです。

 

そこでやり方を変える、自分を変えるっていうことを愚直にやってみるっていうことが重要ではないでしょうか。

 

実際、カウンセラーさんや先生のアドバイスを受け入れてから、ものの見方がすごく変わったんですよね。

 

それまでは、白黒はっきりさせなきゃいけない性格だったのですが、そうじゃなくて、「グレーゾーンってあっても良いんだ」と変わりました。

 

むしろ「グレーゾーンが大きいほうが、柔軟にいろんなことに気持ちが対応できたりするんだ」っていうことに気づけたんです。

 

心のストレスの袋って、溜まるとだんだん入れる袋が小さくなってきて、入りきらなくなって溢れちゃいます。

 

しかし、心を休養させたり、考え方や見方を変えると、だんだん袋が大きくなってきて、受け止められるものが多くなってくるんですよ。

 

そうすると、今まで考えられなかったことがちゃんと考えられるようになって、ものの見方が柔軟になると思います。

 

そのために、悩みそのものと向き合う時間をなくすっていうのも大事ですし、先生やカウンセラーさんの言うことに愚直に従ってみることが大切です。

 

否定やアドバイスではなく「見守る」

精神的な病を克服するには、本人はもちろん、周りの対応も重要です。

 

メンタルが病んでいたり、「キャリアを変えたいって思っている」こと自体を否定しないで欲しいんですよね。

 

アドバイスをするのではなくて、ひたすら見守っていて欲しいです。

 

私自身も「あの時何も言わないでくれたから助かったな」って思う部分はたくさんあります。

 

うるさく言われないことで、自分の中に回復してくる力がだんだん出てきて、そこで自分で考えられるようになるんですよ。

 

以前、私がメンタルを病んでいた時に、就業時間後に上司から頻繁に呼び出されたことがありました。

 

毎日のように会議室に呼ばれて「お前なんでそんな悩んでんだ」とか「何があるか言ってみろ」って言われて、すごく嫌だったんですよ。

 

上司だから言いたくない本音なんて言いたくないのに、言わされて、ボロボロにされて、私すっからかんになっちゃったんです。上司の前でギャンギャン泣いたっていう経験があります。

 

「休んで良いんだよ」って言ってほしい

その上司もどうして良いか分からなかったのでしょう。

 

でも「自分がなんとかしてあげたい」と思って、そういう風に関わろうとしたんだと思います。ですが、干渉し過ぎるのは却って負担になってしまいます。

 

周りの人はそっと見守って、でも、「あなたを気に掛けているよ」と寄り添っていてほしいですね。腫れ物に触るようにするんじゃなくて、ちゃんと関わりは持っていて欲しい。

 

調子が悪い時は「休んで良いんだよ」って言ってあげることも大切です。

 

一言そう言ってあげるだけで、当事者の方の気持ちも随分助かるはず。

 

周りが「何かしてあげたい」と張り切ってしまうと、かえってこじれることがあるので、あまり積極的に個人の関わりをもたないように気を付けて欲しいですね。

 

自分らしい人生を選択できる世の中に

私は、抑うつ状態になって病気をしたり、転職をしたり、結婚・出産をして、今また復職をして…。

 

そういう経験をして感じるのは、「自分らしく生きられる人生」を選択できる世の中になって欲しいな、ということ。

 

今は女性にとっては不利すぎる世の中で、仕事も家庭も両立するのは難しい。男性は男性で会社の決定にはNOと言えない風潮がはびこっています。

 

男性も女性も何かの言いなりになっている、そんな日本の窮屈さを感じています。

 

もっと私たちは自分らしく生きられる人生を手に入れるべき。

 

「こうじゃなきゃいけない」という概念を捨てれば、いろんな選択肢に恵まれるんです。「自分らしく生きられない選択肢しかない社会」を何とか実現したい。

 

だからこそ、私もキャリアカウンセリングで、みなさんの人生の岐路のサポートに関わっていきたいなと思っています。

 

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近藤雄太郎

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  • 本記事は2016年12月26日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。