ネフローゼ症候群とフルタイム勤務の両立、そして人生を謳歌するための心がけ

病気と無縁でバリバリの体育会だった大学生の頃に、突然発症したネフローゼ症候群。

 

今回のインタビューは、様々な異変がありつつも、まさか腎臓の病気とは思いもしなかったという、加藤寛基さん。

 

現在ではフルタイムのお仕事と治療と両立させながら、ネフローゼ症候群という難病に対して前向きに捉えるようになれたと言います。

 

加藤さんに、ネフローゼ症候群の前兆と感じた異変のこと、入院生活や再発のこと、そして難病との向き合い方の変化などについてお話しいただきました。

 

〈インタビュアー 近藤雄太郎〉

 

ネフローゼ症候群発症前と初期症状

近藤
ネフローゼと診断される前の「今思えば前兆かも」と感じるエピソードや初期症状について教えてください。
加藤さん
発症は2013年11月で、当時大学4回生でした。

 

大学時代は応援団に所属していて、前兆と思われるような異変もあったのですが、所謂根性論でカバーしてしまっていた状況でした。

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応援団に所属していた頃の加藤さん

近藤
応援団ですもんね…

 

異変というのは具体的にどんなものが?

加藤さん
毎回練習の初めにランニングを行うのですが、自分は元々速い方のグループに所属していたんですね。

 

それが4回生の夏頃からだんだん後輩に抜かれていくようになり、最終的には一番遅いグループについていくのもやっとの状況になっていました。

近藤
なるほど。体力が急激に落ちてきた感じですね。
加藤さん
それが今思えば「疲れやすさ」というネフローゼの前兆だったと思います。

 

でも当時は、それが自分の鍛錬が足りないせいだと思い、より走り込みに熱を入れてしまっていました。

近藤
その段階で、まさか病気とは気がつけないですよね。
加藤さん
そうですね。

 

「持久力には自信があったのに、これくらいでなんで疲れちゃうんだろう」という感じでしたね。

 

そもそも自分が病気になるイメージがなかったですし、病院に行く発想自体ありませんでした。

近藤
当時は、体育会バリバリなわけですしね。
加藤さん
あともう一つの異変は、体重の急激な増加です。
近藤
体重…ですか?
加藤さん
ネフローゼ症候群は水分がうまく体外に排出されなくなる病気なので、むくみから必然的に体重が増加すると言われているんですよ。
近藤
ふむふむ。
加藤さん
どちらかといえば、自分は食べても太りにくい体質で、風格が求められる応援団では体重を増やすのに苦労していたぐらいでした。

 

それが4回生の夏を過ぎた頃から急激に体重が増加するようになって…。

近藤
実際、どれくらい体重が増えたのでしょうか?
加藤さん
曖昧な記憶ですが、4回生の夏には67kgぐらいだったのが、3ヶ月間で80kg近くまで増加していたと思います。
近藤
たしかに急激ですね…
加藤さん
大学入学時は60kgもいってなかったのに、顔も足も体中がパンパンになりました。

 

発症発覚の直前期は、むくみが激しくなって目も開けないような状態。

 

お腹周りや足先のむくみも激しく、スウェットなどの緩めの服以外はほとんど着られない状態でした。

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入院直前の様子

近藤
目も開けられない状態…
加藤さん
そのような症状になってもまだ深刻な病気だとは思っておらず、単純な激しいむくみ、悪い風邪かなと捉えていました。

 

寝ていればそのうち良くなるものだと安直に考えていましたね。

 

腎臓の重たい病気なんて、全く想像していませんでした。

 

ネフローゼ症候群と診断されるまで

近藤
ネフローゼ症候群と診断されるまでの過程を教えていただけますか。
加藤さん
むくみに加えて、倦怠感もひどくなってきて外出もできない状態になった頃、たまたま親に電話する機会があり、そこで内科を受診することを勧められました。
近藤
親御さんの勧めでまずは内科へ。
加藤さん
はい。外に出るのも辛かったのですが、やっとの思いで近所の内科医を受診して点滴を打ってもらい、少し気が楽になった記憶があります。

 

ただ、そこで出た診断は「肝臓の病気」とのことで、大学病院へ紹介されました。

近藤
腎臓ではなく肝臓?
加藤さん
当時お酒が大好きだったこともあり、肝臓の病気と言われても特に不信感はなかったですね。

 

それで翌日すぐに、大学病院を受診しました。

近藤
体調はずっと悪かったのでしょうか?
加藤さん
大学病院を受診する当日は一番体調が悪く、病院に行くまで家でずっと嘔吐していたことを覚えています。
近藤
かなりギリギリの状態ですよね。
加藤さん
大学病院で「もう少し来るのが遅かったら危ない状態になっていたかも」とも言われました。

 

診断結果は前日の診断と違い、「腎臓病」。当日即入院になりました。

近藤
診断が変わり、さらに即入院ですか…
加藤さん
まず腎臓病という言葉に漠然とした重たさを感じました。

 

自分は死ぬのか生きられるのか、生きられたとしてこの先の人生どうなってしまうのか…

 

分からないことばかりで、不安でいっぱいだったことは覚えています。

近藤
ただでさえ、体調がすぐれない中、さらに死の恐怖というのは本当にお辛い状況でしたね。
加藤さん
さらに、その日はたまたま、応援団の集大成となる演舞の日でした。

 

応援団の同期からは何とかして会場に来ることだけでもできないかと言われましたが、とてもそんな状態ではなく断念しました。

 

当時はまだ病気になった事実よりも、そのことの方が悔しかったかもしれません。

 

ネフローゼ症候群の治療と再発

近藤
受療後も入院もされましたが、どのような治療を受けてきましたか?
加藤さん
基本的にはステロイド(プレドニゾロン)と免疫抑制剤(ネオーラル)を併用して服薬しています。

 

現在はステロイドを20mg、ネオーラルを125mg服用しています。

 

ステロイドを減らしていくとどこかで必ず再発してしまい、スタートに戻ってやり直し…という感じです。

近藤
再発はどれくらいの頻度で?
加藤さん
すでに6年間で再発を13回繰り返しています。

 

最近はステロイドに身体が抵抗するようになり、再発してしまう服用量が増えてきたため、LDLアフェレーシスという血中を掃除してLDLコレステロールを除去する治療も行っています。

近藤
再発のきっかけってあるんでしょうか?
加藤さん
再発するタイミングには傾向があって、まず身体に過度な負荷をかけると再発するようです。

 

私の場合、風邪をひくとかなりの確率で再発しますし、激しい運動をしても再発リスクが高まると言われています。

近藤
なるほど。
加藤さん
あとは飲み会が続くと再発することが多かったので、最近では禁酒していますし、外食も必要最低限以外は控えるようにしています。
近藤
飲み会や外食も身体にとっては過度な負荷になってしまうこともあるんですね。
加藤さん
ただ、明確な再発の基準があるわけではないことが悩みです。

 

もちろん、激しい運動をせず、飲み会にも旅行にもイベントにも行かず、規則正しい生活を毎日のように続けていれば、再発リスクはかなり抑えられるのかもしれませんが。

近藤
あまり現実的ではないですし、むしろストレス増えそう…
加藤さん
再発しないギリギリの範囲で楽しめることは楽しんでいきたいのですが、その明確な範囲がわからないため、どこかで無理をして再発を繰り返してしまっている面もあると思います。
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近藤雄太郎

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  • 本記事は2020年5月25日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。