メンタルヘルスのセルフケアとは?役立つ5つの習慣を臨床心理士が解説

 
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あなたの周りには、メンタルヘルスの問題で退職したという人が何人かいることでしょうか。

 

労働環境の問題やメンタルヘルス不全の問題は、いま社会問題になっています。

 

対策に乗り出している企業も多いですが、その中の多くの企業が「どのような方針で対策を行っていけばよいのか」ということについて頭を抱えています。

 

そこで、厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針(以下、指針)」というものを発表しました。

 

ここには、企業の「心の健康をどのように保つのか?」という企業の疑問に答えることが書いてあります。

 

今回は、働く人のメンタルヘルスをより良くする上で、「セルフケア」について会社がやるべきこと、社員一人ひとりができることを解説しました。

 

 

メンタルヘルスの4つのケア

前述した厚生労働省の指針の中で、方針として示されているのが「4つのケア」という概念です。

 

・セルフケア(労働者自身による健康管理)

・ラインによるケア(職場の上司によるケア)

・事業場内産業保健スタッフによるケア

・事業場外産業保健スタッフによるケア

 

上記の4つから成り立っています。

 

指針ではセルフケアについて「メンタルヘルスに対する正しい理解」「ストレスへの気づき」「ストレスへの対処」の3項目を挙げています。

 

事業者としては「労働者が適切にセルフケアができるように支援すること」が求められています。

 

特に、セルフケアは管理監督者もその対象に入っていますので、会社の隅々までセルフケアを行き渡らせることが必要です。

 

産業医などを招いて講習を行うのも良いですし、質問紙を配って労働者自身がストレスを自覚できる機会を設けるのもよいでしょう。

 

また、過度にストレスを感じている労働者に対しては、産業医面談やカウンセリングを行うなども効果的です。

 

指針に示された3項目に対して、それが実施できるような機会を設けることが事業者に対して求められているのです。

 

次に、さきほど挙げたセルフケアに関する3項目について解説し、セルフケアに役立つ習慣を紹介したいと思います。

 

 

メンタルヘルスに対する正しい理解

メンタルヘルスに関する「正しい知識」は、すべてのケアの前提になるものです。

 

産業保健スタッフであれば必修です。正しい知識なしに産業保健スタッフはできないので、もし何の知識もなしに産業保健スタッフに任命されたのであれば、講習などに出ることをお勧めします。

 

先ほど、セルフケアは管理監督者も対象になるということを述べました。つまり、管理監督者に関してもメンタルヘルスに対する正しい理解を身に着けてもらわないといけません。

 

管理監督者が正しい知識を身に着けていないと「ラインによるケア」も十分な効果が発揮しないので、そのような観点でも管理職用の講座を設けることは必要でしょう。

 

正しい知識とは?

さて、それでは「正しい知識」とは何なのでしょうか。その全てをここで書くことはできませんが、一つ重要なポイントがあります。

 

まず、「精神障害は気の持ちようと関係がない」ということです。よく「うつは甘え」などの極端な意見を聞くことがありますが、これは大きな間違いと言えるでしょう。

 

従来型のうつ病(新型うつとは区別されるためこう呼ばれる)は、真面目で責任感の強い性格傾向の人が罹患しやすいと言われています。

 

そもそも、精神障害はストレスや遺伝など様々な要因が複雑に絡み合い発症します。

 

「コレが原因」というものは未だ解明されていないので、安易に「性格が原因」と決めつけるのは非常に危険なことと言えます。

 

分かりやすい例えをするのならば「胃がんは甘え」などと言わないのと同じことです。

 

精神障害は甘えではない

このような「性格が弱いから精神障害になった」という考え方は、労働者にとっても管理監督者にとっても、あまりいい結果に結びつきません。

 

明らかにうつが疑われる労働者が「ちょっと気分が落ち込んだくらいで休めない、そんなのは甘えだ」と思っていたら、働き続けてしまい、うつが重症化してしまうことでしょう。

 

また、上司がそのような誤った理解であれば、「あいつは最近、遅刻が目立つからさぼっている」という短絡的な考え方に陥ってしまうことでしょう。

 

「精神障害は気の持ちようとは関係がない」が大前提であるということは一つ重要なポイントです。

 

この他にも色々重要なポイントはあります。気になった方は、専門家が執筆した分かりやすい基礎知識の本を一読してみるのが良いでしょう。

 

 

ストレスへの気づき・対処

日常的に「ストレスが溜まっている」などの言葉はよく聞きますが、果たして自分自身のストレスを正しく把握しているのでしょうか。

 

例えば、ネガティブな出来事(死別や叱責)などでストレスを感じるというのは分かりやすいですよね。

 

ただ、ある研究によると出産や昇進といった、ポジティブなこともストレスになりやすいと報告されています。

 

直近に、このような大きなイベントがあればまだわかりやすいですが、ストレッサーが分からずにストレスがたまるということも多いです。

 

「なんだかイライラする」「泣きやすい」など自分自身のストレスに敏感ならば良いですが、ストレスに無自覚な場合は、ブレーキが効かずにどこまでも働いてしまいます。

 

その結果、体を壊して退職や休職に追い込まれていくのです。

 

自覚できないストレスの方が多い

我々は、「ストレスは自覚できる」という強い信念を持っています。しかし、現実は「自覚できないストレスの方が多い」のです。

 

どのようにストレスに気が付いていくかというのは、セルフケアにおける重要なポイントの一つです。

 

 

ストレスへの対処

ストレスにどのように対処しているかというのも重要です。

 

ストレスに対して、どのように対処するかを「ストレスコーピング」と言いますが、人によって使用するストレスコーピングが偏っている場合があります。

 

例えば、ストレスが溜まっている時に、お酒を飲んで発散する人であれば、ストレスのたまりやすい時期にお酒を飲み続けてしまいます。

 

その結果、アルコール依存症になるということも考えられます。

 

このように、一つのストレスコーピングばかりを使うよりは、対処法を増やして様々なストレスコーピングを行うことが望ましいと言えます。

 

ストレスコーピングについては以下の記事も参考にしてみてください。

 

ストレスと病気の関係、ストレスコーピングの3つの方法とは?

 

 

セルフケアに役立つ5つの習慣

意識的にやろうと思っても、なかなかできないのがセルフケアの難しさでもあります。

 

「緊急に必要なことではない」と思われがちで、後回しにされたり、続かなかったりというのが現状のようです。

 

そこで日常生活の中に、セルフケアの要素を持った習慣を取り入れることで、日常的にセルフケアが行えるようになります。

 

そんな、セルフケアに役立つ5つの習慣を紹介したいと思います。

 

日記をつける

ストレスへの気づきという観点からも日記をつけることは非常に有効です。

 

その時には何とも思わなかったことが、時間が経つとむかついて来たり、悲しくなったりするという経験はないでしょうか。

 

これは、その時はストレスに自覚的でなかったけれども、振り返ってみることで、ストレスが意識に上がってくるということでもあります。

 

よく「話す、手放す」という言葉を私は使います。葛藤やモヤモヤした気持ちを抱えると、とても辛くなってしまいます。

 

それを誰かに話したりすることは、自分の抱えていたものを吐き出すことにもつながります。

 

例えば、友人のネガティブな話を延々聞いていると、こちらまで気分が落ち込んでくる経験をしたことはないでしょうか。

 

あれは、友人が抱えている葛藤を吐き出し、それを聞き手が背負っているという考え方もできます。

 

一人で抱えると、重い荷物も二人で抱えれば少し軽くなるかもしれません。

 

日記をつけるということも「話す、手放す」の効果があります。自らのストレスに気づくという意味でも、ストレスに対処するという意味でも非常に良い習慣と言えるでしょう。

 

飲酒量を記録する

ストレスに比例して飲酒量が増える方がいらっしゃいます。

 

ストレスに無自覚であり、よく使うストレスコーピングが飲酒の場合は、飲酒量を見ることでストレスに気が付くことがあります。

 

筆者はまさにこのタイプで、非常にストレスフルな出来事があると飲酒量も増えます。

 

その場合、ある出来事に対して自分は何とも思っていないけれども、飲酒量が増えているので、ストレスなんだなと振り返るもできます。

 

普段からお酒をよく飲まれる方はチェックしてみると良いでしょう。

 

趣味の時間を多く取る

「仕事が多すぎて休みが取れない」という話はよく耳にします。

 

これは一つ発想の転換が必要で、「仕事が多いから休みが取れない」ではなく「休みを取るから仕事を入れない」というサイクルに変えていきます。

 

予定が入っていないと、ついつい働いてしまうという人は多いようです。

 

なので、「趣味」という予定を入れて、仕事を入れないようにするというのは非常に有効な習慣の一つ言えるでしょう。

 

わがままを言うのであれば、一人でやるよりも複数でやるものの方が良いですね。

 

新しいことに挑戦する

先ほども述べたように、ストレスコーピングの種類を増やしてくということは非常に重要なことです。

 

そのためには、自分の行動の種類を広げる必要があります。その最も単純な方法は、新しいことに挑戦してみることです。

 

筆者が心がけていることは、「新しい言葉を聞いたら試してみる」というものです。

 

飲んだことのないお酒、食べたことのない食べ物、行ったことのない場所…。そういったものの名前を聞いたら、とりあえず試してみるというのを心がけています。

 

こうすることで行動パターンが広がり、ストレスコーピングの種類も広がっていきます。

 

なんでも話せる場を作る

なんでも話せる人間関係を作って、なるべくその場を設けるようにするのは非常に重要なことです。

 

何かあったときに「話す、手放す」の効果も期待できますし、新しいものの名前を聞くこともあるかもしれません。

 

もし、身の回りになんでも話せる相手がいるならば、2か月に一回くらい会う時間を設けてみるのはどうでしょうか。

 

日常に、セルフケア要素のある習慣を取り入れて心の健康の増進保持を図っていきましょう。

 

 

働き方改革特集記事一覧

【第1回】ストレスチェック制度で企業はどう変わる?

【第2回】【事例】働き盛りのうつを防ぐ…社員をうつにしないためには?

【第3回】ストレスと病気の関係、ストレスコーピングの3つの方法

【第4回】パワハラの事例と対策のポイントとは?

【第5回】過重労働の定義やすぐ対策すべきこととは?

【第6回】うつ病の復職のタイミングや復職後の注意点

【第7回】安全配慮義務とメンタルヘルス「4つのケア」の関係とは?

【第8回】EAPの役割とは?休職者を減らす事例を挙げて臨床心理士が解説

【第9回】メンタルヘルスのセルフケアとは?役立つ5つの習慣を解説

【第10回】メンタルヘルスラインケアに必要な管理職の能力とは?

 

 

icon_4【執筆】

林田 一

臨床心理士

 

 

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