【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの原因は親?原因となる家庭環境の特徴は?
(質問)アダルトチルドレンの原因は親などの家庭環境にあると聞きました。具体的にどのような家庭環境がどのような性格形成や思考のくせ、言動に影響するのでしょうか?
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アダルトチルドレンと「機能不全家族」
アダルトチルドレンの原因になる家庭環境は、よく「機能不全家族」と呼ばれます。
本来の安心できる温かい家庭としての機能を果たさず、いつも緊張を強いられたり不安を感じたり、抑えつけられている(身体的にも精神的にも)と感じる家庭のことです。
ですが、その機能不全家族の中で育っていると、その家族の状態が当たり前になるため、特段、家庭内で緊張していた、不安を感じていた、辛かった、という実感がないことが多々あります。
「どこの家庭もそういうものなんじゃないの?理想的な家族なんてどこにもないでしょ」
と思ってしまうのです。
ですので、自分の家族の状態が機能不全家族に当てはまるのかを知ること(気づくこと)はとても大切です。
機能不全家族には様々なパターンがありますが、代表的なものとして3つ、ご紹介します。
家族としての温かみがない
幼いころに親に抱きしめてもらった記憶はありますか?
家族としての温かみとは、悲しくて泣いている時、眠たい時、遊んでいる時、どんな時でも子どもが求めれば当たり前のように親が抱きしめてくれるような、自然で優しい関係性のことをいいます。
例えば、あなたが手に持っていたコップをうっかり落として割ってしまった時、家族(親)はどんな反応をするでしょうか。
温かみのある家族の反応は「大丈夫?」「ケガしてない?」「(片付けるとき)手を切るかもしれないから気を付けて!」といった言葉をかけられたり、一緒に片付けを手伝ってくれるものです。相手を思いやる言動が自然と出てきます。
ところが、開口一番に
「何やってんの、自分で片付けといてよ」
「うるさい!」
「勘弁してよ、誰が片付けると思ってんの」
といった相手を労わる言葉よりも先に相手を責めるような言葉がでたり、
・片付けをするあなたを冷ややかに見ている
・割った本人を押しのけて迷惑そうに(怒りながら)片付けを始める
といった冷たい反応が返ってくることが当たり前になっている家族は、家族としての温かみのない家庭といえます。
他にも、両親の仲が冷え切っていていつも喧嘩ばかり、時には怒鳴り合いやどちらかが暴力をふるうといった光景を目にしたり、会話がなくお互いを無視するような関係になっていることもあります。
時には直接会話をすることのない両親のために、子どもが伝書鳩のように両親の間を行ったり来たりすることもあります。
このような家庭環境にいると、子どもの性格は本来の生き生きとした性質を失い、自分が何かをすることで相手の機嫌を損ねてしまうのではないかという不安を心のどこかにいつも抱えた性格になってしまいます。
相手に迷惑をかけたくない(かけてはいけない)という気持ちが強く、困ったことがあっても自分から誰かに助けを求めることができずに抱え込んでしまうことがあります。
また、分からないことを誰かに確かめるができずに「きっとこうなのだろう」という憶測で分かった気になって安心しようとします。
温かいコミュニケーションを身近で学ぶ機会が極端に少ないため、他人に対して無自覚に冷たい言動をしてしまったり、自分が責められまいと自分を守ることを優先した言動をとっさにとってしまうことで人間関係のトラブルが起きたり、良好な関係が長く続かないといったことも起こります。
子供への過度な期待がある
「あなたは本当はやればもっとできる子なのよ」
一見すると親が子どもを励ましている言葉のように見えますが、その言葉の裏に
「この程度しかできないあなたは本当のあなたじゃない」
というニュアンスが隠れていることがあります。
頑張っている子どもに、さらに上の成果を求めつづける、もっとできるはずだという期待を子どもに押し付けている状態です。
努力をした過程をほめることよりも、より優秀な結果を出すことを子どもに求めます。
このような家庭で育つと、自分の努力を自分で認められない、成果主義・完璧主義な性格になることがあります。
「もっともっと」
「この程度じゃ全然すごくない」
と自分を追い込んだり、他人からの称賛を素直に受け止められない(受け止めてはいけないと感じる)ようになります。
向上心自体は決して悪いものではなく、この性格のおかげで社会的に成功したり、時にはヒーローのように扱われることもあります。
しかし何事にも限度というものがあります。いつでも何事にも完璧を求めたり、現状に常に満足できずに上を目指そうとすると、きりがありません。
そうするとやがては疲れてしまい、心や体に限界が来てしまいます。
また他人に対しても自分に対してと同様に努力を認めてあげることができずに結果だけを求めたり些細なミスも許せなくなると、やがては人間関係にヒビが入ったり、相手にとっても心許せる、安心できる存在ではなくなってしまいます。
アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症の人がいる
依存症は、本人だけでなく家族にも大きな影響を及ぼします。
例えば、家族の中で父親がアルコール依存症だったとします。
家の中では毎日(毎晩)お酒を飲み、飲みすぎを家族がたしなめると機嫌が悪くなったり、お酒が切れると家族に買いに行かせることもありますし、そもそもお酒が切れないように常に家族がストックを用意しています。
お酒を飲むと人が変わったようになり、大声や暴力などの支配的な言動や大きな音(足音や物を投げる音)などで家の中に緊張した空気を生み出します。
そうすると母親はこれ以上酔っている父親を刺激しないように父親の機嫌を取り、子どもたちにも同じことを求めます。
父親が酔って意味の分からない説教を始めたら、機嫌を損ねないように子供たちにおとなしく聞くよう促したり、飲みすぎているにも関わらず次のお酒をせっせと用意します。
「飲みすぎよ」と一言でもかけようものなら一瞬で怒りに触れてしまうからです。
大声や暴力を振るわれても、それ以上酷くならないようにじっと耐え、いうことを聞き、嵐が過ぎ去るのを待ちます。
このような環境で育つと、理不尽な恐怖をまき散らす父親と、それに従う母親、という不健全な関係性をみて育つため、似たような人間関係を築きやすくなります。
つまり、「恐怖や理不尽で従わせる者」と、「(そこから離れようともせず)相手の要求を満たす者」という関係性です。
そのため、相手を暴力(実際に手を出さずとも言葉の暴力という形をとることもあります)で支配しようとしたり、相手の気持ちや主体性を無視して自分の思い通りに動かそうとすることがあります。
または自分を犠牲にしてでも尽くすこと(尽くされること)を愛だと勘違いすることも。
健全な関係性を築くのが難しいため、苦しい・辛いと感じていながらもこの不健全な関係性から抜け出せなくなってしまったり、何度も同じパターンの失敗を繰り返すこともあります。
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【引用文献】
〇西尾和美(1998):アダルト・チルドレン 癒しのワークブック、学陽書房
【参考文献】
〇C.L.ウッドフィールド(1997):内なる子どもを癒す―アダルトチルドレンの発見と回復、誠信書房
〇W.クリッツバーグ(1998):アダルトチルドレン・シンドローム、金剛出版
〇緒方 明(1996):アダルトチルドレンと共依存、誠信書房
〇岸見一郎、古賀史健(2013):嫌われる勇気、ダイヤモンド社
〇西尾和美(1997):アダルト・チルドレンと癒し 本当の自分を取りもどす、学陽書房
〇西尾和美(1998):アダルト・チルドレン 癒しのワークブック、学陽書房
〇アスク・ヒューマンケア:アダルトチルドレン――回復の4ステップ https://www.a-h-c.jp/article/7185(2023年4月閲覧)
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2023年4月27日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。