【臨床心理士解説】愛着障害・不安型の3つの特徴、根本にある欲求とは?

2023.06.04公開 2023.06.08更新

(質問)人間関係で常に漠然と不安や心配があり、愛着障害かもしれないと感じています。愛着障害について調べてみると「不安型」という存在を知り、どのようなものかわかりやすく教えてほしいです。

 

(回答)常に人間関係に不安があるというのは、とても辛い状況のことと思います。

 

愛着障害の不安型に当てはまる人は、人間関係で気を遣いすぎる傾向にあることが分かっています。普段の生活の中で気疲れする場面も多いことと拝察します。

 

不安型の特徴を大きく3つに分けてご説明します。

 

【関連記事】

>>【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの特徴…6つのタイプと機能不全家族との関係

>>【臨床心理士解説】愛着障害・回避型の5つの特徴とは?口癖は、面倒・コスパ?

>>【臨床心理士解説】愛着障害の恐れ・回避型の3つの特徴とは?原因は親子関係?

>>【臨床心理士解説】愛着障害の原因とは?背景にある4つの親の態度とは?

>>【臨床心理士解説】愛着障害の克服は大人になってからも可能?回復のステップとは?

 

人に嫌われるのが怖い

不安型の人は、

「自分を好きでいてほしい」

「受け入れてほしい」

「認めてほしい」

と、他人からの良い評価を求める傾向にあります。そのため、人に嫌われることを極端に恐れます。

 

例えば、

出勤して部屋に入った時、みんなに「おはようございます」とあいさつしたけれどもAさんからは返事がなかった。

 

ひょっとして嫌われた?何か気に障ることを私がして怒ってる?そう考えると怖くてAさんの方が見られない。嫌われたかもと不安で仕事に集中できない。

といったことが起こるのが特徴です。

 

また、嫌われることが怖くて

・頼みごとを断れない

・嫌われていないか過剰に確認したがる

・(人が離れて行かないように)支配的な態度をとる

といった面もあります。

 

恋愛を求めがちだが恋愛によって不安が増す

他人から受け入れられることで安心感を得ようとする不安型の人は、親密な人間関係の最たるものの一つである恋愛を求める傾向があります。

 

しかし、一度恋愛関係になると今度はその相手から嫌われていないかどうかが不安になるという悩みが発生します。

 

以下で詳しくお話します。

 

恋愛関係になることで安心しようとするため、一見すると「惚れっぽい」「恋愛体質」と周囲から思われてしまうこともあります。

 

また、恋愛の目的が不安感をなくすことであるため、職場の上司部下の関係や取引先という関係からも恋愛に発展することもあり、仕事とプライベートを分けることが難しくなる場合もあります。

 

さらに、「安心したい」「嫌われたくない」という欲求が根本にあるので、仮に相手にもうすでにパートナーがいたとしても引くことができず恋愛に発展させてしまいトラブルになることも。

 

しかしながら、そこまでして得た関係にもかかわらず、今度は、

「この人に嫌われたくない」

「まだ私のこと好きなのだろうか」

という不安に襲われてしまうため、愛情を頻繁に確認したり、相手が他の人と仲良くすることに嫉妬したり、自分以外を優先することに傷つき腹を立てることもあります。

 

そうするとパートナーも相手をすることを負担に感じ始め、破局の道をたどりがちです。

 

自分の不安感を解消するために、自分が求めるときにはいつでも満足のいく対応をしてくれる人を求めるというのが、不安型の特徴の一つです。

 

ネガティブ感情に振り回される

愛着障害不安型の人は、自分のネガティブな感情をコントロールすることがとても苦手です。

 

一度ネガティブな言葉を口にすると、そこからネガティブ感情がどんどん広がり、次々とエスカレートしたネガティブ感情があふれ出てきます。

 

例えば、仕事から帰った夫がリビングで靴下を脱いでそのまま放置していたとします。

 

それを妻がみたとき、「靴下は洗濯機に入れてっていつも言ってるよね。早く入れてきてよ。」と怒りの気持ちを伝えたとします。

 

夫はそれを聞いて、「ごめん、気を付ける」と言って洗濯機に靴下を入れました。

 

一般的な家庭なら、話はここで終わりです。

 

しかし、もしも妻がネガティブ感情をコントロールできない不安型だった場合には続きがあります。

「ごめんっていうけど、いつもいつも同じこと繰り返してるよね。

 

靴下のことだけじゃない。この前は仕事を定時で帰ってきてほしいって電話までしたのにすぐ帰ってきてくれなかったよね。

 

家事は分担しようって言ってるのにあなたが返ってくるのが遅いから結局私ばっかり家のことしてるじゃない。

 

この前も(以下省略)もうあなたと結婚しなければよかった!!!」

というように、感情がおさまらずに必要以上に相手を傷つけてしまうこともあります。

 

さいごに

上記3つの特徴からも、不安型の人は自分の不安に振り回されて人間関係に疲れてしまったり、自分も相手も傷つけてしまうことがあります。

 

こういったことが繰り返されるとより一層人との関わり方に不安を感じたり、常に心配や不安を抱えて生活を送らなければいけなくなってしまいます。

 

また、もしもこのような特徴を抱えていることで自分ではどうしようもない生き辛さを感じている、という場合には、一度、心の専門家に相談してみることをおすすめします。

 

【関連記事】

>>【臨床心理士解説】アダルトチルドレンの特徴…6つのタイプと機能不全家族との関係

>>【臨床心理士解説】愛着障害・回避型の5つの特徴とは?口癖は、面倒・コスパ?

>>【臨床心理士解説】愛着障害の恐れ・回避型の3つの特徴とは?原因は親子関係?

>>【臨床心理士解説】愛着障害の原因とは?背景にある4つの親の態度とは?

>>【臨床心理士解説】愛着障害の克服は大人になってからも可能?回復のステップとは?

 

【参考文献】

〇岡田尊司(2011):愛着障害 光文社

〇岡田尊司(2013):回避性愛着障害 光文社

〇岡田尊司(2016):愛着障害の克服 光文社

〇愛甲修子(2016):愛着障害は治りますか? 花風社

〇中野日出美(2019):それは、“愛着障害”のせいかもしれません。 大和出版

〇米澤好史(2022):愛着障害は何歳からでも必ず修復できる 合同出版

シェア
ツイート
ブックマーク

福丸みお

臨床心理士/公認心理師

臨床心理士・公認心理師。大学院修了後、精神科やメンタルクリニックにてカウンセリング業務やデイケア、生活相談等に従事。心の病から日常生活での悩みまで幅広く対応し、多くの相談者の心に寄り添う。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2023年6月4日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。