ママは看護師でときどき過食症。笑顔の「ごちそうさま」が消えた日

2020.05.01公開 2020.05.07更新

単純な食べ過ぎと思われることも少なくない過食症。

 

人間関係などのストレスを原因として発生することも多いと言われ、食事のコントロールが難しく、自分でも病気と気が付きにくい病気でもあります。

 

今回は過食症をテーマに、望月はるかさん(仮名)にお話しいただきました。

 

過食症当事者である望月さんは看護師・保健師でもあり、過食や拒食に苦しみながら出産もご経験されています。

 

これまでのご経験されたこと、現在、過食で苦しんでいる人へのメッセージなどをお伺いしましたのでぜひ最後までご覧ください。

 

〈インタビュアー 近藤雄太郎〉

※写真はイメージです

 

体型コンプレックスと過度なダイエット

近藤
まず最初に過食の始まりについてお伺いできればと思っています。
望月さん
日頃から下半身にコンプレックスがあり、ダイエットについて頭にはありました。
近藤
体型へのコンプレックスはいつからだったのでしょうか?
望月さん
気になり始めたのは学生時代です。

 

運動部だったこともあり、周りから「足が太いな」と言われたり、姉妹の体型が細かったこともあり、自分だけ太いのは嫌だなと思っていました。

近藤
学生の頃からダイエットを本格的に?
望月さん
いえ。当時はそこまで気合を入れてダイエットをすることはありませんでした。

 

太いと言われたことを誰かに言えないですし、一人でグサッとしていましたね。

近藤
たしかになかなか人には言えないつらさはありますよね。

 

その後、過食のきっかけになったのは?

望月さん
3年前に現在の旦那さんと出会い、お付き合いが始まったことです。
近藤
え…?と言いますと?
望月さん
彼は細身で体型がよく、しかも少食でした。

 

そのため、デートでは彼よりたくさん食べるのが恥ずかしく、少食ぶることが多々ありました。

 

隣を歩くのが恥ずかしくなり、自慢してもらえる彼女になりたくて、ダイエットを始めることに。

近藤
太ってるとか直接言われたからでしょうか?
望月さん
誰かに何か言われたというより、「彼に見合う痩せた体型にならなくちゃ」という意識が強かったです。

 

あとは、周りに細い人がいるとつい過剰に反応してしまう自分がいました。

近藤
なるほど。
望月さん
彼は筋トレをすると、細マッチョの体がさらにいい体に。一方の私は体重が減らず、足が太いままで彼とは正反対。

 

「このままではダメだ!もっと頑張らないと!」と思い、たくさんダイエット情報を調べました。

 

それが結果的に過食の始まりだったと思っています。

近藤
ダイエットが過食に…?

 

相当ご自身を追い込みすぎていたのでしょうか?

望月さん
「体型の良いダイエッターのInstagramを真似をすれば私もスタイルが良くなる!」と思い、まず三食サラダとタンパク質中心の食事に変えました。

 

また、看護師や保健師の資格を持ち、日頃から肥満の方への体重指導や生活指導をしてきたこともあり、食事改善の大切さは身に染みて感じていました。

 

しかし、ストイックな食生活がのちに悪魔の過食への入り口とは知らず、完璧主義の私は運動と食事に全力投球してしまっていたんです。

近藤
完璧主義のダイエットが仇になってしまったと。
望月さん
職場でもダイエットを頑張ることを言っていたので、余計に頑張らなきゃとなっていましたね。
近藤
ダイエットそのものは順調だったのでしょうか?
望月さん
体重は思うように減りませんでした。

 

3年前のダイエット開始前が身長157㎝、体重52kgでした。ダイエットで46kgまで落としました。 

近藤
結構、体重減っていると思うのですが…
望月さん
そうですね。

 

なかなか理想の体型には近づかず、食べることが怖くなり、どんどん食べる量を減らしていくことで、一時的に体重が減ることはありました。

 

すると周囲から「痩せた?綺麗になった!」と言われることもあり、「やっぱり痩せなきゃダメなんだ…」とさらに食への恐怖を強くさせ、ほとんど食べなくなっていきました

近藤
周囲の良かれと思って言ったことが、かえってプレッシャーになってしまった感じですね。

 

過食とは縁遠そうな気もしますが?

望月さん
ダイエットを始めてからしばらく経ちました。

 

ある日、甘いものが食べたくなり、ひとつ食べたところ、おいしくておいしくて…。

 

知らぬ間に大袋のお菓子をペロッと完食してしまったです。

 

「今日くらいいいか!明日から頑張ろう!もう食べない!」と思うも、その日から食への執着がすごくなりました。

近藤
ダイエットの反動で今度は食への執着が強く?
望月さん
はい。でも体重増加は怖く、過食した次の日は絶食をしたり、下剤を使うようになっていました。

 

そうして、痩せたいのに食べてしまうという、生き地獄のような過食の人生と付き合うことになりました。

 

過食の量は5000kcal?

近藤
実際に、どれくらいの量を食べるようになっていたんですか?
望月さん
はじめはファミリーパックのお菓子を一袋程度でした。

 

徐々に量が増えていき、パン、お菓子、アイス、米などをお腹がはちきれるまで食べます。

近藤
お腹がはちきれるまで…。
望月さん
カロリーで言うと5000kcal前後。

 

内容は、お米2合、菓子パン5~6個、アイス2個、ファミリーパックのお菓子2~3袋程度です。

 

私の場合、アイス→パン→お菓子→お米の順で食べることが多く、甘いものへの執着がすごいです。金額にすると1000円から2000円の間です。

近藤
頻度はどれくらいですか?
望月さん
我慢できても4日間ほど。

 

2日に1回は過食をしてしまうことが多く、しんどいときは2日続けて…。

近藤
満腹感で食べられなくなる感じでしょうか?
望月さん
満腹感というより苦しいという感じです。

 

お腹いっぱいという感覚もないですし、買ってきたものを食べ切る、お腹がはち切れるところまでいかないと満足できないというか。

近藤
食べてしまう量は最初の頃と比較して増えているのでしょうか?
望月さん
耐性がついてしまったのが、最初の頃に比べて食べる量は増えてきています。
近藤
いわゆる過食嘔吐はありましたか?
望月さん
過食嘔吐はなかったです。

 

ただ、嘔吐したい気持ちは常にあり、「嘔吐できたら痩せられるのに」と嘔吐できない自分が嫌でした。

 

そのかわり、絶食や下剤でなんとか体重を減らすように必死でした。

 

そして過食と付き合いながらも、赤ちゃんを授かりました。

近藤
妊娠中はどのように?
望月さん
妊娠中も体重増加が恐ろしく、また食べることが怖くなりました。

 

ヘルシーなものしか食べなかったり、かなり小量しか食べなかったり。

 

赤ちゃんを授かったことがとても嬉しかったのに、意識が体型や体重に支配されるこの病気はかなり恐ろしいと思います。

近藤
ご妊娠というおめでたい出来事があっても、体型や体重のことで頭がいっぱいになってしまう…。
望月さん
はい。その結果、妊娠中ほとんど体重が増えず、出産してすぐは45kgほどになっていました。

 

しかしその後、また過食がやってきます。過食をしながら50kg前後をウロウロし、現在は52~53kgです。

近藤
現在も体重増加への恐怖心は?
望月さん
過食をしてしまう今も体重増加への恐怖心は変わらずあります。

 

なんで妊娠中のときのように食べる量が減らないのか…

 

もしかすると、過食によるある種の「快感」のようなものへの依存があるのかもしれません。

 

止まらない過食、自己嫌悪、自責

近藤
過食を止めたいけど止まらないという状態についてもう少し教えていただけますか?
望月さん
過食中は、痩せることや食べることについて「もうどうでもいいや!」と思って無我夢中で詰め込むことが多いです。

 

しかし、はじめは無我夢中ですが、だんだんお腹がパンパンになってくると、「誰か止めて」「もう過食を止めたい」「食べなければよかった」と思うこともあります。

近藤
過食して満足ではなく「後悔」なんですよね。
望月さん
そうですね。

 

止めたいと思っていても止まらない、過食を止めることができない自分がとても嫌になり、とことん自分を責めていました。

近藤
過食、自己嫌悪、自責というループはおつらいですよね。
望月さん
「たったひとつだけ」と思って食べたお菓子が、お腹がはちきれるくらいの量になり…。

 

「本当に何をしているんだろう」とコントロールできない自分が情けなく消えてしまいたいといつも思っていました。

近藤
過食を中断することもコントロールが難しいんですもんね。
望月さん
ただ、過食している時に、誰かが部屋に入ってきたり、見つかりそうになると、過食中の食べ物を即座に隠し、中断することは可能です。
近藤
他人には絶対見せられないと。
望月さん
食べること=悪という思い込みから、食べているところを見られるのが恥ずかしいという思いと、拒食症とは違い、過食症は自分が食べ過ぎていることや、「病気ではないのか?」という意識がありました。

 

そんな自分が恥ずかしく、情けなく、過食しているのを見られるのが怖いのだと思います。

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近藤雄太郎

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  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2020年5月1日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。