【臨床心理士解説】「何もしたくない」から抜け出そうと焦りが増える…どうしたらいい?
何もしたくない、でもそういうわけにもいかない…
そんな時、みなさんはどうしているでしょう。
「何もかも面倒くさい!」「もういやだ」とぼやいたり、愚痴を吐いたり。
ごろごろしたり、ぼうっとしたり、現実逃避したり。
少しそんな時間を過ごしているうちに、「まあやるか…」と徐々に回復していくことが多いと思います。
しかし、少し立ち止まっても「何もしたくない」状態が変わらず、思ったより長く続いてしまったらどうでしょうか。
やらなければならないことが山積みになってしまうことが心配で、早く動き出さなければ!と焦りますよね。
焦れば焦るほど、気持ちばかりが先走って空回りしてしまい、なかなか元の状態に戻れないということも少なくありません。
今回は、無気力をなんとかしようと焦っているのになかなか調子がよくならない、そんな状態への対処方法をお伝えしていきます。
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身体の疲れを取る
「何もしたくない」状態には、疲労が影響している場合がほとんどです。
長く続いているのであれば、忙しい生活で疲れを自覚しないまま過ごして疲れがどんどん積み重なり、少しの休養では回復できなくなってしまっている可能性があります。
疲労回復のためには、十分なお休みが必要です。
睡眠や食事はしっかりととるように意識しましょう。
「気力がなくて効率が落ちている。その分睡眠時間を削って頑張らなければ…」といった考え方はお勧めできません。
人間は、寝ている間に脳をメンテナンスしています。
睡眠時間が少なくなれば、メンテナンス不足となり、起きている時にいろいろな支障をきたします。
睡眠不足で日中の眠気が取れず常にぼうっとしてしまったり、注意力が低下しミスが増えたり…
作業量は増えても、質は落ちてしまう可能性が高いのです。
また、食事は動くためのエネルギーのもとになりますから、おろそかにしないようにしましょう。
運動に抵抗がなければ、適度な運動をすると身体がすっきりしますので、やってみるのもいいですね。
心の疲れを取る
「休みが必要なのはわかっている!でも、身体を休めても全然変わらない!」
そんなふうに思っている人もいるのではないでしょうか。そもそも、「何もしたくない」という時に、「何もしなくていい」と言われたら、どう感じるでしょう。
「そうはいってもやらなければならないことがたくさんあるし…」
「何もしないでいたら、ずっとこのまま変わらないのでは!?」
いろいろな考えが頭の中に浮かんでくるかもしれませんね。
身体は休んでいても、ぐるぐるとたくさんのことを考えていると、心が休まりません。
疲労の回復には、身体の疲れを取るのと同様に、心の疲れを取ることも必要なのです。
心の疲れを取るためには、気分転換をしたり、リラックスタイムを多めにとったりするとよいでしょう。
これまでの生活を振り返ってみてください。
「これをしている時が一番落ち着く」
「これをしている時が一番楽しい」
そう感じられることが、心の疲れをとる方法を考える上で重要なヒントになります。
熱中して、自然と焦りや不安を考えずにすむような方法があれば理想的です。
「自分に合っている方法がわからない」「なかなかよい方法が思いつかない」
という場合は、一般的に「気分転換になる」「リフレッシュになる」と言われている方法を試すのでもかまいません。
呼吸法や瞑想など、身体と心を同時に休ませる方法もお勧めです。
自分に合う方法や、効果がある方法を、何種類か見つけられるといいですね。
頭の中が焦りでいっぱいになってしまう時は…紙に書き出してみる
身体や心を休めていても、なんとなく「休み切れないな」と感じる人もいるのではないでしょうか。
気分転換にと思って映画を見ていても、頭のどこかで「こんなことをしていていいのかな」と考えている…
疲れを取ろうと早めに布団に入ったけれど、「あれもこれもやってない」と思い出しているうちに眠れなくなってしまった…
思い当たることがあるかもしれません。
「何もしたくない状態をなんとかしなければ!」という考えで頭の中がいっぱいになってしまうと、焦りが大きくなって不安が募り、休もうとしてもなかなか休めない場合があります。
すると、不調が長引いてしまうことがあるのです。
そんな時には、紙に書き出してみる方法がお勧めです。
強い焦りや、その時考えていることを紙に書き出してみましょう。
しっかりした文章ではなく、箇条書きでかまいません。
紙でなく、スマホに打ち込んでもOKです。
「仕事が面倒くさい!」
「〇〇さんと会うのが嫌だ!」
といった感じで、どんどん書いていきます。
書き終わったら、眺めてみましょう。
考えを頭の外に文字として出すことで、その内容を落ち着いて捉えやすくなることが期待できます。
頭の中だけで考えていると答えが出ずに延々考えてしまうことを書き出して、堂々巡りから抜け出すきっかけを得られやすい、という効果もあります。
また、例えば、
「何もしていないことで××さんに迷惑をかけていたらどうしよう」
「△△さんに『ダメな奴』と思われてないか心配」
といったことが書いてあるとします。
すると、「自分は今、他人の目がとても気になっているんだなあ…」と、焦りの背景にありそうなことに気付けます。
そうすれば、
「周りの人に現状を伝えて、知っておいてもらえるとちょっと安心できるかな」
「自分は自分と思うようにしよう!」
といったように、対処方法を考えやすくもなります。
さいごに
今回は、無気力をなんとかしようと焦っているのになかなか調子がよくならない状況への対処方法をお伝えしました。
焦っているのになかなか調子が良くならないと、「もしかしたらこのまま調子が戻らないかも…」と不安になることもあるでしょう。
「もうどうすればいいかわからない」と考えてしまうととてもつらいですが、「何かやれそうなことがある」と思えれば、多少なりとも気持ちがやわらぐのではないでしょうか。
そんな時は、今回の内容をヒントに、「やってみることができそうな方法」から試してみてくださいね。
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【参考文献】
●森川那智子(2007)『なんにもしたくない! ちょこっと、自分を、休ませてあげる本』すばる舎.
●大芦治(2013)『無気力なのにはワケがある 心理学が導く克服のヒント』NHK出版.
●田中正人編著(2020)『図解心理学用語大全 人物と用語でたどる心の学問』斎藤勇監修,誠文堂新光社.
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2023年1月17日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。