全国でLGBTの出張授業を行うレズビアンの保健室の先生【井上鈴佳さんPart1】

2017.07.10公開 2017.07.14更新
index
 
シェア
ツイート
はてブ
お気に入り
共感
30

今回のインタビューでは、LGBTの当事者で、セクシュアルマイノリティの出張授業や講演活動を行っている井上鈴佳さんにお話を伺いました。

 

 

中学・高校の保健室の先生を経験

初めまして。井上鈴佳です。

 

大阪教育大学の保健室の先生を養成する養護教諭養成課程の出身で、保健室の先生を中学校、高等学校で3年ほど勤務しました。

 

その中で、自分がLGBTの当事者だということも分かり、自分が伝えていくことで救われる子たちがいるんじゃないかと思い、今は出張授業などの活動をさせてもらっています。

 

 

真面目で手のかからない子

子供の頃はすごく真面目でした。

 

先生の言うことは全部聞く。教科書は全部読む。親にとっては手のかからない子どもだったと思います。

 

剣道が好きで、7歳下の弟と新聞紙を丸めてチャンバラごっこをしたり。剣道は高校まで続けていました。

 

弟がわんぱくで、「弟に手がかかる分、私であんまり手をかけちゃいけないかな」ということを、子どもながらに思っていたと思います。

 

本当は、「弟みたいにちょっとわんぱくしたい」という気持ちもありました。

 

ただ、小学校入ったぐらいから父の仕事が忙しくなり、弟に厳しくしつけのことを言うようになって、「これ以上、両親を困らせるわけにはいかない」というところから真面目になっていきました。

 

真面目であり続けて、しんどくなっていたんでしょうけど、無意識のうちに抑えていましたね。

 

 

小6でのいじめと担任の一言

小学校6年生の時にいじめにあいました。

 

真面目な生徒で授業中での発言が多かったので、やんちゃなグループから目を付けらたんです。

 

読書が好きでよく本を読んでいたんですが、「本を読むと、本の世界に熱中して、周りの音が聞こえなくなったりするんだ」というのをちらっと話していたら、お昼休みに本を読んでる目の前で思いっきり悪口を言われたり。

 

担任の先生に相談しましたが、「自分のせいじゃないの?」というようなことを言われて、余計に傷付きました。

 

 

担任の先生を反面教師に

母に言うと「困らせてしまうんじゃないか」とも思いましたが、任の先生はあまり良くない対応だったので、「母に言わないと何にも変わらないな」と思い、母に相談しました。

 

そしたら、母がママ友を連れて学校に乗り込み、校長先生に訴えて直談判してくれたんです。

 

その後、先生がいじめていた側の子に注意してくれたようで、いじめはなくなりました。

 

あの時、担任の先生に「あなたのせいじゃないの?」「あなたにも原因があったんじゃないの?」と言われたのは本当にショックでした。

 

そこで私は、傷つくようなことを言われたり辛い思いをした時に、一番に相談になれる人になりたいなと思って、養護教諭を目指し始めました。

 

 

たばこの煙で教室が真っ白

中学校はものすごく荒れていました。

 

体育の授業が終わって教室に帰ってきたら、たばこの煙で教室真っ白になってたり、先生が授業に入ってこられないように鍵閉めて締め出す、とかも日常茶飯事でした。

 

学年が上がるにつれてどんどんひどくなっていって、「これ大丈夫かな?」っていうのはありました。

 

小学校6年生の時の体験があったので、「同じようなことが起こり得るんじゃないか」という危機感がありました。

 

なので、なるべくいじめられないように振る舞っていましたね。

 

友達でいじめられてた男の子がいたんですけど、その子は高校に上がった時に、中学の時に受けたいじめがストレスの原因になって、ホームから人を突き落とすという殺人事件を起こしてしまいました。

 

中学校では、それぐらいいじめがひどかったんです。

 

 

いじめっ子に勉強を教える

私はいじめられないように、テスト前とかにいじめっ子に勉強を教えていました。

 

普段はそこまで話さないけれども、いじめっ子もテスト前になるとテストの点数は気になるみたいで、でもノートは全く取ってない。

 

そこで私に、「ノート見せて」と言いに来るので、「じゃあ一緒に週末勉強しようか」みたいな流れではじまりました。

 

母がおやつを焼いてくれて、私は部屋で黙々といじめっ子に勉強を教えるという平和な勉強会です。

 

143

 

保健室の先生になるために

中学2年生になって、「国立大学に行かないと保健室の先生になれない」ということを知りました。

 

県の中でもトップクラスの高校に行かなければ、国立大に入れるのは数人になってしまう。

 

トップの学校から1つランクを落とすと、国立大に行けるのは学年に1人しかいない、という話を聞きました。

 

「それだったらトップの高校に行かなきゃいけない」と焦って、3年生から塾に行き始めたんですけど、入塾テストになかなか受からず、必死に勉強しました。

 

入塾テストに3回も落ちましたが、4回目に、「本当は点数足らないんだけど、やる気がありそうだから入れてあげる」と入れてもらえました。

 

塾の一番下のクラスの一番下の席からスタートしました。

 

それでも卒業する頃には、上のクラスの真ん中ぐらいまで順位を上げることができ、無事トップの学校に受かることができました。

 

 

とにかく楽しかった高校生活

高校3年間はとにかく楽しかったです。

 

3年生の文化祭で劇をするのが学校の恒例行事だったんですが、毎朝早い時間から学校に行って道具を作ったり、毎日夜9時ぐらいまでダンスの練習をしたり。

 

みんなと過ごした時間がすごく楽しかったです。文化祭での劇では最終的に最優秀賞を取ることができたのも良い思い出になっています。

 

 

大学での実習の日々

大学では、4年間を通して保健室の先生になるための授業があり、1回生の時から実習もありました。小学生、中学校、高校、色々な学校に行きましたね。

 

保健室の先生は、医学から看護学、教育学、心理学など全部やらなくてはいけないので、大変なんですが、それでも1つ1つの授業がすごく楽しかったです。

 

よく覚えているエピソードとしては、教育実習で、当時5年生だった子にボランティアとして保健室登校というか、別室登校に付き添ったことがあります。

 

なかなか学校に来るのもしんどい子でしたが、その子に1対1で向き合って、卒業式まで一緒に付き添うことができました。

 

 

「卒業できたのは先生のおかげです」

教室でいじめを受けていた子でしたが、いじめっ子たちが別室にも休み時間に流れ込んで来て、色々言ってくることがあったんです。

 

その時には歯を食いしばって耐えてた子が、その子たちが帰った後で思いっきりわーっと泣き出して。

 

その時に「辛かったね、大変だったね」っていうのを背中さすりながらずーっと言ったりしたのが結構心の支えになっていたようです。

 

最後にその子がお母さんと2人で、「卒業できたのは先生のおかげです。ありがとうございました」って涙流しながら来てくれたのをとても覚えています。

 

012

 

理想の保健室と教室との関係

実際に教育実習に行ってみて、「やっぱり保健室にいるほうがいつでも相談にのれるかな」と思うようになりました。

 

担任の先生って、通常の業務で忙しすぎたり、生徒全員のことを見ていないといけないので、ゆっくり生徒の話を聞いてあげられないといった面があると感じることが多かったんです。

 

その分、保健室だったらゆっくり時間を取って、その子と1対1でお話できる時間が取れるので、保健室の先生への想いは日に日に強くなっていきました。

 

だからこそ、何かあった時のシェルターみたいな役割だったり、何か困ったことがあった時に、すぐに相談しやすい雰囲気のある保健室を作っていきたいと感じるようになりました。

 

 

保健室はたまり場?

荒れてる学校だと、「たまり場になるから」という理由で保健室が閉鎖されちゃうこともあるんです。

 

保健室は本来、怪我した時、悩みを相談したい時、ちょっとしんどくなった時、先生に怒られた後など、いつでも行って良いんです。

 

相談したい時に相談できる場所があって然るべきかと思うので、そういう場所として保健室は大切な場所だと思っています。

 

子どもたちの心と身体を、何かがあった時に救う受け皿みたいなイメージです。

 

1時間、お話しをして、「これはちょっと悩みが深そうだな」って思ったら、カウンセラーの先生に情報を共有した状態でお渡ししたり。

 

応急処置の場なので、継続的に医師などにかかるまでの間の受け皿という感じです。

 

 

方針の異なる2つの学校を経験

大学を卒業後、最初に入った学校が2000人ぐらい、次の学校は3000人と大規模が学校に赴任しました。

 

最初に赴任した学校は中高一貫校で、保健室にベッドが8床もあって、一つひとつのベッドがカーテンで区切られるようになっていました。

 

保健室には、私以外にもう一人の先生が必ずいてくださって、他の子の様子を見てくれていたので、生徒一人ひとりの話をしっかり聞くことができました。

 

次に赴任した3000名規模の学校では、最初の学校とは方針の全く違いました。

 

基本的に、「保健室に来ても教室に返す」というスタンスだったので、5分10分ですぐに教室に返すという感じでした。

 

「3000人を相手にしてるから仕方がない。」という風に割り切らなきゃいけないんですが、「この子の話はしっかり聞いてあげたいな。」っていう時もあったりして。

 

個人的にはやっぱり、落ち着いている所でゆっくり話を聞くほうが性に合っていたのかなと思います。

 

 

生徒の悩みで一番多いのは「家庭」のこと

実際に保健室に相談をしに来る子は、毎日学校に来てる子もいますし、その日によって調子が良くなったり悪くなったり、というような子もいます。

 

校門前でしゃがみこんでしまって、「今日はちょっと無理だから」と車でそのままお家に帰宅ということもあれば、「ちょっと頑張って保健室までは歩いてみようかな。」ということがあったり。

 

教室の前になると耐えきれなくて、吐き気がして、保健室に逃げ帰ってくる子もいました。

 

保健室に来る生徒は、本当に多種多様です。

 

相談として一番多かった悩みは、「お家のこと」が多かったと思います。

 

こちらとしては、とにかく傾聴の姿勢ですね。

 

保健の先生は家庭にまでは入れないので、もし暴力を振るわれている子だったら、警察や児童相談所と連携をとって、一時的に保護してもらうように連絡することまで介入していました。

 

学校に勤めた後は、LGBTのことを話すために、しっかり勉強しなきゃいけないというのがあったので、今の活動を本格的にスタートするための勉強期間に入りました。

 

続きは第2回へ

 

 

井上鈴佳さん全インタビュー

【Part1】全国でLGBTの出張授業を行うレズビアンの保健室の先生

【Part2】1億人いれば1億通りの性のあり方がある

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

お名前
メールアドレス
保有資格・所属・ご要望など

LINEバナー
シェア
ツイート
はてブ
お気に入り
共感
30

関連記事