職親・社会適応訓練事業とは?対象・支援内容・費用・申請方法・事例を専門家が解説

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職親・社会適応訓練事業とは?

精神疾患を抱えながら仕事をするなど、社会参加をしている方は数多くいます。

 

また、彼らの就職支援のために、障害者トライアル雇用や社会適応事業者制度などが整えられています。

 

ですが、企業で働く際に、指導担当者が気心が知れた人ではないこともあるため、戸惑うことが多いですよね。

 

そこで今回は、精神障害者を十分に理解し、勉強をしている職親による「社会適応訓練事業」についてお伝えします。

 

 

職親・社会適応訓練事業の対象

在宅で生活している精神疾患を抱える方および、社会参加や社会復帰に意欲を持っている方。

 

 

職親・社会適応訓練事業の支援内容

職親・社会適応訓練事業とは、精神疾患を抱えた方に理解があり、彼らの社会参加のために訓練する場所を提供することで彼らの支援に協力し、都道府県知事が認めた事業所の活動のことを言います。

 

また、その事業所のことを「職親」と呼びます。

 

精神疾患を抱えた方がこれらの事業所に一定期間通い、実際の就労の場で仕事の手順や対人コミュニケーションの訓練を受けながら、技能の向上や社会参加への促進を行います。

 

事業所での訓練期間は、原則として6ヶ月で、1日6時間、月に20日参加が基本となります。

 

職親になりたい事業所は、市役所などに職親申請を行い、担当職員が事業所を調査した上で、適役だと許可が降りた場合のみ認められるため、障害を抱える方も安心して事業所で訓練をすることができるでしょう。

 

 

職親・社会適応訓練事業の費用

社会適応訓練事業制度を利用する精神疾患を抱える方に対して、事業所から給料は支払われません。なぜなら、この制度は彼らが「社会生活に慣れること」を目的としているからです。

 

ですが、中には少額の作業報酬を支払っている事業所もあるようです。

 

 

職親・社会適応訓練事業の申請方法、利用方法

職親・社会適応訓練事業を利用したい障害を抱える方は、最寄りの保健所の窓口にて申し込みを受け付けています。

 

窓口にて、必要書類などへの記入や提出書類を出す必要があるため、事前に用意しておく物などを電話などで確認すると、スムーズに手続きが進むかと思われます。

 

 

職親・社会適応訓練事業の該当する事例

【Aさん20代男性】広汎性発達障害

Aさんは、10代の頃より広汎性発達障害の診断を受け、精神科病院に通院しながら週に3回併設のディケアに通所しています。

 

物事へのこだわりが強く、一度気になる事柄に集中すると、なかなかそれから目をそらすことができないという特徴を持っていましたが、主治医や専門スタッフの支えで毎日を過ごしていました。

 

ある日、自宅でテレビを見ていたAさんは、ある番組で年配の司会者が「30代にもなって、働いていない若者は問題ですね」という発言をしていたのを聴きました。

 

疾患を持っているとはいえ、自分に向けて怒られているような気がしてきたため、その言葉が頭から離れないようになりました。

 

それがきっかけで、ディケアでのプログラム活動の際もぼんやりと過ごすようになり、何をやっても集中力が欠けがちになりました。

 

気になったディケアスタッフがAさんに事情を聴いてみると、「テレビ番組で聴いた司会者の言葉が頭から離れず、自分も働かなくてはと思うとそのことばかりに意識が向いてしまう」と打ち明けてくれました。

 

それを聴いたディケアスタッフは、定期カンファレンスの際に、Aさんが働きたいと思っていることをケースとして取り上げることにしました。

 

定期カンファレンスで主治医が、「Aさんが仕事のことで頭がいっぱいになっているのなら、一旦、当院と繋がりのある社会適応訓練事業を試してみてはどうか」とのアドバイスもあったため、この件をAさんに伝えてみました。

 

すると、Aさんは「仕事ができるならやってみたい」ということで、保健所にサービスの申し込みを申請し、病院と関りのある小さな印刷所で訓練を行うことになりました。

 

この印刷所は、Aさんが通う病院の通院者やディケア活動をしていた人を幅広く受け入れているという歴史もあったため、精神疾患に対する理解や知識も深く、人見知り気味なAさんでも打ち解けやすい雰囲気にありました。

 

Aさんは集中力が高い事から、簡単な印刷機械の操作を教えてもらい、そこを持ち場として訓練することになりました。

 

一般的に、給料は支払われないこのサービスですが、ここでは少額の作業報酬を支払うシステムになっていたため、Aさんは自分の働いたお金で自分の物を買うことのできる喜びを知りつつあります。

 

また、休み時間になっても仕事を延々と続けてしまうAさんに対して、工場の指導担当の職員が声をかけてくれたり、終了時間を細かく教えるなどのアドバイスを行ってくれています。

 

6ヶ月の訓練期間を経て、Aさんが次に選んだ道は?

紆余曲折ありながらも、6ヶ月の訓練を終えたAさんは初めの頃と比べ、印刷機械の操作もスムーズになり、仕事に集中しすぎるクセも随分と軽くなってきました。

 

働く喜びを感じているAさんは、まだ働くことを続けたいと指導担当者に話してみました。

 

すると、「当工場と取引のある印刷所で社会適応援助者(ジョブコーチ)がいる企業が求人を出しているから、そこに詳細を尋ねてみてはどうか」ということを教えてもらいました。

 

その後、Aさんと今までの指導担当者、主治医やディケアスタッフなどと話し合いを行い、指導担当者と共にハローワークに出向き、例の印刷所へ社会適応援助者支援事業のサービスを使い働きたいと求人に応募。

 

後日面接に訪れたAさんとジョブコーチ、企業側の担当者とも話し合い、まずは職場見学をしたうえで、Aさんにふさわしい支援計画を作成して行こうという流れになっています。

 

 

職親・社会適応訓練事業の注意事項

職親・社会適応訓練事業の訓練期間は、基本的に6ヶ月とされていますが、その時の状況によっては、最長3年まで期間を延長することが可能となります。

 

 

Misudu Kukita【執筆者】

久木田みすづ 精神保健福祉士 社会福祉士

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