【臨床心理士解説】機能不全家族とは?3つの特徴、関連する4つの虐待とは?

2022.09.17公開 2022.09.21更新

一見穏やかで円満そうに見える家庭にも「機能不全家族」は存在します。

 

また、機能不全家族に密接に関連する「虐待」というと、叩いたりする身体的な虐待をイメージする人が多いですが、それ以外にも3つほど虐待には種類があり、知らず知らずのうちに機能不全家族に陥ってしまうケースも…。

 

機能不全家族の状態が日常化して、いつの間にか「うちではよくあること」となり気が付かないことも少なくありません。

 

そこで今回は、臨床心理士に機能不全家族の3つの特徴と4つの虐待の種類についてご紹介いただきました。

 

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機能不全家族、3つの特徴とは?

まず機能不全家族を一言でお伝えすると、

本来家族に求められるような温かみのある、安心できる場所としての機能がうまく働いていない状態の家族のこと

を指します。その特徴として以下のようなポイントが挙げられます。

 

家族(主に親)に何をやっても(しなくても)否定される

子どものころから親に褒められた経験がほとんどなく、同じことをしても親の気分によって怒られることや、

「お前は何をやっても駄目だ」

「頭が悪いから勉強しても無駄」

「要領が悪くてイライラする」

などの否定的な言葉をかけられることが、機能不全家族の中ではよくあります。

 

また、例えばお皿を洗わなければ「お前は食べてばかりで何の役にも立たない。皿くらい洗え」と言われ、

 

ならば今度はお皿を洗うと「余計なことをするな」と言われるような、どの選択をしても結局は否定的なことを言われてしまうのも機能不全家族の特徴です。

 

自分の意志を無視される

一見すると穏やかで、外部の人から見ると円満な家庭のように見える家族にも機能不全家族は存在します。

 

例えば、本当は行きたくもない習い事に親の希望で通わされていて、「行きたくない」「辞めたい」と伝えても聞く耳を持ってもらえなかったということもあります。

 

親の方も良かれと思っている場合や、親が子供の頃にしたくてもできなかったことを子どもにさせているケースもあります。

 

他にも進学先や就職先について自分の意見を言っても認めてもらえず、親から一方的に決められてしまうケースも。

 

家族内で守らなくてはいけないルールが必要以上に多く、守れなかった場合に外出禁止などのペナルティが問答無用で与えられてしまうのでいうことを聞かざるを得ない、ということもあります。

 

虐待がある

一方的な暴力である虐待が起こっている家庭では、当然心が休まることはありません。

 

常に相手の機嫌をうかがったり、いつまた理不尽に攻撃されるかと常に気を張ってしまいます。

 

虐待というと殴ったり蹴ったりという身体への虐待をイメージするかもしれませんが、実は虐待には他にも種類があり、それらすべてが機能不全家族の要因となります。虐待の種類は以下の4種類です。

 

機能不全家族に関連する4つの虐待

身体的虐待

虐待としてイメージされることが多いのが、この身体的虐待です。

 

殴ったり叩いたり突き飛ばしたりといった、体への虐待です。

 

「これはしつけだから」と言って暴力をふるったり、体を逆さまにされたり寒い(暑い)日に外に放り出されたりすることも、この身体的虐待となります。

 

心理的虐待

心無い言葉、例えば「馬鹿」「死ね」「生まなければよかった」「お前は要らない子」といった言葉を投げつけられ、心を傷つけられてしまうのが心理的虐待です。

 

親からの無視や、他の兄弟との間で差別することも含まれます。

 

両親が激しい言い合いをしている場面や暴力を振るわれている場面を見せられることも心理的虐待となります。

 

性的虐待

直接性的な行為をされるのはもちろんのこと、性的に触られることや、性行為や性器を見せることも性的虐待です。

 

口止めされて誰にもいうことができずに一人で抱え込んでいたというケースや、当時はまだ幼くて意味が分からなかったから助けを求めることができなかったというケースも多く、一度起こっただけでも大きな傷として心や体、今後の人との関係に影響を与えてしまいます。

 

ネグレクト

育児放棄とも呼ばれます。食事を用意しない、着替えさせない、お風呂に入れない、爪や歯のケアをしないなど、子どもが生きていくうえで必要なお世話をしないことを指します。

 

明らかに熱があってぐったりしているのに病院に連れて行かないといった医療ネグレクトや、暑い日に車の中に子どもだけで放置したり、家の中に子どもだけ閉じ込めて親が外出してしまうといったこともネグレクトです。

 

さいごに

まだ幼いころからこれらの虐待が行われていると、いつの間にか「うちではよくあること」となってしまって虐待であることに気が付かない方もいます。

 

そうすると気づかないうちに虐待の影響を受け、大人になってから生き辛さとして影響が出てくることがあります。

 

また、大人になってから自分がされていたことが虐待だったと気づき、悩み苦しむ方も少なくありません。

 

以上のように、機能不全家族とは、家族の中で子どもがその子らしくのびのびと暮らすことが難しく、親と円滑なコミュニケーションととることが難しい状態であることが特徴です。

 

この状態は子どもにとって息苦しいものであると同時に、その子どもが大人になったあとも人間関係や物事の考え方に影響を深く与えてしまいます。

 

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【参考・引用文献リスト】

〇西尾和美(1999):機能不全家族 「親」になり切れない親たち、講談社

〇岸見一郎、古賀史健(2013):嫌われる勇気、ダイヤモンド社

【参考ホームページ】

〇子供虐待防止オレンジリボン運動(2022)
子ども虐待とは
https://www.orangeribbon.jp/about/child/abuse.php
(2022年8月10日閲覧)

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福丸みお

臨床心理士/公認心理師

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2022年9月17日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。