発達障害者支援法とは?概要や改正のポイントについて臨床心理士が解説

2017.02.16公開
 
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発達障害の方が、社会の中でより良く生きていく為に制定された「発達障害者支援法」。

 

「発達障害者支援法ってどんな法律なの?」

「私たち発達障害者に本当に関係があるの?」

「改正されたことで、発達障害者の生活はどう変わるの?」

 

平成16年に制定されてから10年余り。平成27年に改正されましたが、色々分からないことも多いかと思います。

 

そこで今回は 、改正された発達障害者支援法の概要や改正のポイント、今後どのように発達障害者の生活が変わっていく可能性があるのかについて解説します。

 

 

そもそも発達障害者支援法って?

発達障害者支援法が制定される前まで、発達障害者は様々な苦労を抱えているのにかかわらず、社会的な支援の対象には入っていませんでした。

 

それまでは発達障害者に対する支援は、知的障害者に対する支援の一部にしか過ぎず、知的な障害が無い発達障害者は、社会的な支援を受けることができませんでした。

 

そのような社会的な支援の谷間にいた発達障害者が、社会的な支援を受けられるように制定されたのが「発達障害者支援法」です。

 

この発達障害者支援法が制定されたことで初めて、発達障害者は支援の対象と位置づけされたのです。

 

 

発達障害者支援法の対象は?

発達障害者支援法は発達障害者を対象とした法律です。

 

厚生労働省は改正された発達障害者支援法の中で、以下を発達障害者として定めています。

 

『発達障害者とは、発達障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などの脳機能の障害で、通常低年齢で発現する障害)がある者であって、発達障害及び社会的障壁により日常生活または社会生活に制限を受けるもの』

 

平成26年度だけで、診断やカウンセリングを受けるために病院を受診した発達障害者は、19.5万人いるといいます。

 

発達障害者が社会的な支援から漏れていたとすると、それだけ多くの人が支援の目から抜け落ちていたことになります。

 

なお今回の改正では、「社会的障壁により」という文言が新たに付け加えられました。

 

障害は、受け皿となる社会がそれを支えきれない時に生じるもの、障害の原因を個人の特性ではなく、それを支える周囲の環境側に求めると明記したことは、日本社会の障害者観を変える意味で、とても大きいことのように思われます。

 

 

発達障害者支援法の目的は?

厚生労働省は改正された発達障害者支援法の目的について、以下のように定めています。

 

『個人としての尊厳に相応しい日常生活・社会生活を営むことができるように、発達障害の早期発見と発達支援を行い、支援が切れ目なく行われることに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにする』

 

『発達障害者の自立及び社会参加のための生活全般にわたる支援を図り、障害の有無によってわけ隔てられること無く(社会的障害の除去)、相互に人格と個性を強調(意思決定の支援に配慮)しながら共生する社会の実現に資する』

 

発達障害者支援法ができたことで、発達障害という言葉が一般的に随分と認知されてきました。

 

出来ないのは自分の努力が不足しているからではないのだ、ということがわかり、心が救われた方も多いのではないでしょうか。

 

けれども、改正前の発達障害者支援法では、学齢期が終わると急に受けられる支援が無くなってしまうなどの課題も多くありました。

 

改正された発達障害者支援法では、発達障害児を早期に発見し、幼少期から適切な発達支援を受けられることを目指しています。

 

幼少期から高齢期まで、人生のどの時期においても途切れることなく、社会的な援助を受けられる社会、障害があっても、1人の人として尊重される社会、そのような社会を作っていくことを、国の責務として位置付けました。

 

発達障害者支援法はそれら、発達障害者がより良く生きていくための道筋を切り開いていくための法律と言えましょう。

 

 

改正されたポイントは?

改正されたポイントとして、大きく以下の点を挙げることができます。

 

・幼少期から高齢期まで途切れの無い支援を実施。教育・福祉・医療・労働などが緊密に連携。

 

・支援センターの増設

 

・教育現場においては個別支援計画、個別の指導計画の推進。いじめ対策の強化

 

・国及び都道府県は就労の機会を確保。就労の定着支援を規定。事業主にも発達障害の特性に応じた雇用管理を求める

 

・都道府県・指定都市に関係機関による発達障害者地域支援協議会(仮称)を設置

 

・司法においては意思疎通の手段等適切な配慮

 

また、付帯決議として、発達障害者やその家族に対する心のケアを含めた相談支援体制の構築や、学校の教員への発達障害についての研修実施、障害者手帳についての在り方の検討等が、盛り込まれています。

 

 

発達障害者の生活はどう変わる?

平成16年度の発達障害者支援法施行を受け、教育分野では様々な特性を持ったお子さんに見合った配慮をしていく『特別支援教育』がスタートしました。

 

文部科学省は、現在支援学級や特別支援学校に在籍している児童・生徒に対して作成されている個別支援計画を、普通級に在籍している発達障害を持った児童・生徒に対しても作成していくことを義務付ける方針を固めました(※1)。

 

2020年度以降に導入することが明らかとなっています。

 

合わせて、作成された個別支援計画は、小学校から高校までそのまま引き継がれていくことも示されています。

 

かつまた、高校においても平成30年度以降通級指導が開始されることが、検討されています(※2)。

 

上記が開始されれば、今後現在よりも多くの児童・生徒が支援を受けられるようになる可能性があります。

 

就労分野においても、厚生労働省のHP等からは具体策は示されてはいませんが、現在よりもいっそうの就労定着のための取り組みが進むことが予想されます。

 

就労の枠組みが拡大したり、ジョブコーチの指導を受けながら就労を続ける人も、増えるかもしれません。

 

発達障害者支援法の改正を受けて、今後上記以外にも、社会に様々な変化が生じる事が思われます。

 

発達障害者支援法は発達障害者の人だけでなく、その方々も含め私たち全体に関わってくる法律なのです。

 

 

大事なのは自己選択する力を育てる事

発達障害者支援法の改正により、少しずつではあるかもしれませんが、支援を受けられる人の数も、受けられる支援の幅も広がってくることが考えられます。

 

けれども、そういった時に大事になるのは、知った情報を元に自分で選択できる力です。

 

例えば先の通り、文部科学省は普通級に在籍する発達障害児に対し、今後診断の有無にかかわらず必要に応じて個別支援計画を作成することを決めました。

 

その際、誰がその個別支援計画を作成するのか、どの子は作成してどの子は作成されないのか、といった線引きが1つ課題として浮かび上がってきますが、そのような選択は発達障害を持つ子供の保護者の側も、同様に迫られることになります。

 

「うちの子に個別支援計画を作ってみようかと言われたけど、入試とかに不利になることは無いのだろうか…」

 

「通級に行くか、通級に行かない分、授業を受けさせて学習をしっかりとさせた方が良いか…」

 

発達障害者支援法の改正だけでなく、自立支援法や児童福祉法を基にした放課後等デイサービスの広がりなど、今、発達障害者・児の受けられるサービスは少しずつ広がりを見せています。

 

そのような中で、やみくもに多種のサービスを受ければ良いのではなく、サービスを知った上で、自分たちに必要なサービスはどれなのか検討し、選択する力が、今後もっと求められてくるのではないでしょうか。

 

 

【出典】

※1 朝日新聞デジタル『障害ある子のカルテ義務化』

※2 文部科学省『高等学校における通級による指導の制度化及び充実方策について』

 

 

【執筆者】

加藤たかこ 臨床心理士

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