【臨床心理士解説】子供が愛着障害かも?行動のチェックリスト・しかり方のコツは?
(質問)自分の子供が愛着障害かもしれません。子供にイライラをぶつけてしまうこともあります。親としてどのように子供と接すればよいでしょうか?
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愛着障害とは
愛着障害は医学的には5歳までに発症するとされていますが、心理学的には、
幼少期に養育者(身の回りのお世話をしてくれる人)とアタッチメントがうまく形成されなかったことによって生じる様々な困った症状の総称
をいいます。
明らかな虐待や親との離別・死別、不仲などがなくても、愛着障害になる可能性があると考えられています。
近年欧米では「Child Maltreatment(チャイルド マルトリートメント)」とよばれる考え方が一般化してきています。
これは、身体的・性的虐待(abuse)だけでなく、心理的虐待やネグレクト(放置・無視)などの虐待も含む、「不適切な関わり」を説明するより概念です。
虐待とは言い切れないが、子どもとの関わり方の中で避けたい「不適切な関わり方」があります。
WHO(世界保健機関)によると、Child Maltreatmentは、18歳未満の子供に対して行われる虐待、ネグレクト、搾取などといった不適切な関りを意味した言葉です。
この考えでは、積極的な加害の意図の有無は関係なく、子どもにとって有害かどうかによって判断されることがポイントです。
日常に潜む愛着障害のリスク
愛着障害においても、このマルトリートメントの関係性は無視することはできません。
・叩く
・長時間正座をさせる
・親が裸で歩きまわる
・言葉の暴力
・夫婦喧嘩を見せる
・子どもにスマートフォンやゲームなどを長時間与えて親との関わりがない
などのことも、このマルトリートメントに含まれると考えられています。
つい泣いてしまうから、静かにさせるために携帯を渡してしまう、といったことは現代には多くの方に少なからずご経験のあることかもしれません。
これが常態化してしまうと、その反対に必要なコミュニケーションをとる機会が少なくなっていってしまいます。
親には決して加害の意図はないのでしょうが、結果的に子どもにとって有害になってしまうと、それはマルトリートメントとして、後に愛着障害のリスクとなる可能性が生じてくるのです。
そして、自身が愛着障害の困難さ、虐待だけでなくマルトリートメントを受けたご経験のある場合には、それが世代を連鎖してご自身の子どもに行ってしまうリスクがあることが多くの研究によってわかっています。
愛着障害の状態にある子どもの行動の特徴
愛着障害の状態にある子どもの行動の特徴的なこととしては、
①過度に他人を警戒し、近づかない。他人への関心は薄く、他人を避けひとりで過ごす。
②ほとんど知らないような大人にもついていき、誰にでもべったりとくっついたり過度にわがままな態度をとったり嘘をつく。
③暴力的・衝動的な行動や、大人を試すような言動がみられる。
④爪を噛む、髪を抜くなど自分を傷つけるような行動がみられる。
⑤体調不良、不眠、嘔吐
などがみられることがあります。
もしも当てはまることがあった場合には、今、それを見つめなおす機会におられるのかもしれません。
お子さまに対する対応の仕方について
お子さまとの関わり方を振り返ってみて、いかがでしょうか?
・ついつい怒りすぎていしまっている、
・子どもに話しかけられてもしっかり応えてあげられていない、
・携帯やゲーム、テレビなどを長時間与えてコミュニケーションをとっていない
…など、なにか思い当たる節はありますか?
忙しい日々のなか、きっと一生懸命にこなしていらっしゃることと思われますが、今この瞬間の子どもの気持ち、成長は刹那的でかけがえのないものです。
・同じ高さで視線を合わせる
・出来たことをほめてあげる
・抱きしめる
こういったコミュニケーションの積み重ねの中でアタッチメントは少しずつ形成されていきますよ。
反対に、子どものためにしてあげないとと親が責任を強く感じすぎてしまって頑張りすぎていませんか?
熱心に思うあまり、過干渉になってしまう場合もあります。
日々の生活の中でどれくらい子どもに関わっているか、放置しすぎていないか、関わりすぎて支配的になっていないか、など客観的に自身とこどもとの関わりを振り返ってみることも大切です。
子どもの特性も親の特性もそれぞれです。
上手くいかなくてイライラしたりつらくなることがあるのは親だって当たり前に起こり得る反応です。
子どもの自由な考えが自立心、探求心を尊重しつつ、親も必要なポイントは抑えながら手を抜けるところは手を抜いて、できるだけストレスがたまりすぎないように工夫してみることも大切です。
まだまだ親(特に母親)へ責任をおしつけられることが多い現実がありますが、一人ですべてを担うには限界があります。
父親、家族、親戚、社会資源(公的サービス)なども利用し、より現実的に、ストレスのより少ない環境をつくっていくことも大切です。
子どもと視線を合わせる
子どもがうまく言葉に出来ないとき、なにか訴えたいけどうまく言えなくて泣いたり怒ったりしているときには、何が言いたいのかを考え、代弁してあげることで子どもは安心し落ち着きを取り戻すことも出来ます。
子どもがもごもごとして困って混乱しているときに、それを怒られてしまっては委縮してしまって気持ちを言えなくなってしまったり、更に混乱してしまう可能性もあります。
子どもの行動や考えについて、決めつけたようなことをつい言ってしまったり、自分の考えや価値観を気づかないうちに押し付けてしまっていることも少なくありません。
そのため、
・「何が言いたいのかな?」と一緒に考えてあげる
・話をきいたうえで「○○っていうこと?」「○○って思ったんだよね」などと代弁してあげる
といったことで、子どもはわかってもらえたと安心し、気持ちを伝える練習をすることも出来ていきます。
子どもにとって、安心して話が出来る、話してもいいんだ、と感じられるような対応はアタッチメントの形成の観点からも大切なポイントと考えられています。
子どもをしかるときのポイント
しかる必要のあるときには、親が一方的に怒るのではなく、
「なぜそれをしたのか」を理解し、
「何がどうしていけないのか」
をしっかりと伝えてあげるといいですね。
怒りながら言われると、子どもにとっては怒られた印象が強く、不安や恐怖心などが高まりますから親の怒りが強いときには、まずは自分自身を落ち着けることが大切です。
なるべく落ち着いた口調で、子どもがどうして「それ」をしてしまったのか、しっかりと理由を聞いてみましょう。
たとえば、誰かに暴力をふるってしまった場合、すぐに怒るのではなく、どうして暴力をふるってしまったのか、本人なりの理由をしっかりきいてあげるのです。
そうすると「相手が暴力を振るってきたから」とか「ほかの子をいじめていたから」とか「ヒーローの真似をして」など、その子なりの理由を教えてくれることがあります。
その理由をそれとしてしっかりと受け止めたうえで、なにがいけないのか、他にどんな方法があるかなどを一緒に考えてみると、子どもにとってもぐっとわかりやすくなるでしょう。
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【参考】
米澤好史 愛着の視点からの発達支援 -愛着障害支援の立場から- 発達支援学研究第2巻第2号 2022
友田明美 アタッチメント(愛着)障害と脳科学 児童青年精神医学とその近接領域 2018
川本薫, 後藤和史 愛着スタイルと境界性パーソナリティが恋愛依存に与える影響 - 日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第 77回大会
伊福麻希・徳田智代 2006 恋愛依存傾向尺度作成の試み-男女観における恋愛依存傾向の比較- 久留 米大学心理学研究
やさしくわかる!愛着障害 ―理解を深め、支援の基本を押さえる 米沢好史 2018 ほんの森出版
愛着と愛着障害: 理論と証拠にもとづいた理解・臨床・介入のためのガイドブック ビビアン・プライア , ダーニャ・グレイサー
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- 本記事は2023年7月4日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。