障害者扶養共済制度とは?対象・支給額・申請方法・事例を社会福祉士が解説
精神疾患などを患っている家族がいるため、自分が亡くなった後、彼らをサポートできなくなるためどうしよう…という悩みを持つ両親や配偶者などの方は多いかと思います。
確かに、現在は自分たちがある程度のサポートができるので良いですが、彼らを大切に思えばこそ、将来のことは心配になりますよね。
ここでは、そういう悩みを支える障害者扶養共済制度についてお話します。
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障害者扶養共済制度の対象
障害者扶養共済制度の対象になる障害者の方は、以下のとおりです。
・知的障害の方
・精神障害を持っており、その障害が永続的で自立が困難だと思われる方
・身体障害者手帳の1~3級を所持している方
・身体障害者手帳の1~3級程度に相当する方および知的障害と同等だと認められる方
障害者扶養共済制度の支援内容
障害者扶養共済制度とは、精神や知的、身体に障害を抱えている方を養っている家族に、もしものことが起こった場合、扶養されていた障害者の方へ永続的に一定額の年金が支給される制度です。
この制度は、任意であり、加入者は上記のような障害者を扶養する家族になります。
この家族の範囲は、65歳未満の配偶者や両親、兄弟姉妹、祖父母などで、住居地の自治体に住所がある方に限られます。
また、病気や障害がなく、生命保険に問題なく入ることができる健康状態であることが大切です。
障害者扶養共済制度の支給額
加入者が死亡、重度障害者になり、養っている障害者の方の世話ができなくなったときに、1口あたり月額20,000円が障害者自身に支給されます。
この年金は障害者の方が死亡するまで支払われます。
障害者扶養共済制度の申請方法
障害者扶養共済制度を利用したい場合は、加入者(家族)が以下の書類を揃える必要があります。
これらの書類を揃えて、それぞれの最寄りの福祉事務所や町役場の担当窓口に提出してください。
・障害者扶養共済年金申込書
・戸籍抄本など(加入者と障害者の関係性が分かる書類)
・加入者が障害者を扶養していることが証明できる書類(課税証明書など)
・精神保健福祉手帳など(扶養している方の障害程度が分かる書類)
・加入者と扶養している障害者の方の住民票
※各自治体によって、揃える書類が異なる場合があります。
また、加入者による月の掛け金は、加入者の加入時の年齢によって異なります。
2口まで加入でき、1口あたり9,300~23,300円の幅があります。
障害者扶養共済制度の事例
【Aさん60代女性】統合失調症
Aさんは、もともと大人しい性格でしたが、高校を卒業後に「人の声が聴こえてくる」、「○○さんという男性が私に交際を迫っている」などということを、家族に言い始めました。
しかし、Aさんは家事手伝いをしており、頻繁に外出しないうえに交友関係も広くはなかったため、彼女が訴えるような事実はありませんでした。
両親がAさんをさとすも、彼女の訴えは徐々にひどくなり、「私は天皇家の娘なのだ」、「私は○○のことが嫌いなのに、彼が私の後を尾行してくる」などの妄想的言動が見られるようになったため、両親がAさんを連れ、精神科病院を受診。
統合失調症と診断され、入院治療を行うことになりました。
入院生活をする中で、Aさんの妄想はより激しくなり、治癒が難しい状態になりました。
何かの役に立つならと、精神保健福祉手帳の申請も行い、1級として認定されました。
しかし、入院生活のゴールも見えないため、両親は自分たちが亡くなった後にAさんがどうやって生きて行くかを常々心配していました。
Aさんには兄がいますが、結婚し、家庭を持っているため、Aさんの面倒までは手が回らないだろうことも危惧されています。
Aさんの両親は、何か経済的な支援がないかと思い、最寄りの町役場を訪問。障害者扶養共済制度についての情報を提供してくれました。
幸いにも、両親の健康状態は良好だったため、障害者扶養共済制度に2口の加入をすることを決めました。
その後、数十年の時が流れても入院生活を行っていたAさん。彼女が60歳になったとき、両親が亡くなりました。
そのことにより、Aさんには2口分の障害者扶養共済年金が支給されるようになり、その年金で入院費や身の回りのこともまかなえるようになりました。
相変わらず、妄想がひどく、退院し、施設入所などは難しい状況にありますが、兄もできるかぎり面会に来てくれています。
しかし、兄は妻を始めとする家族の手前、金銭的なサポートがままならないため、月に支給される障害者共済年金に安堵しています。
それと同時に、両親がAさんのために考えてくれた彼女の未来設計に感謝をしながら、インフォーマルなサポートを今後も続けて行こうと決意しています。
障害者扶養共済制度の注意事項
障害者共済年金制度は、障害者の方を抱える家族にも、本人にとってもありがたい制度ですが、気を付けなければならない点があります。
年金支給対象になる障害者の方が支給される年金を自己管理できない可能性がある場合には、代理で年金を管理する者を加入者が事前に本人の承諾を得て、指定しておく必要性があります。
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- 本記事は2017年9月7日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。