【臨床心理士解説】愛着障害の恐れ・回避型の3つの特徴とは?原因は親子関係?

2023.06.06公開 2023.06.08更新

(質問)愛着障害の「恐れ・回避型」というのはどのような状態を指すことが多いのでしょうか?わかりやすく教えてほしいです。

 

(回答)「恐れ・回避型」の愛着障害の人は、不安型や回避型の愛着障害の特徴を内包している分、より複雑で不安定になりやすいといえます。

 

人間関係でのストレスも大きく、そこから心を病んでしまうことも珍しくありません。

 

恐れ・回避型の特徴を3つに分けてご説明します。

 

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孤独は嫌だが人といるとストレス

1人でいることに寂しさを感じ、誰かと一緒にいたい・親密になりたいと思っている一方で、いざ誰かと仲良くなると傷つきやすかったりストレスを受けてしまいます。

 

この複雑なパターンの背景には、幼少期に親の関わり方(主に心理的な母親役)がそもそも不安定だったことが大きく影響していると言われています。

 

例えば、

子どものころ、母親の虫の居所が悪ければ理不尽に叩かれたり、「産むんじゃなかった」と言われて傷つけられ・・・、

 

かと思えば、

 

今度は母親が機嫌よく「あなたは私の宝よ」と猫可愛がりしてくる・・・

といったように、母親の機嫌によって養育態度が変わるために安心して愛着を育むことができずに混乱してしまうような子ども時代を送ったとします。

 

すると、大人になってからも安定した心の繋がりや温かい関係を求めつつも、人の気持ちや態度を心の底から信じることができず、相手が親密になればなるほど(親のように心の距離が近い関係になればなるほど)子どものころのように混乱してしまうのです。

 

これは子どものころに受けた心の傷がまだ言えていない状態ともいえます。

 

自分の「傷つき」を主張する

一度受けた「傷つき」を、いつまでも相手に訴えることも、恐れ・回避型の特徴です。

 

例えば、仲良くなった相手に一度約束をすっぽかされると、根に持って事あるごとに、

<その時、いかに自分が傷ついたか>

を持ち出して相手を非難します。

 

相手が反省していても関係ありません。自分が傷ついたということを相手に分からせることが重要になってしまっているからです。

 

この背景には、恐れ・回避型の<心の回復力>の弱さが潜んでいます。

 

子ども時代に親(主に心理的母親)との安定した愛着を育んで大人になった人は、親との信頼関係をベースにして、世の中のことも基本的には安心して信頼ができるものだと感じることができます。

 

そのため、自分の心が傷つくことがあっても、「私は大丈夫」「次は気を付けよう」と安定した心持ちでその傷を自分で癒すことができ、また新しく立ち上がることができるのです。

 

しかし、そういった安定した愛着を育めなかった場合は世の中に対しても安心感を抱くことができず、

「いつも私は傷つけられる」

「みんな信用できない」

と感じ、心の傷を癒すのに時間がかかったり、自分一人では回復することが難しかったりします。

 

そのため、「私はこんなに傷ついている!」と相手に分かってもらわないと気が済まなくなり、相手に嫌がられたとしても自分では止めることが出来なくなってしまうのです。

 

人間関係がより複雑で、自分も他人も傷つける

上記2つの特徴とも関係があるのですが、恐れ・回避型の人は人とうまく関わる方法が分からないまま人と関わってしまい、結果として自分も傷つき、相手も傷つけてしまうことが多々あります。

「この人に好かれたい、親密になりたい」

「人は信用できない、怖い」

という気持ちが同時に存在するため、自分自身でもどうしていいのか分からずに相手に対して一貫した態度をとることができず、自分も相手も混乱して結果として傷ついてしまうのです。

 

この背景には、幼少期に身近な人から虐待を受けていたり、親が精神的に非常に不安定であることが考えられます。

<安心・安全な場所>であるはずの相手が急に自分に対して攻撃的になったり不安定になる

つまり子どもにとって<危険な場所>にもなってしまう状態が子どもを混乱させてしまうのです。

 

そうすると大人になった後も他人に対して、

「関わりたいけどどうしていいのか分からない、急に私を裏切るかも、傷つきたくない」

と複雑な想いを抱いてしまうのです。

 

さいごに

恐れ・回避型の特徴には以上のようなものがあります。

 

このタイプの人は「不安型」や「回避型」の人達よりもより一層人間関係に不安定さがあり、その分ストレスを感じやすかったり、トラブルや傷つきの体験が多いことがあります。

 

また自分自身ではこのパターンから抜け出すことは困難であることも多く、生き辛さや苦しさを一人で抱え込まず、心の専門家に相談することをおすすめします。

 

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【参考文献】

〇岡田尊司(2011):愛着障害 光文社

〇岡田尊司(2013):回避性愛着障害 光文社

〇岡田尊司(2016):愛着障害の克服 光文社

〇愛甲修子(2016):愛着障害は治りますか? 花風社

〇中野日出美(2019):それは、“愛着障害”のせいかもしれません。 大和出版

〇米澤好史(2022):愛着障害は何歳からでも必ず修復できる 合同出版

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福丸みお

臨床心理士/公認心理師

臨床心理士・公認心理師。大学院修了後、精神科やメンタルクリニックにてカウンセリング業務やデイケア、生活相談等に従事。心の病から日常生活での悩みまで幅広く対応し、多くの相談者の心に寄り添う。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2023年6月6日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。